第十六話 まさかのライバル登場ですかッ!?
私は湊二郎様に連れられて学校に来ました。しかし、そこに居たのは湊二郎様をたぶらかしていそうな大きな胸を持つ女子生徒。
私はこの女子生徒に湊二郎様が誰のものかを知らしめてやろうと思います。
「湊二郎さまっ、湊二郎様の机はどこですか?」
「俺はあそこだな」
湊二郎様が指をさした方向を見ると例の女子生徒の机の隣でした。
湊二郎様は自分の机がある場所に座ると女子生徒と会話をし始めました。
「っ!?」
そ、湊二郎さま……? その女のなにが良くて会話をしていらっしゃるのですか……?
私は湊二郎様の膝の上に座り、ドヤ顔で女を見返してやります。
「心雪? どうした?」
「いえっ、なにも」
私は湊二郎様の右手を取って、頭の上に乗せると湊二郎様は私のことを撫でてきました。
この湊二郎様に撫でられてる感触が最高に気持ちいいのです。
「ふにゃぁ……」
「「「(なにこのかわいい生き物!)」」」
担当の先生が来るまでずっと湊二郎様に撫でてもらいました。
担当の先生はとても普通でした。普通過ぎて何の特徴も無い悲しい人でした。けど、湊二郎様に撫でられてる私を見ても何も言いませんでした。
「心雪、いつまでそこに居るつもりだ」
「ふふんっ、ずっとですっ!」
というわけで私は湊二郎様の膝の上で湊二郎様と共に授業を受けました。途中、柚葉ちゃんがやって来て、私を連れ出そうとしたので、多久郎さんの膝の上に座らせると大人しくなりました。
時は流れてお昼休みという休憩時間になりました。私は湊二郎様と多久郎さん、柚葉ちゃんと昼食を食べ始めました。
「夏海さんもよかったら一緒に食べないか?」
「へっ?」
湊二郎様があの女を呼んだので、私は思わず呆けた声を出してしまいました。
どうやらあの女は夏海さんというようです。
「いいのッ!? 湊二郎くんありがと!」
「にゃっ!?」
夏海さんが湊二郎様に近寄ると腕にしがみついて私に見せびらかしてきました。
な、ななっ! なんなのですかあの女ッ! 湊二郎様の腕を胸で包み込むなんて!!
「ハレンチですっ!」
私は湊二郎様と夏海さんの間に入り、お二人を離します。柚葉ちゃんと多久郎さんを見るとニヨニヨして私のことを見てきたので少し苛立ちました。
「夏海さん! 湊二郎さまをたぶらかすのはやめてくださいッ!」
「ごめんね。それは無理。だって私、湊二郎くんのことが大好きだから!」
「「はあっ!?」」
私と湊二郎様の声が重なりました。
な、夏海さんが湊二郎様のことを……? で、では湊二郎さまは……?
「そ、湊二郎様は夏海さんのこと、どう……なんですか……?」
「え?」
「ですから、湊二郎様は夏海さんのことが好きなんですか……?」
私は湊二郎様に訊ねましたが、何故か涙が溢れてしまい、湊二郎様に見えないようにと後ろを向いて顔を手で隠しました。
「俺は━━━━━━」
その日、湊二郎様がそこから先を話すことはありませんでした。
もしかしたら湊二郎様はどちらかが傷つくのを恐れていたのかもしれません。湊二郎様は私からの好意も既にご存知です。そこに夏海さんからの好意。
頷けば私が、首を横に振れば夏海さんが傷つくとわかった上で答えなかったのでしょう。本当に良くできた人です。
そして、それは翌日のことでした。普段は空っぽのポストに1通のお手紙が入っていました。
「差出人は……俊太郎さまですかッ!?」
私は湊二郎様にお伝えするため、急いで家へと戻って行きました。