第十三話 入学式に行きたいですっ!
あれから3週間が経ち、本日は湊二郎様の入学式です。けど、湊二郎様は私を縛りつけて布団から出られない状態にしました。
「なんでですかっ!?」
「薬飲んで寝てろッ!」
薬を全て飲み終えるまであと1週間。私は今日までほとんどの時間を布団の中で過ごしていました。だから大丈夫ですっ! 行かせてくださいっ!
「湊二郎、心雪ちゃんは柚葉に見させて置くから行こう。入学式に遅れる」
「それもそうか。心雪、しっかり寝てろよ」
湊二郎様は多久郎さんと高校へと向かいました。
そしてソレを確認した私は起き上がろうとしますが、柚葉ちゃんによって押さえつけられました。
「心雪、寝てるのじゃ」
「……行きます」
「寝てなさい」
「行きますっ!」
私は絶対に行きますっ! 湊二郎様の成長を見届けるのは私の義務ですッ!
私は布団に縛りつけられたまま布団と共に立ち上がり、ゆっくりと歩き始めました。
「仕方ないの……せいっ!」
首に謎の衝撃が加わると私はそのまま意識を手放しました。
そして、次に目を覚ますと目の前には湊二郎様がいました。
「湊二郎さまっ……?」
「心雪、おはよう。ちゃんと留守番してて偉いな」
湊二郎様は私の頭を撫でると私を抱き上げて膝の上に座らせました。
私は恥ずかしくて顔が真っ赤になりました。
「~~~~~~っ!?」
「ほら、お粥だ」
もう体力も回復してるのに1日3食お粥です。さすがに飽きました。
けど、湊二郎様に食べさせてもらうのは嬉しいです。
お粥を食べ終え、私は日付表を見ます。すると湊二郎様の誕生日が明後日にあるのを思い出しました。
「湊二郎さまっ、明後日は一緒に外出しますよ。どうしても行かないといけないモノなので」
「……わかった。けど、体調が悪くなったら言えよ」
「大丈夫ですよ」
それから2日が経ち、湊二郎様の誕生日となりました。
私は朝早くに湊二郎様を起こして薬を飲み、軽い朝食を食べます。
朝食を食べ終えると私は着替えを済ませました。
今日の服装は白いフレアスカートに緑色のパーカーと、珍しく洋服です。
「そこまで遠出するのか」
「そうですよ。帰りは夕方になってしまうかもしれませんね。さっ、行きますよ。湊二郎さまっ」
私は麦わら帽子を被り、前日に用意していた鞄を持って湊二郎様と家を出ます。
そして、ゆっくりと歩き始めました。
「体力、確実に落ちてますね……」
「荷物持ってやるよ」
湊二郎様は私が持っていた鞄を取り上げて、私の代わりに持ってくれました。
1ヶ月近く動いていなかった反動がここに来て出てきてしまうとは……今度からは少しずつ動きましょう。
それから商店街を通り、駅のホームで鉄道を待ちます。田舎というだけあって1時間に1本しかありません。
「あと5分ですね。飲み物でも買って来ましょうか?」
「いや、俺が買ってくるよ。心雪は座っててくれ」
湊二郎様の気づかいはとても嬉しかったです。けど、使用人の筈なのにここ最近は私がお世話されてますね。
「心雪、お前は働き過ぎなんだよ。だからこういう時ぐらい俺を頼れ。これでも主人だからな」
湊二郎様を見るとどうも胸が苦しくなりました。今までとは違って不自然なぐらいにまで締め付けられるような……そんな感じがします。
「……では頼らせてもらいますね。これでお茶を買ってきてください」
「わかった。任せろ」
湊二郎様はお茶を買いに購買まで走って行きました。
紗由理様、いまから成長した湊二郎様を連れてそちらに会いに行きますね。待っていてください。