第九話 卒業式に行ってしまいました。
本日は3月9日です。何があるかと言われると湊二郎様の卒業式があります。湊二郎様は教えてくれませんでしたので、情報源は柚葉ちゃんです。
私は柚葉ちゃんと湊二郎様の学校へと向かったのでした。
「心雪、お主まだその着物持ってたのか」
「柚葉ちゃんと行くならコレしかありませんからね。柚葉ちゃんの方こそまだ持ってたのですか?」
「そうじゃな。この着物選ぶのに苦労したしな。普段はタンスの奥にあるくせに捨てたいとは思わんのじゃよ」
私と柚葉ちゃんが着ている着物は私と柚葉ちゃんが成人式の際に色違いのお揃いで買った着物で、柚葉ちゃんとの趣味が噛み合わず、色々と苦労をした思い出の代物です。
「そうですよね。あっ、学校が見えてきましたよ」
「随分大きいんじゃな。妾たちなんて一軒家と同じぐらいじゃったというのに……」
柚葉ちゃんは少し羨ましそうに校舎を眺めていました。
私もその気持ちわかりますよ。私だって初めて見た時は驚きました。
「私たちの場合は異例ですよ」
「確かに猫耳は人数が少ないし、権力も弱いから仕方ないの。今考えるとよくあの空間に耐えられたものじゃ」
「そうですね……」
この国での『猫耳』の扱いはかなり乱雑でストレスのあまりに亡くなる『猫耳』も多いのです。実際、湊二郎様や多久郎さんはかなり特殊なのです。
この国の人間なら奴隷のようにこき使います。一応法律もあるので主人以外からの被害は保護されてますが、主人からの被害は一切保護されておらず、酷いところでは殺されて解体されたりすることもあるそうです。
そのおかげか、この国で『猫耳』は1年に1000人ぐらいしか産まれません。そこからまた数を減らすので、成人する頃には半分ぐらいになってるのではないでしょうか?
「そう考えると私たちって恵まれてるんですね」
「そうじゃな。おっ、卒業式の会場はあっちみたいじゃ」
柚葉ちゃんが案内の看板を見つけたので、私と柚葉ちゃんはその看板に従って建物の中に入りました。
建物の中には既に多くの保護者様方が来ており、空席の椅子も多くありませんでした。
「もう人が結構いるんじゃな」
「そうですね。ではここに座りましょう」
私と柚葉ちゃんは偶然空いていた席に座り、卒業式が始まるのを待ちます。
すると卒業式を開始するという声が響きました。
そして、音楽と一緒に列になって歩いてくる生徒様一同の中に湊二郎様が混ざっているのが見えました。
「うっ……ううっ、湊二郎さまっ……」
「心雪、早い。まだ始まってもないぞ」
「だって湊二郎さまが……」
「全く、相変わらず涙脆いヤツじゃな」
私は柚葉ちゃんに頭を撫でられ、溢れでる涙を手拭いで拭きます。
それから私は卒業式が終了するまでずっと泣いてました。
卒業式が終わると私は校門前で湊二郎様を待っていると頭をガッチリと掴まれました。
「心雪、家で待ってろって言ったよな?」
「はい……申し訳ありませんでした……」
「聞きわけのない猫にはお仕置きが必要のようだな」
湊二郎様はいきなり私をお姫さま抱っこして、商店街の方へと歩き始めました。
湊二郎様にお姫さま抱っこされてるという嬉しさと何をされるのかわからない恐怖で私の鼓動は速くなっていました。
「あ、あの湊二郎様……このまま行くと商店街ですよ……?」
「そうだな。商店街にはお前の知り合いもたくさんいるだろうな?」
「そ、湊二郎さまっ!? まさか……っ!?」
湊二郎様が何をしようとしてるのかを理解してしまった私は必死に抵抗しようとしますが、手も足も出ませんでした。
その結果、私は湊二郎様にお姫さま抱っこされているみっともない姿を商店街の方々に晒されてしまいました。
「もうお買い物に行けません……」
「いや行けるだろ。というか行け。ご飯が食えなくなる」
「湊二郎様は手厳しいご主人様ですね……」