第四章[B.H.S.D作戦]第四話
[ディーヴァ]が子機を射出、圧倒的な数のビームが放たれる。それを視界の端に捉えた結は自分に向かってくるものを機体を操って回避する。アームドユニットがエネルギーを放出しながら彼女の位置を即座に変える。そのすぐそばをビームが直進していく。後続の者たちもまた回避または防御する。いくつかの機体が射撃武装を解き放って多重攻撃。[ディーヴァ]を攻める。
このデザイアは装甲が薄い。つまり離脱される前に一気に攻撃すれば撃破可能だ。高速起動が可能なのがネックだったが、それは数の力で広域をカバーすることで離脱前に撃破に成功する。
「……!」
次いで[インパクター]が虚空から姿を現す。何の前触れもない唐突な出現だったが、ここがデザイアが支配する領域であることを考えれば不思議なことでもないだろう。それを理解しているがゆえに衝撃は少なかった。
「……インパクターか。いい獲物だ!叩き潰す!」
それを見た真紅の鎧頭部の機体を駆る青年が機体を加速させる。それに続き、会敵した結たちは各々の判断で散開、それぞれの攻撃を開始する。はたまた大型の砲、そうかと思えば貫通弾、ならばと長大な鉄球付きの鞭。機体によって違う、多種多様な武装がその力を最大限発揮して攻撃を始める。
「……はっ!」
結が使用するのは機体背部の刺装小砲[貫]。[インパクター]に対しては雀の涙ほどの威力だが貫通力は高いので支援ぐらいにはなる。しかし彼女らアーマード・パッケージを駆る者たちの目標はあくまで[レヴァナント]。大型デザイアの相手はしている暇はない。
結はアームドユニットのスラスター出力を上げて一気に戦域を離脱する。その背には同じアーマード・パッケージの者たちが各々の武装を構えて低空を散開して飛ぶ。
「……あれが」
進み続けて数分。結たちはついにその目に海上拠点型のデザイア、[レヴァナント]を捉える。その姿は重厚で、巨大で、圧倒的なまでの威圧感を放っていた。鉄骨を束ねたような仮面を頭に付けたデザイアは周囲に破壊の光をまき散らし続ける。ただしそれは標準が行われていないかのように見当違いな方向に飛んでいく。ただ敵を寄せ付けないように打ちまくっているだけのようだった。十分に距離をとって低く飛行する結たちは気付かれていないようだった。
「………ふっ!」
結は水しぶきを[ブレイド・プリンセス]に纏って[レヴァナント]の足元を目指す。そこには基地のような物体が鎮座し、無数のデザイアであふれかえっていた。そのうちの一体、[エクスマキナ]が結の接近に気付く。
バイザー型の頭部が光り、胸部が二つに割れて内側から球体が顔を出す。
それをバイザー越しに見た結は軌道を変える。瞬間、結が元いた場所が[エクスマキナ]の砲撃が通り抜ける。
「くらえ!」
少し離れた場所を飛行する日花里が左右のユニットを開き、反属性魔力ミサイル生成器で作りだしたミサイル群をデザイアの集団に向かって発射する。その他、射撃装備持ちの者は撃ちまくる。当然結も背の装備を撃つ。
彼女等の機体は際限なく加速し、それに対して敵の攻撃は熾烈を極める。
「あれは……!」
その攻防を続けて数秒。目前に迫ったデザイアの地。猛攻撃で少し数を減らしたデザイアの中からあるタイプの者が姿を現す。それは[ブローニクス]という重砲撃型のデザイアだった。文字通り重砲撃を見舞ってくる、火力極振りのものだ。まともに攻撃を食らえば一撃でひき肉どころか粉みじんにされてしまう。そしてデザイアは既に砲撃準備を整えていた。四肢、肩、腰、背部、頭部に積載された砲門が迫る結たちを向かい入れる。
ゴゥッ!
一斉に砲撃が来る。一弾が大きい。結は回避を試みるが………
パリィン!
「ぐっ……!」
僅か叶わず、その身をかする。バイザーの左側が攻撃がかすった衝撃で割れ、左肩の装甲が崩れ去る。損傷を受けたことでバイザーにノイズが走る。結に常に情報を提供していたバイザーは機能を停止させる。同時に右半分にぴしりと亀裂が入った。
それでも結は止まらない。両手に大剣を握り、ついにデザイアの真っただ中に飛び込む。
「はあぁぁぁぁぁぁ!」
アームドユニットを活用して軌道を強引に変えて、意図的にスピンし、突撃と攻撃を同時に行う。進路上にいた[ノーマライズ]数体がコアを切り裂かれて消滅する。
さらにステップを踏んでそのままの勢いで[エクスマキナ]数体を撃破し、結は鈍色の壁に足を打ち付けた後、バランスを崩しそうになるもアームドユニットを使って態勢を立て直す。
結の通った後には不自然なスペースが存在していた、結の攻撃の産物だ。間違いなく今までで最高の戦果だ。
「……!」
結はきっとデザイアの集団を見据える。後から来た者たちも同様に。
「倒す!」
結は剣先をデザイアたちに向けて宣言する。大剣の剣先が陽光を受けてきらりと光る。その言葉を合図としたのか全員が手当たり次第にデザイアに襲い掛かる。
結が狙ったのは今さっき己の装甲を削った張本人、重砲撃型[ブローニクス]だ。火力に極振りしているがゆえに鈍重なデザイアはゆっくりと結の方を向く。その時には結はすでに動いていた。
「はっ!」
飛翔、加速、接近、斬撃。ワンテンポでその四工程を消化し、彼女はデザイアの右腕を切り落とす。四角いデザイアの頭部奥のバイザーが怒りを表すかのように赤く光る。
結はホバーユニットを最大出力で使用、強制的にデザイアの地面を滑って向きを反転させ、再度加速。刺装小砲[貫]を使用し、[ブローニクス]の胸部付近に二つの風穴を開ける。
!?!?!?
次いで即座に突撃してデザイアの、その無防備な胸に大剣を突き刺す。そして追加で魔術を行使、そこで爆発を起こさせる。次の瞬間、再度砲撃を行おうとエネルギーの再充填を行っていた[ブローニクス]が光の粒子のなって爆炎の中消滅する。今の怒涛の連続攻撃でコアが破壊されたのだろう。そしてその煙の中から白き戦士、結が煙を払って空に飛翔する。
機体にも生身にもほとんど傷はなかった。
「……」
結は一瞬戦場を俯瞰したのち、すぐに次の対象を決め、突撃する。
(ここまで……やれたんだ)
結は[エクスマキナ]と刃を交えつつそう考える結。さして実戦を重ねていない自分がここまで圧倒的な戦いができるとは夢にも思っていなかったのだ。決意を固めてきたことが関係でもしていたのかもしれない。それとも内に秘められた潜在能力がここで発揮されたか。
ガッ!
剣閃。デザイアの胴が両断され中からコアが落ち、結はそれを足で踏み砕く。未だ数多く残るデザイアをまるで踊るような動きで翻弄していく。
「はぁぁぁ!」
結は徐々に機体に損傷を、体に疲労を蓄積させていきながらも戦いを続ける。
飛行、加速、転進、射撃、防御、回避、斬撃、鉄拳。持てる武装、力を総動員して結は舞う。その姿はまさしく剣の姫だった。




