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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第四章[B.H.S.D作戦]
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第四章[B.H.S.D作戦]第二話

「しかしの……こんな空気ではメカ操縦は楽しめんの。まぁ、あの直後に楽しむのも不謹慎じゃ。仕方ない事じゃな。童もショックであるし」

 クローディアブリッジ内。

 発進が目前に迫る中。

 アメヴィスが呟く。

「イエスイエス……」

 やはり[爆砕者(エクスプローダー)]で死者が出たことは彼女らの心に少なからず傷を残した。

 大半の者にとって顔見知り、または友人であった故、それが唐突に失われるのは二年越しの恐怖の再来であった。

 それは幾度経験したとしても慣れるものでは無い。

 クローディア内、そしてその他でも重い空気が立ち込めていた。

「じゃが、これに影響されている暇もないのう」

 既に出撃準備は完了した。

 海上のデザイアも動き出している。

 いつまでもショックで立ち止まっているわけにはいかない。


「結界展開」

「了解」

 [封絶結界]が基地一帯を覆う。

 先の攻撃の時に張れていればよかったのだが、例のデザイアの爆発のせいで結界展開に関わる基地の区画が一部損傷を受けていたのだ。その修復に手間取っていた結果、今に至るのである。もともと張ってはいたが、損傷のせいで一度解除されてしまっている。

つまり今のは再展開だ。

 やや赤い色の紋様が出現し、完全な球体を形作る。

 展開が完了した証である。

「これで次弾は防げるか?」



 ヴィィン


 [レヴァナント]の砲に光が収束する。

 次弾の発射は近い。

 無数のデザイアが進行開始に向けて動き出す。

 その数は尋常ではない。また、種類もいくつか。水中潜航できるものや高速飛行するもの。

 制海権を強奪に関わった全種類のデザイアが、万物を崩壊させると単純明快な、唯一与えられた目的を怪しげに、視覚に該当する部位を光らせて示し、存在していた。

 潜航するデザイア、後に潜航型[シャドゥン]と名付られるものが潜水艦のような無機質な胴に格納された細長い腕部を展開する。それは12の魚雷発射管が取り付けられた武装腕だ。

 そして100体にも上る[シャドゥン]が、性質としては潜水艦に近いデザイアが、水の抵抗をねじ伏せ、水中での動きとしてはありえない速度で突き進む。

 空では[ディーヴァ]が変形、[レリス]に向かって飛翔する。


「発射だな!」


 クイーンが屍の山で踊り狂う。

 顔は狂気に染まった笑顔。

 頭に付いたあまりに長い角が空間の空気をかき回す。

 角と同じレベルの大きさの尾が屍たちを打ち付け、赤い血に染まったそれらはプレスされ、元の形から掛け離れ、ただの肉塊となり果てる。

 いったい、幾多の者が、幾多の回数、このデザイアにある塔に辿り着き、戦い、散ったことか。

 その数は圧倒的で、正確なものは最早誰にも分からない。

「さてさて、な!潰しがいあるか、そこが焦点だ。アハハ!」

 クイーンの目が赤く光る。

 それに呼応するかのように塔、をその身の一部とする超大型の、[インパクター]の数倍の面積と全長を誇るデザイアが振動する。



 エネルギーが解放される。



ドウゥゥゥンン!


という音とともに[レヴァナント]の全てが次の砲撃を開始した。

 破壊の顎が海上を突き進む。

 その先には当然ながら[レリス]の海岸線基地がある。

 ……着弾までの時間は僅か数秒だった。

 距離を考えればあまりに早すぎる。

 音速を遥かに凌駕する速度が出ているのだろう。

 いかなる種族であろうと放たれたこの光を目で追う事は叶わない。

 そして、光が基地の結界に着弾する。

「っぴょぴょぴょぴょぴょぴょ!?」

 大規模な振動が結界の表面を食い破らんと絶えず攻め続ける。

 威力は前回の比ではない。

 先のものは海を荒ぶらせる程度であったが、今回のものは強固な結界に衝撃を与えるさらに強力なものだ。


「持つのっぴょ!?大丈夫なのっぴょ!?」

 ヴィネが地下にある状態の[グレイプニールⅡ]の傍らで、体を震わせながら言う。

 彼女がここにいるのは、次弾を如何にか耐えきれた場合、その発射もとにいるであろうデザイアに向けてこの砲を放つことのためだ。

 この砲、射程距離はかなりある。というか打ち出されたエネルギーが胡散霧消するまで直進する。

なのでこれを使えば、今耐えさえすれば、デザイアに反撃が可能。

 まさかデザイアに対して何も攻撃を行わず、ただ一方的にやられるわけにはいかない。

 当然のことだ。

 問題はヴィネへの負担が尋常ではない。

 魔力を制御するのは決して簡単な事ではない。

 おまけに今回、長距離広範囲照射をするため、制御する魔力の量が[インパクター]戦時とは比べ物にならない。

だからといって複数の者たちでやると、個々人でムラが出、属性の比が均一にならない可能性がある。そうなると打ち勝ってしまった属性の魔力がただそこに残るだけで、何も起こらない。

故にヴィネ一人なのである。

「不安なのにっぴょ……やらなきゃいけないっぴょ……っぴょ!?」

 より一層強い衝撃がヴィネを襲う。結界の振動が展開元の基地まで伝わっているのだ。

「……っぴょ~」

 振動で派手にこけ、床を転がった後、彼女は額の魔晶石をこすりながら起き上がる。

 幸い怪我はない。

「掴まっとくっぴょ……」

 また揺れた時にこんな事にならないよう、[グレイプニールⅡ]の側面にしがみつく彼女。

 効率はやや落ちているが、一応発射のための準備は進めている。

「疲れるっぴょ」

 額の汗を拭う。

 先程から続ける魔力制御のこの行為、とにかく疲れる。時間が彼女の体力を止まることなく奪っていく。

「耐えれるっぴょか……」

 今は閉じられ、見えない空の方向を見上げて心配そうに呟くヴィネ。


「お主ら、発艦準備はもうすぐできるのじゃな?」

 ブリッジ内でアメヴィスが問う。

「できるの!できるの!」

「うむ。攻撃に耐えられたら即座に[グレイプニールⅡ]の発射が行われるはずじゃ。その後、速攻ででるぞ」

「イエスイエス!」

「ごわす」

 海の水の上、クローディアが変形する。

 地下格納庫で見せた形と同じものだ。

 ブリッジ部位がオレンジに光る。


「どうせばれてないだろ。すぐにでもでてやるからな」

 クローディア内部。

 結たちがいるような場所でもなく、アメヴィスたちがいるブリッジでもなく、通路でも、動力部でもない場所。即ち、格納庫に置いて。

「俺はただせさえ無名なんだから活躍しない忘れられちまう」

 真紅の、のっぺりとした鎧頭機体の内部で腕を組む青年が一名。

 [プラネシア]でアメヴィスのもとに現れた青年である。

 その彼は自身のタクティカル・パッケージのコクピットでただ戦いが始まるのを待っていた。

「……まだか」

 と。


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