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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
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第三章[休みとトラブルの一週間]第五十七話

「来たか。解放の時が……」

「は!そうかよ!」


侵食加速。

 融合。

 爆糸射出。

 非侵食領域に侵攻。

 (ネスト)構築。


 新たなるデザイアの出現の瞬間。

 変質したその躯から無数の糸が全方位に向かって放たれる。

 その糸は白色を基調としながら、所々紅が混じり、その部分が点滅を繰り返している。

 数え切れない数のそれらは格納庫を通過。

 通路中に広がっていく。

 それだけにとどまらず、糸はデザイアに同化された各所の壁に接触。

 糸はそれを貫通し、上階層に広がる。

 僅かな時間。

 周囲一帯、あらゆる場所を貫き、通り、曲がり、絡まり、突き進む糸は。

 最終的に地上にまで到達する。

 

「これは……!?」

「何っぴょん!?」

 基地司令とヴィネが驚愕する。

無限に溢れ出る糸がすべてを覆う。

 交錯し、重なり続けるそれらが作り上げるのは巨大な繭。

 全てを閉じ込め、一挙に葬り去るための閉鎖空間。

 それを形作る全てが爆破という処理手段のための道具。

 基地地下を含めた全てが糸、デザイアの魔の手が伸びている。

 この事実は、基地そのものが爆弾と化してしまった事を意味する。

 新たに出現したデザイアは。


爆砕者(エクスプローダー)


その身もろとも万物を消滅させる死を告げる死神。

唐突に表れ、滅びへとその地を誘う先導者。

破滅の笛を鳴らすもの。

いかようにも言える。

共通する事は。

その存在が絶望を運んだものであるという事だ。


「ワタシは侵攻準備したからな。四方から一気に攻めてやる」

「好きにしろ」

「ピガッガガガ」

「抵抗を楽しむことにする、は!ロードが送り込んでくれたおかげで一つは期待できそうにないな!それに例の奴も」

「いい加減にしろ」

「……カカカ」

 クイーンとロードが行動を起こす。

イグジスターとディザスターは時節、解読不能な言葉(?)で発現するのみ。

 

「これは……」

片膝をついた状態で結が呟く。

二日間の食事なしによる空腹故である。

彼女の視線の先には大幅に見た目を変化させ、変質した新型デザイアに向けられている。

二日前よりも四肢は巨大化、というより肥大化し、植物のごとき見た目となっている。

胴は長大かつ太い円筒形。

但し色は白銀のまま。

その周りには先ほど出された無数の糸。

デザイアを中心それが張り巡らされているため、それはまるで巣を張った大蜘蛛。

その姿が結の目に映る。

唯一原形をとどめる頭部のバイザーが強く、はっきりと赤く光る。

「く……」

 デザイアが繭から現れた今、攻撃は可能であるはず。

 だがその姿はまたしても今までに類を見ないもの。

 分かっているのは驚異の同化能力のみ。

 その他に何の能力を持っているのかは不明。

 繭と同等の圧倒的な防御力を誇っているかもしれない。[インパクター]のような脅威の火力を保持しているかもしれない。同化能力と同じように、想像もできないような特殊な力を他にも隠し持っているかもしれない。

 結論。

 危険が大きい。その事実が確かにそこに在るだけである。

「……私がやる」

 [ルシファー]戦後。時間がたち、考える時間が増えるほど、結の自分が“やる”という考えは強まっている。

「ふっ……うう……」

 デザイアへの攻撃を行おうとアームドユニットを展開し、浮遊を試みる結。

 しかし、空腹のせいで姿勢制御がおぼつかない。

 僅か床から浮かんだところで落ちてしまう。

 空腹とはかくも恐ろしいものだ。

「結?」

 凜華が結の行動を見る。

 結はまともに力が出ないであろう状況でも立ち上がろうとしている。

 それに感化され、凜華も同様にしようとするが、

「わ、私も……無理……」

 結果も同じに終わる。

 一方、結。

「力が入らない……なら……」

 結の機体、ARPX-03改弐[ブレイドプリンセス]の背。

 そこにはアメヴィスが言っていた武装、刺装小砲[貫(つらぬき)]が在る。

 繭に対してはあまり有効な攻撃方向ではなかったが、今のデザイアの形態ならあるいは。

 出っ張った白い装甲から、二つのシンプルなデザインの長い銃身が突き出ている。

 後ろ向きであるそれが、結の意志に答え、その向きを変える。

 次いで銃身が伸び、根元の装甲が割れる。

 その隙間が光り、魔力が伝わる。

「発射!」

 その声と共にその細い銃身から弾が左右同時に発射。

 瞬時にデザイアの上胸部に直撃する。

 結果は。

「……外れた?」

 貫通はした。しかし、コアには当たらず。

 デザイアの胴を貫通したのみ。

 その穴は瞬時に再生する。

 さらに刹那の時を置いて。次なる事象が発現する。


「もう、限界か」

「暴走。爆発かよ」


 点滅する糸の紅。

 その速度が徐々に上がっていき、遂には見た目が常時点灯状態となる。

 糸の色は今や紅と白の入り混じったものとなった。

 そして。


ブゥゥン

 

 デザイアが動き出す。

 四肢が脈動し、糸が震える。

 振動は瞬時に広がり、新たな繭となった全域に広がる。

 その衝撃はまさしく地震そのもの。全てを揺さぶり、崩れさせる天災だ。

 だがそれは、更なる危機の前座でしかない。

 糸の紅がより強く光る。

 何処までも際限なくひたすらに。

 最終的にはあまりの明度に誰であろうと見ることが不可能となる。

「何……?この光……」

 リジェネが装甲に包まれた手で顔を覆いながら呟く。

 凜華も同じようにしている。

 結はガントレットで強烈な光から目を守るために額に当てているものの、その武骨さ故に完全に防げず、瞑った目の中に僅かに光が侵入する。

 その光は、この直後に起こることを指し示していた。


 デザイアの体内。

 そこには強烈な量のエネルギーが蓄積され、今まさに溢れ出ようとしていた。

 無理な同化の結果、発生した負荷をエネルギーに変換し、強制的に抑え込んだことが理由だ。

 そしてもはや。

 エネルギーは抑えられない。

 暴走は。爆発は。崩壊は。

 避けられない。


「は!?」

 その時。

 新型デザイアは解放した。

 その内に閉じ込められたものを。

 瞬間。

 結の眼は無限の光に支配された。


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