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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第一章[新たなる者たち]
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第一章[新たなる者たち]第五話

「ここで、試験運用を行うのですね」

ようやく出番をもらえたらしいミューティが呟く。

一行は、格納庫の外のカタパルトデッキにいた。

といっても、今は格納状態のため、ただの鉄骨の地が広がっているだけだが。

「じゃあ、いきます!」

 発表の後に格納庫で与えられたデバイスを持ち、パッケージの装着を始める。

「ARPX-03リアライズ!」

 起動コードを叫ぶ。

 デバイスから光があふれだす。

 空気中から魔力が集められ、装備の形成を開始する。

 腰回りに、四つのアームドユニットが形付くられ、頭にバイザーが出現する。

 アームドユニットの表面には、刃が半透明の大剣が取り付けられている。

 そして、装備の装着が完了する。

「これが、私の……」

 これに消費した時間は、僅か0.1秒のみ。

 アーマード・パッケージの長所は、このように小型デバイスを用いて、その場で即装備できることだ。

 このデバイスには、リアライズという上位魔術が使われている。

 この術式は、周囲の魔力を集め、物体を即時形成するといったものだ。

 言葉にしてしまうと簡単な術式に聞こえるが、実はそうではない。 

 まずこの術式を用いて物体を作るには、膨大な情報が必要となる。

 作成する物体を構成する多量の情報を術式に詰めなければならないのだ。

 この世界の魔力は、使用者の精神エネルギーによって情報を取得し、性質を一時的に変異させることによって事象を起こす。

 もちろん、物体作成系の術式も例外ではない。

 現象ではなく、物を作るのだから、そこに込めねばならない情報の量は桁違いとなる。

そのため、脳の処理能力が高くなければならず、容易に行うことができない。

おまけに、魔力を高いレベルで扱う技術も求められるため、ほとんど使えるものがいない。

 そんなものがなぜ使われているのか?

 その理由は、術式刻印という技術が開発されたためだ。

 術式刻印とは、何らかの魔術を物体に刻み付けるものである。

 それを行うことによって、術式の即時発動が可能となる。

 どういう事かというと、物体に式を刻み、さらに術として成立させるために必要な情報も刻んでおくことで、術式の情報挿入の過程を飛ばしているのだ。

 その技術を用い、リアライズの術式の容易な発動を可能としている。

 しかし、この技術にも欠点がある。

 まず、いかなる規模であろうとも、周りの魔力を相当量消費すること。

 次に、あらかじめ刻印しておくという方式のため、内容の変更が不可であること。

 これは、術式刻印自体も高度な技術であり、行えるものがほとんどいない点に起因する。

 そして最後に、これは仕方のないことではあるのだが、一つの物体に対して、刻印できる情報が限られていること。

 大量の情報を刻み付けるためには、相応のサイズが必要となる。

 タクティカル・パッケージなどは、大きいうえに、関節などの複雑な

 部分が多数あるため、情報量がアーマード・パッケージとは次元が違う。  

 だから、アーマード・パッケージしか小型デバイス化されていないのだ。

 という長すぎる話が、クライシスから聞かされていたのだが、専門外だし全く分からなかった。

 というか、これ解説する意味あったのか。

 尺取っただけでは……

「結どう?」

 凜華が聞てくる。

 こちらもアーマード・パッケージを纏っている。

「問題なさそう」

 結は四つのアームドユニットを動かしながら答える。

 それらは特に違和感なく動いてくれている。

 この分なら、使用装備を変える必要はなさそうだ。

 突如、

『私の方も見てください!』

 大きな声が二人の背後から聞こえてくる。

 唐突の声に驚き、後ろを見る二人。

『どうですか?』

 そこには、7mほどのロボットが立っていた。

 白と緑の色で頭部センサーは真っ赤である。

 肩と腰の流線型の装甲が特徴的なSTPA-05[シルフィード]だ。

 武装は大剣とライフルであり、今は腰にそれぞれ懸架されている。

 風系の術式を戦闘補助に使う機体だ。

「「誰?」」

 二人同時に呟く。

『二人とも!またそうやって私!』

 そのロボットが、両腕を振り上げて怒る。

 シュールな光景である。

「ほんとに誰?」

 凜華が本気で分からないという風に言う。

『私ですよ!ミューティ!』

「?あぁ!」

 凜華がぽんと手を合わせる。

『もぅ……』

 ミューティがぶつぶつと呟く。

 呟いているといっても、このサイズのロボットが言っているのだから、それなりに騒がしい。

 どうやら、結たちががテストしている間に、自身のストライク・パッケージに憑依してきたらしい。

 彼女等は全く気づくことはできなかった。

『扱いがひどいです……』

 ロボットが少女の声でこんなことを言っているのである。

 


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