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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
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第三章[休みとトラブルの一週間]第四十八話

 結の家を出て基地へ歩いていく二人。

 それから十数分。

 基地にはそれなりに近づき、遠目に見えるぐらいだった。

 ただし、今の彼女らのルートだと、少々遠回りになる。

 入り口が高い場所にあるため、基地の外周を歩いて行かなければならないのだ。

 もともと山であったところに基地を作り上げたため、そういう構造になった。

 入り口が上なのは、元山のふもと辺りを資材その他の集積所にするためだ。

 そこには今までに回収されたロストアームズがばらされたりと、なにかしらの方法で危険性を取り除いた状態で保管されている。

 それに関しては今は関係ないが。

 ふと、ミューティが呟いた。

「あの~、アーマード・パッケージを展開して飛んでいったらすぐに行けるんじゃないですか?あの曲がり坂を行くのは結構しんどいですよね?」

 基地の外周の坂は、かなり長く歩いて昇るのはかなり疲れてしまう。

 飛べば坂をショートカットできるので残りを楽に進める。

「……あ、完全に忘れてた」

 凜華がポンと手を叩く。

「わざわざあそこを歩く理由ないじゃん。それこそ飛んでいけば」

 そう言って凜華が懐からデバイスをとりだす。

「結もそうしたら?」

 凜華が結の顔を覗き込む。

「え?あ、うん」

 凜華の言葉で結も懐からデバイスをとりだす。

「どうしたの?考え事?」

「た、大したことじゃ……」

「さっきの事?」

「う、うん……」

「まだ納得しきれてななかったの?」

 結は歩きながら俯く。

 凜華は「はぁ」とため息をつく。

「ここまで来てから今更?」

「……うう」

 まだ結の胸の内には未練のようなものがあったのだ。

 一旦は飲み込んだのだが、少し歩いたことでそれがまた込み上げてきてしまったのだ。

「一度決めたんならしっかりしてください」

「……うん」

「そうだよ?」

 ミューティの言葉が正論と感じた結は、ひとまずまだ消化しきれていない思いを再び飲み込んだ。

「いくよ。機体展開して」

「……分かった」

 手に握ったデバイスを掲げる二人。

 凜華の髪の中にいたミューティがいったん宙に飛び上がる。

 展開の際に邪魔にならないようにするためだ。

「「リアライズ!」」

 二人が同時に叫ぶ。

 デバイスから光があふれ機体を形作る。

 凜華にはARPX-16[影華]が。

 そして結には……

「……何それ?」

「うん?」

 凜華が結の衣で立ちを見て声を上げる。

 その反応に疑問を持った結は、自分の姿を見る。

「これ……」

 追加されたのはアーマード・パッケージ。

 但しその形は、以前のARPX-03改[ソードデバイス]とはかけ離れていた。

 腰回りに付く四機のアームドユニット、額のバイザー。ここまでは同じであった。

 ここからが大きく違った。

 四肢と胴。そして背を覆う光るラインの走った純白の装甲。

 その隙間から覗くピッチリと肌に張り付くインナースーツ。

 腕の先のガントレット兼アーマー。

 脚の先のつま先を装甲で覆い、伸ばしたような先端の鋭いホバーユニット。

 全体のシルエットは各部が鋭い武装ユニットを纏った戦乙女のような武装少女だ。

「え……?」

 自身の機体を見回しながら声を漏らす結。

 ここまで変わると、武装展開というよりもむしろ変身である。

 というか、ぴっちりのインナーになっているが、今まで来ていた裾を絞った着物はどこに行ったのだろうか。インナーの下に押し込められてでもいるのか。

「そういえば、結と天さんのやり取りの時、デバイスが改造云々の話に発展したしましたよね。天さんはそれを肯定した様子でしたよ」

 ARPX-16[影華]に当たらないように凜華の髪の中に戻ったミューティが、二人に言う。

「改造?それでこうなるの?」

「主役機の交代、速すぎない?」

 まだまだ序盤ではあるのだが。

「ま、いっか。結、一気にショートカットしよ」

 ひとまず、その事は横の空気棚の上に置いておいた。

「あ、うん」

 相当ゴツゴツとした形になった新たな機体への疑問は残っていたが、凜華が飛ぼうとゴンがいに行っていたので、それを放置して結もそうすることとした。

 その行為が、トラブルに繋がると知らず。

「それ!」

 凜華の機体のスラスターから、魔術によって推進のためのエネルギーがあふれ出る。

 髪の中にミューティ兼エリュシュオンを入れた彼女が勢いよく空に飛び立つ。

 結もそれに続こうと、これまで扱った通りに機体のアームドユニットに取り付けられたスラスターを全開にして、空に上がろうとする。

 その時結は、機体が改造されているという事実をもっと意識すべきであった。

「あれっ……ってうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 結の叫び声が上がる。

 そのアーマード・パッケージ、ARPX-03改二に包まれた身が、凜華の数倍のスピードで空に上がる。

「っと、急にどうし……えぇ!?」

 凜華が驚きで叫び声をあげる。

 其の横を結が一気に空へ突き進む。

「え?え?ちょっと待って結!」

 突如として超高速で自身の追い越した結を追って、凜華は機体スラスターを全開にする。

 その身と機体の両腕をまっすぐ下に伸ばして空気抵抗減らす。

「何ですかあの速度!?」

 ミューティが凜華の髪の中で叫ぶ。

 その間にも結は空高く飛翔していく。

 本人は全く制御できていないが。

「あわわわわわ……!!」

 慌てて結は機体のスラスター出力を落とそうと制御を試みる。

 その間に彼女は、いつのまにか[プラネシア]のヴァルキュリアスの基地入り口のある場所よりも高い場所まで届いていた。

 遠目に転移門(ゲート)が設置された格納庫が見えたが、今の彼女はそれどころではなかった。

「今までと感覚が違う……!」

 改造された機体は当然ながらこれまでとは違う操り方を要求してきた。

 [ルシファー]戦などで[ソードデバイス]を多少扱い慣れたところだったのだが、もうそれを変える必要が出てくるとは。

 いや、そもそも機体の癖などを掴み、扱いなれてから戦いに挑むべきであるべきだ。

 機体の扱いに関する訓練を大してしていないヴァルキュリアスは、かなり問題あるのではないか。

まぁ、アーマード・パッケージは改造機という例外を除いて比較的扱いやすくできているが。

「えっと、こうして……できた!?」

 数秒後。

 どうにかスラスター出力を調整……

「あれ」

 を誤った。

 ただ単純に。

 純粋に。

 それによってスラスターをうっかり止めてしまう。

 数秒間慣性で空を舞うがすぐに落下が始まる。

 そこに。

「うわぁ!?」

 勢いよく飛んできた凜華がそこに突っ込む。

「凜華……ごふっ!?」

「ぎゃふっ!?」

 変な声二人から漏れる。

 ぶつかった凜華は勢いのまま突っ切り、ぶつかられた結は。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 勢いよく吹き飛ぶ。

 スラスター全開で来た凜華の意図しなかった突撃は、食らわせた結を、猛烈な速度で駒がぶつかるがごとく弾いたのだった。

「ぐぅぅ……!」

 結から苦し気な声が漏れる。

 それを空から見て凜華が「結!」と焦って叫び声を上げる。

 名を呼ばれた当人は激突の衝撃で勢いよく吹っ飛んでいく。

 そしてその先には、転移門(ゲート)が機体輸送のために開かれつつある基地の格納庫があった。

 サイズが調整中の転移門(ゲート)の手前に、シンプルなデザインのコンテナがゆっくりと運ばれていった。

 しかし、結はそんなことには気づかない。

 けれど。

「態勢を……!」

 ひとまず態勢を立て直そうとできることを行った。

 スラスターの全力噴射だ。

 四機のアームドユニットを可能な範囲で後ろに動かし、抵抗を試みる。

 その間にも、格納庫は迫っていった。

「はっ!?」

 結がそれに気が付く。

 そこで、彼女の頭の中に一つのアイデアが浮かんだ。

 彼女はそれに従い、空気抵抗でほとんど動かすことが叶わない体を無理に動かし、足を後方に向ける。

 カタパルトが彼女の身に迫ってくる。正確には彼女が迫っているのだが。

 ここまでわずか数秒。

 勢いを殺しきることもできない。

 わずかに態勢の変更のみ成功した結は。

「……!」

 そのまま、カタパルトデッキに勢いよく突っ込む……いや、スラスターのおかげで激突は避ける。そう直感的に判断。刹那。

 躯が接触する。

 ここで足の向きを変えたことが功を奏した。

 仕合で後ろに突き飛ばされるとき、その勢いを殺すときのような態勢に代わる。

 右足を後ろ、右腕を前にした姿勢でカタパルトデッキを後ろ向きに直進する結。

つま先と踵の装甲がカタパルトデッキとこすれ合い、火花と甲高い音を上げる。

周囲に高音が響き渡る。

火花が散り続ける。

そして。

「ぐっ……!?」

 それによってギリギリ勢いが殺しきられ、結はコンテナに軽く当たったところで止まることができた。

 ただし、その際にそれなりの衝撃が結を襲っていた。

「う……あ」

 結ががっくりと膝をつく。

 息が荒くなり、「はぁはぁ」と声が漏れた。

「結!」

 凜華が再び結の名を呼びながら、コンテナ前で前傾姿勢になった彼女のもとへ飛んで行った。

「……ひ、どい目、にあった……」

 あらい呼吸をしながら結が密かに呟いた。

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