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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
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第三章[休みとトラブルの一週間]第四十七話

 結論から言うと。

「結局、行くんですか?」

「うん。ヴァルキュリアスに入ったのはデザイア倒すためだから」

 片手を握りこんで言う結。

 数秒の沈黙の後、その答えが出たのであった。

「凜華ちゃんは?」

「私もそうし…」

「あんまりして欲しくないけど……」

「よっか……え?」

 凜華がぽかんとした顔になる。

「だって。あの時……」

 [ルシファー]戦の時の凜華の姿を脳裏に浮かべる結。

 あの時、彼女は危うく[ルシファー]の手によって握り潰されるところであった。

 その時に二年前の絶望を再び味わった。

 瞬時の激高によってすぐに打ち消されてしまったが、後から思い出すと、やはり心が痛む。

 二度も親友が死にかけるのを見たのだから。

「この作戦、絶対大規模だし、凜華……危ないよ。今までは大丈夫だと思ってたけど……でも、もう」

「……」

「代わりに私が頑張るから。凜華は守るよ」

「……ふ~ん。そう……」

 凜華が結の言葉を聞いて腕を組む。

 しばし静寂が流れる。

「……うん。結」

「何?凜華……」

 瞬きして聞く結。

「仕合する?」

「へ?」

 結が急な申し出に驚く。

 驚きでその目が見開かれる。

「私だってそんな弱くないよ?だから試合で証明する……まぁ冗談だけど」

「冗談なの!?」

 愕然とする結。

「まぁ、何か典型的な展開っぽいところあるし、さっきの見た後じゃ、ね?」

「敵う自信がないってこと?」

 天が確認とばかりに尋ねる。

 凜華は当然、と頷く。

「じゃぁ。結、そんなに私のこと信じられない?」

「え!?」

 びくりと身を震わせる結。

 唐突にそんなことを言われたことで次の瞬間には彼女は硬直してしまっていた。

「どっかで聞いたことある気がする台詞だけど、どう?効いた?」

「……!」

 こくこくとうなずく結。

 まさかこんなことを言われるとは予想だにしていなかったのだ。

「ふふっ」

 くすくすと凜華が笑う。

 如何やら結はからかわれたようである。

「心配は嬉しいけど。大丈夫……とかは全く言えたもんじゃないけど、でも結と一緒に戦えないのは嫌だなぁ」

「……何で?」

 からかわれたと分かり、硬直が解けた結は凜華に理由を聞く。

「結っていったん怒ったら周りが見えなくなるでしょ?かなり危ないよ。抑えられるかな?自分で」

「……自信ない、けど」

 結がうつむく。

「そうだな~。追い打ちはこうでいこっか」

「?」

「大の親友を信じられない君は、そんな心の在り方で自分を信じられるかな?」

「……え?」

 呆ける結。

 凜華がこんなことを言ってくるとは。

 普段の行動からは想像もつかない。

「自信がないってことは、自分を信じきれないってことでしょ」

 肩目を瞑って言う凜華。

「確かに、そうね」

 その言葉に頷く結の母と天。

 結は再度硬直する。

 自分を信じきれないとか……

「私も結のこと、心配してるんだよ?」

 立ち上がって結のもとに歩み寄っていく。

 固まったままの結は何もできない。

 それを見ながら凜華は彼女の歩に手を当てる。

「ほぇ!?」

「私たち互いが、互いを心配してるんだよ?だったら、二人で助け合おうよ。私、結より弱いと思うけど、結の暴走を止めるとかはできるかもしれないしね。だから、一緒に参加しよ。ね?」

「り、凜華……」

 頬を赤らめて友の名を呟く結。

 凜華は笑いながら結を見つめている。

 ここまで言われたら、一緒に来ないで何て突き放すのは忍びなかった。

「じゃ、二人とも行くってことでいいの?」

 結の母が顔に手を当てて問う。

「はい。ね、結?」

「……うん。分かった、凜華」

 凜華の先の言葉もあって、結はともに作戦に参加することを承諾した。

「じゃぁ、これから基地に行くの?」

「……どうする?」

「時間的に考えると、今日聞きに入った方がいいんじゃないですか」

『かもしれないね』

 ミューティ兼エリュシュオンが呟く。

後者の声は周りに聞こえないが。

「でもゆっくりとして言ってからでもいいのよ。こちらは困らないし」

「う~ん」

「すぐに行くのを勧めるけど」

 天が二人に言う。

「何でですか?師匠」

「そこのが言う通り、時間的なことがあるから。どこに配属されるか知らないけど、でもその後の移動時間の確保どうする?」

「そこのって、私の事ですか?」

「そうだけど」

「言い方、もう少しどうにかならなかったんですか?」

「そう思うけどどうするの」

「無視しないでください」

 ミューティの抗議の声を無視して天が二人に尋ねる。

「だったら早く行った方がいいんじゃ……?」

「そうかも……」

 基地には転移門(ゲート)があるが使わせてもらえる可能性は低い。

 [プラネシア]周辺にもそれなりにヴァルキュリアスの隊員がいる。

 そこに来た全員にそれを使わしてくれるとは限らない。

 だが、連絡から二日経っている。

 主要な隊員はもう動いているだろう。

 であるならば、転移門(ゲート)を使わせてもらえるかもしれない。

まぁいずれにしろ。

「行ってみなきゃわからないね」

 そして数分後。

「それじゃ」

「はい」

「ふん」

 衣服を整え、デバイスを持った結たち。

 彼女等はひとまず基地に言って話を聞くこととした。

 そこで説明他を受けた後、できるならそれぞれ家に戻って家族と話すことにする。

 結は先に済ませておくこととした。

「あなたの意志なら止めないわ。でも、気を付けてね。くれぐれも」

「死んだりすることなどないように」

「勿論!お母さん、師匠」

 笑顔で返す結。

「信じてるわよ」

「うん!」

「結、済んだ?」

 凜華が玄関の扉を開けながら聞く。

「ほら、待たせたら悪いわよ。行ってらっしゃい」

「分かった。それじゃあね!」

 結の母は笑顔で手を振りながら結の出立を見送る。

 天は、表情も反応も素っ気ない物だった。

 結たちは玄関を出た後、扉を閉めて外に踏み出す。

 土と石を踏み行き、基地を目指す。


「行ってしまったわね。またすぐに会えるかもしれないけど」

「会えないかもしれない。作戦のためにそのまましばらく帰ってこない可能性もある」

 玄関前の廊下で話し込む二人。

 そこに。

「行ったんですね」

「あ、ククルカン」

 天が振り向いて呟く。

 そこには一人の妖霊種の女性が立っていた。

「あなたもすぐに行くんでしょ?」

「はい。私も前線に出るので」

「じゃぁ、また札に戻らなきゃいけないか」

「すみません。天様」

 彼女がぺこりと頭を下げる。

 それに天は相も変わらず素っ気なく返す。

「別にいい。剣聖とはそういうもの」

「では」

 妖霊種の女性が手を上げる。

 同時に天の躯が光り輝く。

 その光は紫。

 そして、天の体は瞬時に、札に代わる。

「式神みたいよね」

「行為だけ見れば確かに良く似てますね」

 妖霊種の女性が床に落ちた札を回収し、懐にしまい込む。

「顏を合わせるのは相変わらず怖い?」

「はい……あの子の事を思い出してしまうので。おまけに結は、その力を不完全とはいえ、継承したようですし。彼の言葉が頭の中で何回も……」

「私の時もそうだったわよね。本当に、戦闘力はあっても、心は強くないのよね」

「いいえ。前者に関しても、私は無力ですよ。デザイアと戦うことは私の性質的に由来するとはいえ、無理なんですから」

 ゆっくりと首を振る彼女。

「そう。でも、あなたにできることはちゃんとある。それは頑張ってね」

「勿論です」

 妖霊種の女性が胸元でこぶしを握り締めて呟く。

 結の母はそれを結を見るのと同じ目で見つめる。

 


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