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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
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第三章[休みとトラブルの一週間]第四十話

「……え?」

 起きてその目の前にあった天井の大穴。

 その先には、青い早朝の空が覗いている。

 白い雲が風に乗ってゆっくりと進んでいく。

 その隙間にある太陽がまぶしかった。

「……わたしの部屋?」

 ゆっくりと結は起き上がる。

 その姿はいつもの浴衣だった。

 そして、その下の素肌には傷一つなかった。

 確かにいくつかあったのだが。

「……誰かが癒してくれた?いや、それ以前になんで私の自分の部屋にいて寝てるの?」

 言いながら自分が寝ていたのであろう布団を見下ろす。

 これもまたいつもの白と紺の布団だ。

 それが床に敷かれ、その上の掛布団が結にかけられている。

 いつもの起床時のようだ。

 まぁ結は自分の部屋にいること、そこの天井に穴が開いているなんて状況に混乱しているので全く持って“いつもの”とは言えないが。

「何か見てた気がする……」

 先時まで見ていた夢?は結の意識にはっきりと残っていなかった。

 意識には。それは、彼女の奥底に影響を残して行ったけれど、彼女がそれに気づくことは、今はない。

 ひとまず、それは脇に置いておくこととした。

「気を失う前、何してたんだっけ……」

 寝起きでまだぼんやりとする頭。

 そんな中で記憶を探り、これまで何をしていたのか思い出す。

「……えっと、確か湖に遊びに行って。それでデザイアが降ってきて。湖に沈んで、リジェネに助けてもらって……」

 長い台詞に一旦息を吸う。

 いろいろ思い出すために、声小さめではあるが長台詞を言う。

「その後いろいろあって地上に戻って。そこで大っきなデザイアに遭遇して……

凜華が死にかけて……」

 そこまで思い出して少し涙が出そうになる。

 だがその後のことをすぐに思い出し、どうにか落ち着く。

「それで……挑んで負けて。そして、あれが出た……」

 謎に包まれた己が力。

 妙に都合よくでてくる強力な何か。

「それで。凜華が蘇生して。それから協力して頑張って。あの堕天使みたいなデザイアを倒した……」

 その後気を失って……そして今に至った。

 これでここに来るまでの事は思い出せた。

 後はここにいる理由だ。と。

「すぅすぅ……ニヒヒ、結~~むにゃむにゃ……」

「……」

 部屋の奥の方では布団の上で凜華が気持ちよさそうに眠っていた。

 何か変な寝言を言っているが気にしない。

 不敵な笑みを浮かべていることは、ちょっと意識の外には気になりすぎておけなかった。

「……ふん?」

 笑みを浮かべて寝ていた凜華の耳が何かを察知したかのようにぴくぴくと動く。

「ふあぁぁぁぁ~~~~」

 とんでもない大あくびとともに凜華が目を覚ます。

 片腕をめいっぱい伸ばしその後息を吐く。

「ふぅ。……ん?結の部屋?」

 彼女は目に入って景色から瞬時に自分のいる場所を理解したようである。

 確か一度は来たことがあったので、覚えていたのかもしれない。

 それにしてもこう一瞬でわかるようなものだろうか。一度見たぐらいで。

「あ。結おはよう」

 起き上がった凜華が結に気付く。

 朝なのであいさつくらいしようと思ったのだろう。

「う、うん。おはよう」

 結も挨拶する。

 見ると座る凜華の腰の横辺りからゆっくりと動いている尻尾が見える。

 その動き方はまるで凜華の機嫌を表しているかのようだ。

 実際機嫌がいい。結は凜華が不機嫌な場面はあまり見たことがなかったが。

「私何で結の部屋いるの?」

 凜華が当然の疑問を結の方を向いて口にする。

 言われる結も何故なのかはわかっていないが。

「さぁ……」

 結が肩をすくめる。

「さぁって……」

「私も何で自分の部屋にいるのか知らないし、なにより……」

 言葉をいったん止めて天井の大穴を見る。

「……これ」

「穴だね」

「そう、穴」

「大きいね」

「う、うん」

「何で空いてるんだろうね」

「うん……」

「会話単調だね」

「そうだね…………?」

「あれ、エリュシュオンの声?」

 同じ調子の会話と言ったもの、聖閃姫エリュシュオンの声が何処からか聞こえてきた。

 しかしその姿は、小さいゆえかすぐに見つけることができない。

 二人は気になって、座ったまま見回してエリュシュオンの居場所を探す。

 やはりすぐには見つからない。

「場所分からないの?エリはここだよ~」

 声は聞こえてくる。けれど姿は見えない。まさしく、声はすれども姿は見えずである。

「どこ?エリュシュオン?」

 凜華が部屋全体を見和した後、首をかしげる。

 やはり見つからない。

 隙間にでも挟まっているのか。

「見つけてもらえないなら、もう武器でここ切っちゃった方がいいかな……」

 若干物騒な発言が聞こえる。

 でもこういう言い方をしているという事は、やはり挟まっているのか。

「う~ん……?」

 ふと部屋の入り口にあたる戸を見る結。

 何気なしに見たのだったが、そこには。

「あ。凜華、いた」

「うん、いるね」

 結が戸を指さし、その先を見て凜華が頷く。

 戸の所、というかそれと壁との隙間に、

「あ、見つけてもらえた」

 エリュシュオンが挟まっていた。それも下の方ではなく戸の半分ぐらいの高さのところで見事に腰がロックされた模様。

 その彼女は今まさに背中の武装を抜いて自分を捕らえる戸の部分を切り裂いて脱出しようとしていたところであった。

「わわわわ!ちょっとそれは待って!?」

 慌ててそれを止める結。

 戸に変な穴でも作られたらたまったものでは無い。

 まさか本当にやるつもりだったとは結は思わなかったのだ。

 彼女はかなり慌ててしまった。

「見つけてくれたなら、出して?動けないから……」

「うん。分かった」

 凜華がエリュシュオンの言葉に返答して掛け布団を払いのけて立ち上がる。

「ふぅ~。なんか体軽い気がする」

 ぐっすりと眠っていたからか。

 分からないが。

「まぁいいや」

 言いながら凜華は戸の方に歩いて行き、しゃがみ込んで片手を出す。

 戸を開けたときにエリュシュオンが床に落ちて損傷しないためだ。

 戸と壁の隙間に指三本を入れ、エリュシュオンの落下防止。

 それを確認してからゆっくりと戸を開ける。

 枷が外れ、エリュシュオンが凜華の手の中に転がり落ちる。

 その時、「ぱふっ!?」と若干可愛い声を発していた。

「ありがとう。エリ助かった」

「どういたしまして」

 手の中に入るエリュシュオンが凜華にお礼を言い、彼女はそれに快く答える。

 その後、凜華は立ち上がって結のもとに向かう。

「で、どういう事なんだろね?」

「……」

 結局状況がよく分からないのは変わっていなかった。


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