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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
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第三章[休みとトラブルの一週間]第三十八話

「複数人ね……」

 そう言うと立ち上がる人類種の女性。

 空から降り注ぐ叫び声に気付いたのであった。

 彼女は服の汚れを手でパンパンと手で払い、立ちあがる。

 空から落ちてくる者たち、ミューティたちをその目に捉える。

「どういうことかしら。こんな夜遅くに飛んでいる天使や飛翔種なんているわけないし……」

 頬に手を当てて不思議そうに呟く彼女。

 こんな時間帯に飛んでいる聖翼種も邪翼種も、飛翔種も幻竜種もいるとは考えづらい。

 たいていの種族はこの時間帯は家の中だ。

 そうそう外にいない。

 夜目が効くものは多くないためだ。

 全くいないわけではないが。

「っていうか何で落ちてくるのかしら」

 首をかしげる。

 こんなところで墜落する要素などなさそうだが……

「まぁいいわ。受け止めましょう」

 いうが早いか両腕を広げる。

 具体的な人数は分からないがそう多くはないだろう。

 多分受け止められる人数だろう。

「さて。身体強化」

 短い詠唱を行う。

 彼女の体が一瞬光る。

「よし。これで問題なし」

 彼女の表面上は見えない奥。

 骨と筋肉の強度が魔術によって遥かに向上する。

 身体強化の無属性魔術だ。

 これで落ちてくるものが多少重くとも耐えられる。

 準備は完了。

 後は受け止めるのみ。

「『うわわわわわわぁぁぁぁぁ!!!!!』」

 叫び声が接近により大きくなっていく。

 そして四人が彼女の両腕に。

「っと……!?」

 魔術に強化された腕の中に落ちてきた四人の総重量は。

「相当重っ………え!?」

 パッケージもあるためかなりの者であった。

 そこに落下の勢いが重ねられた。

 そうなると、どうなるか。

 重量プラス重力による衝撃は、受け止めた彼女の腰を強引におらせる。

 其れだけにはとどまらず伝わったそれは、彼女の足元の屋根を崩れさせた。

「……!」

 声が漏れる。

 ここまで四秒ほど。

 その次に起きる事象は決まっている。

 足元の屋根、足場が崩れた。

 その先に待っているのは落下である。

「わっ!?」

 声を上げる彼女。

 同時に屋根の破片もろともその下の部屋に落ちる。

 ドスッ!

「っつ……!」

 ミューティたちを抱えたまま、部屋の床に尻もちをつく。

 魔術による強化のおかげで怪我は免れた。

 服にも破損はない。

 但し。

「天井が……はぁ~」

 ため息をつく彼女。

 見事に天井に大穴が開いてしまったのだった。

 直さねばならない。

 できた穴はそれなりに大きい。

 少し手間取るかもしれない。

 また落ちた破片の掃除もしなければならない。

 けれど、今はそんなことより重要なことが彼女にはあった。

「結がまだ帰ってきてないのにそんな事……」

 娘の身が心配であった彼女、結の母親。

 彼女は天井に向けていた視線を受け止めた四人の方に向ける。

 いや、見た目は二人だが。

「あら、結!」

 そして、その手の中に自身の娘の姿を認めた。

「もう心配したんだから」

 そう言って結の事を見つめる彼女。

「……!傷が」

 そして、その体に刻まれたいくつもの傷に気付く。

 かなり痛々しい。

「急いで治療しないと!」

 結の状態に危険を感じて立ち上がろうとする彼女。

 そこで、また。

「あら?凜華ちゃん?」

 両腕の空間の大半を占める静かに息を漏らす凜華の事に気付く。

 彼女は凜華の事を知っている。

 デザイア襲来前から結と凜華は関係を持っていた。

 以前住んでいた家に遊びに凜華が来ていたことがあったのだ。

 その時に彼女と知り合った。

 その後も何度か会って話している。

 かなり打ち解けた関係になっていた。

「何で凜華ちゃんが結と一緒に空から落ちてくるの?まぁ、元々は一緒に遊びに出ていたのだから当然かしら……」

 ひとまず腕の中の彼女らを破片のない床部分に横たえる。

 凜華の機体は大分置くのに邪魔だったが、彼女は解除法を知らなかったのでそのままにした。

 因みに凜華を横たえようとした時、彼女の髪の隙間から先の事で目を回していたエリュシュオンが転がり落ちたが、夜の暗闇に隠されて気が付かなかった。

「さて。取り合えず置いたし、治療を……」

 袖をまくり結の治療を行おうとする彼女の母。

 彼女は結構いろいろな魔術が使えるのである。

 高位の術式は使えないが。

 こういう時には非常に便利だ。

 右手の人差し指の先を起点として術式を行使しようとする。

 その時。

「どうしたんですか?轟音がしましたが」

 疑問の声とともに部屋の奥の戸が開く。

 すっと廊下の明かりが部屋に差し込む。

 それを背にして一人の妖霊種の女性が現れる。

 結の母と似たような服を着ている。

「天井に穴?あなたこの部屋で何をしていたんですか?」

「いえ。屋根の上にいたんですけどね。結が全く帰ってこなくて心配で」

「それは私もそうですが。ですが何やったらこんなことに……」

 そう言いながら結の母の隣を見る妖霊種の女性。

 その視線の先の結らを見た彼女。

「……!結……」

「ええ。何故か全身傷だらけなの。だから治療しなきゃ」

「……そう。部屋なんかボロボロね。私たちが掃除しておきましょうか」

「じゃぁお願いするわ。私は結の治療をするから。後、この子の機体どうにかしておいてくれると助かるわ」

「ええ。これでも重鎮ですから。それぐらいはできますよ」

 そう言って妖霊種の女性はスゥスゥと息を立てる凜華のもとに歩んでいく。

 彼女はその時、結を直視することを避けていた。

 とある理由から。

 一方結の母は治療を開始する。

 妖霊種の女性が結を見るのを恐れていることを彼女は知っていたが、それについて追及することはなかった。

 昔からの事だと聞いており、それに関して話すことは彼女の心の傷に触れることになると分かっていたため、これまでこれからも話題にあげるつもりはないのだ。

 結の母の魔術の光が月の出ない夜故の暗闇を部分的に塗りつぶす。

「確かここをこうしてこうすれば……」

 妖霊種の女性は凜華のパッケージのある部分を操作する。

 すると、そちらの方でも光が発せられる。

 それもすぐに収まり残されたのは、パッケージの展開を解除されて干渉物がなくなって自由な体制をとれるようになった疲れで眠る凜華だ。

 息とともに動く尻尾とペタンとなった耳が可愛い。

「これで完了ね」

 立ち上がって言う。

「そっちはどうですか?」

「問題ないわ。応急処置ぐらいはされていたようだから。まぁこれなら術行使から七時間も寝かせておけば大丈夫なはずよ」

「わかったわ。では掃除を始めます」

「了解よ。二人は私が持っておくから」

 体を治癒した結と、寝ている凜華を抱える結の母。

 それを確認し、妖霊種の女性が懐から三つの札を取りだす。

「先代方」

 其の声と同時に札が光る。

 彼女はそれから手を放す。

 手を離れ、落ちていく三枚の光る札。

 それは落ちていく間に光を増し、いつの間にか人の形をとり、その大きさを拡大させる。

 光が消えその中から姿を現したのは三人の少女または、女性、男性だった。

「先代方にお願いがあるのですけど」

「ふむ?」

「なんだ?」

「……?」

 三人がそれぞれ違う反応を返す。

「ここの掃除を手伝ってほしいのです」

「「「……」」」

「すみません。こんなことで呼び出してしまって」

「まぁ良い。わしらも暇であるからな」

「いつも天のみが動き待っていてこちらは基本中だったからな」

「……ああ」

 快く妖霊種の女性の頼みを聞き入れる三人。

「ありがとうございます」

 彼女はその三人に礼を言い、

「では始めましょう」

 片付けを始めた。


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