第一章[新たなる者たち]第三話
「さあ、ここが選別を行う場所だ。そこの奴の指示に従ってくれ。じゃあな!」
「さらばだ!」
彼らも、ククルカンと同じようにすぐにいなくなってしまった。
「で結局、選別を行うのって誰なの?」
「はてさて」
「……」
隊員たちが口々に疑問を口にする。
格納庫の奥に来たのはいいのだが、これからどうすれば……。
いろいろな機材が置かれ、その先にはガラス張りの部屋がいくつも設置されている。
奥の方にしては、意外といろいろある。
ここで行うのだから当然なのだろうが。
しかし、誰もいない。
待っていろということだろうか。
けれども、来る気配が全くない。
そんな状況が数分続き、
「いったいどういうことなの!?」
ついにじれた凜華が、声を上げる。
いろいろ勝手に進んでいって、混乱が加速しているようだ。
「まぁまぁ」
とりあえず凜華をなだめていると、
「どうも~、皆さんこんにちは~」
突如として、自分たちが来た方向から声がする。
「どこ?」
隊員の一人が、呟く。
全員が、驚いて周囲を見渡す。
「ここですよ~」
そんな声が聞こえたと思ったら、体中に緑の大きな結晶を引っ付けた少女が、虚空から姿を現す。
その少女が口を開く。
「あたしは~、選別の統率をまかされた~、宝玉種の~」
ゆっくりだな……。
先程と同じように、全員が同じことを思う。
「<透宝輝>~、エーテルですぅ~」
若干、気が緩む。
とてつもなくスローな自己紹介が終わる。
そして、彼女の背後から似たような見た目をした人たちが、何人も現れる。
ようやく、選別が始まるのか。
気が張り詰めた状態で、放置されていたため、早くも疲れてしまっていた隊員たちの間に、
安堵の空気が流れる。
これ以上待たされたら、緊張で倒れるところだったと言う隊員もちらほら。
「ようやく……」
いち早くじれていた凜華が、ホッと息をつく。
「そうだね」
ついに、命を預ける相棒たるパッケージの、使用する種類が決まる。
改めて、気を引き締める。
ちなみに、エーテル達はなぜ虚空から現れたのか。
これにはからくりがある。
そもそも、彼女らは急に出て来たのではなく、普通に歩いてきた。
それが、隊員たちに気付かれなかったのは、種族の特有の能力だ。
宝玉種という種族は、体の40~70%が、魔力が結晶化したもの、魔晶石で構成された状態で生まれてくる。
そのため魔力との親和性が非常に高い。
彼女らは一つの魔力の属性を持って生まれてくるのだが、それを変えることはできない。
他の種族は、努力次第で変えられるのだが。
そのため、使える術式の数が少なく、汎用性に欠ける。
しかし、それと引き換えに生まれ持った属性の、最高クラスの術式を使うことができる。
エーテルらが持っているのは、光属性。
光を操る属性だ。
通常の光属性の術式は、周りを照らすなどの単純なものだ。
しかし、その極位は、光の屈折率を変えるなどの光の完全制御だ。
彼女らはそれを使って姿を隠していたのだ。
何故そんなことをしたのか。
こちらが知るわけがないだろう。
何か思惑があったのだろうか。
思いつくとすれば、驚かして緊張を解こうとした、などだろうか。
だとしたら、成功はしたのだろうが、散々待たされていたので、早く選別を始めてほしかった。