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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
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第三章[休みとトラブルの一週間]第三十三話

『反応が遅い!』

 [ルシファー]の思考。

 イアが、その腕を駆ける。

 それに焦っている。

 眼前に迫る、己が力を打ち消さんとする者。

 介入する力を。

 それを排除しようとするが、

『動きが単純すぎる。本体ではないとこんなものか……く。折角……っつ、間に合わないか』

 イアの両腕装甲の紋様。

 それが胴の装甲に突きつけられる。

『チッ!ハッキングが……』

 その力、ダメージ処理の遅効が崩されていく。

『後は重量制御だけか……』

 直後。


 爆発。亀裂。断裂。崩壊。


それらが、まるで水をせき止めていたかのように一気に溢れ出す。

 押しとどめられていた処理が、即座に実行される。

 本来与えられているはずのダメージが、現出する。

「危ない」

 イアが[ルシファー]の胴を蹴って離脱する。

 彼女が行った行為は、処理の加速。

 ■■種、四星種の一角たる彼女のみが許された力だ。

 それを機体の機能が拡張しているのだ。

「ふっ」

 イアはバハムートの脚に飛び乗る。

 彼女は翼を羽ばたかせ、離脱する。

 処理の実行、加速が[ルシファー]の両腕にまで及ぶ。

 ルビリントたちが与えたダメージがその巨腕を崩壊に導く。

「うわっ!?」

 結と凜華はそれに驚き、スラスターを使用して反転。

 爆発から逃れる。

 結は凜華より[ルシファー]の近くにおり、そのままだと巻き込まれるところであったが、翼の恩恵で逃げ切ることに成功した。

「あ、危なかった……」

 十分に距離をとる二名。

 見ると、[ルシファー]の巨体が爆炎でかき消されている。

 巨体の破片が降り注ぐが、すぐに光の粒子と消える。

 立て続けに爆発が起こる。

 こんなものが連続で起これば、[ルシファー]とて無事ではあるまい。

 そのうち、爆発が止まる。


 処理完了。


 煙が晴れていく。

 その中には。

「まだ、耐えてる……かなりダメージ負ってるけど…」

 凜華が呟く。

 その言葉通り、[ルシファー]は中破レベルの損傷を追っていた。(ここまでの爆発が起きて中破で済んでいるのは、それだけこのデザイア本体の耐久力が高いことを示している。)

 右腕は肘から先を喪失。

 左腕は残ってはいるが、表面がボロボロになっていて、簡単に破壊できそうである。

 胴の損傷も大きく、装甲の大半が崩れ去っている。

 脚は約半数が健在であるがその付け根、[ヴァリアント]だった部分は下半分が千切ったかのようになくなっている。そこから内部のほぼ何もない空白の機構が覗く。

 デザイアは機械ではない。

 それは既に分かっていることである。

「ずいぶん食らったるな。何したんだ?」

「特に。止められていた処理を実行、その速度を上げた」

「ふん?四星種のいう事は分からねぇな」

「じゃぁ聞かないで」

 飛び上がりながら話すイアとバハムート。

 かなりのダメージを受けている[ルシファー]はすぐには動かない。

『すぐに行えないのはな……使い勝手が悪い。やはり本体の方がいい』

 だが、戦闘力を喪失したわけではない。

『油断大敵、か。そんな言葉もあったな。しかし、全力を出せないのはつまらないものだ。だが』

 [ルシファー]が再び動き出す。

 それを察知する四名。

「来る!」

 結が呟く。

 けれど、[ルシファー]はかなり戦闘能力を喪失している。

 いまなら容易に倒せるのではないか。

 そんな考えが頭をよぎる。

 それを否定する事象が怒る。

『強化』

 かのデザイアのもう一つの特殊な力。

 重力強化が行われる。

 それを知らぬ彼女らは。

「お?お?何だ!?」

「急に体が……」

「お、重い…」

 それをすでに視ていた(、、、、)イアは無言である。

 バハムートの上にいる彼女は、抵抗など無駄と知っているのだった。

 彼女の力ではどうすることもできない。

 彼女等は一斉に地に落ちていく。

 その巨体を飛ばせる強靭かつ、強力な翼をもつバハムートでも抗えない力がかかっていたのだった。

 結と凜華はスラスター全開で高度を保とうとしたが叶わなかった。

「ぐ……うっ!?」

 地に伏せる一同。

 その近くには、

「マ、マスター。無事でよかったです……」

「……」

 同一の状態にあるリジェネとミューティがいた。

 リジェネは苦しげな表情。

ミューティは彼女ほどではないがやはり苦しげ。

 そして、その小さな体が軋む音が上がっている。

「す、数分ぶりの出番でこんなことになるなんて……」

『そんなことより、体が壊れる~!!エリの意識消えちゃうからーー!?』

「潰されたらエリュシュオンが逝ってしまうことになってしまいます」

『そうなったらそっちも道連れ~!』

「無理ですよ……」

 一つのからだで二人が焦りと、恐怖を含んだ会話をしている間にも軋みは続く。

 むしろ強くなっている。

「ミュ、ミューティ……」

 すぐそばの地に押し付けられた状態の凜華が呟く。

 手を伸ばそうとするが、かかる力のせいで少し手を上げるだけで猛烈に体力が持っていかれる。

 それ以上上がらずに終わる。

「くっ…」

 それを見ていた彼女の隣の結が声を漏らす。

 このままでは不味い。

 徐々に体が地に埋まっていく。

 それほどまでに強化された重力は強い。

 そのままであれば、死んでいないのに土葬される。

 そしたら地中で窒息だ。

 いずれにせよ、この状況の先には“死”待つのみ。

 現状を打破する必要がある。

 けれどどうやって?

「き、きっついわね」

 リジェネが呻く。

「これはなかなか~」

「化け物じみた耐久力。でも飛ぶのは無理なんだ」

「流石に無理だわ~」

 バハムートとイア。

 後者はほとんど負荷を感じていない前者に呆れている。

 飛行を封じられているので、ちゃんと負荷はかかっているが。

 十二勇者の一角でもこれである。

「こ、この……」

 結は機体のアームドユニットを操作。

 如何にか地面に向け、その上につく剣をそこに突き刺す。

 それと同時にその細い腕を無理やりあげ、手をつく。

 脚も無理を言わして動かし、這いつくばった態勢になる。

 この時点で彼女の体は限界に近い状態である。

 背中の幻想的翼は未だ消えていないが、役に立っている様子もない。

 むしろ、重力の影響で引っ張られ、軋む機体に更に負担をかけている気がする。

 本当にこれは何なのか。

 だが、それでも状況の変化は必要だ。

「このぉぉぉぉぉぉぉ……」

 唸る。

 額から汗が流れる。

 体力も限界に近い。

「結……」

 それを見て、凜華は。

「わ、私も……」

 幻獣化しようとする。

 が、できない。

「体力不足……」

 それを行えるだけの力は現在進行形でかかるこれによって押しつぶされていた。

 けれど、基礎的な身体能力が自分よりも低いはずの結が抗っていられるのは何故なのか。

 そう思考が浮かぶが、そんなこと分かるはずもない。

「抗う……」

 結が呟く。

 その声に反応するかのように、背の幻想的翼が明滅する。


「第二権能;反攻」


 継承された二番目の力が彼女に力を与える。

「……!」

 それに気づく。

 その瞬間。

 束縛が破れる。

 他の者たちは変わらない。

 彼女だけだ。

 そうなったのは。


 抗い、攻める。

 

 その言葉が結の頭をよぎる。

 一呼吸置く。

 そして、深呼吸。

「スーーは――」

 やり終え、上を向く。

 アームドユニットを通常の位置に戻す。

 続いて、スラスターに点火。

 魔術により、エネルギーが噴出。

 その体を飛ばす。

「結、どうする…つもりなの?」

 凜華がとぎれとぎれの声で問う。

「何か、圧力から逃げれた。でも、凜華はそのまま。そしたら地面に埋まって窒息死する結末が待ってる。そんなことにはなって欲しくないし……」

辺りを見回す。

リジェネ、バハムート、イア、その他宝玉種多数。

 皆がこれに苦しめられている。

 ならば。

「あのデザイアにとどめを刺して、みんなを開放する」

「…そう。あれは大分傷負ってるし、倒せるかもしれない……行ってきて。昔からみんなのために行動することはよくあったけどその意識、二年間の時からだいぶ強くなった気がするね」

「そう?でもそうかも。積極的に動く回数増えたかも」

 返答を返す結。

 その後、上を向く。

 その視線の先には中破した[ルシファー]。

 ツインアイが輝く偽天使の姿を失った悪魔。

 この戦いももう終盤である。

 日が落ちる。

 あたりが暗闇に包まれていく。

 光は、結のせの幻想的翼や、機体のスラスターの放出エネルギーぐらいのものである。

「解放のため、倒す!」

 剣を構え、一声。

「かっこいいですね……」

 ミューティが呟く。

「そうだね」

「そうね」

「ぐふふ。面白いもん見れそうだな」

「倒せるならそれでもいいか」

 それを見上げ、それぞれ呟く五名。

 ちっとも喋れていなかったリジェネもそれに加わっている。

「二代目……」

 イアが他の誰にも聞こえぬ声で言う。

「……ボス戦終盤の雰囲気としては悪くない」

 これはバハムートの言葉であった。

結は飛翔する。

 [ルシファー]の撃破のため。


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