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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
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第三章[休みとトラブルの一週間]第三十話

落ちていく二人。

 凜華は傷が治っているが、結局二人とも気絶したままだ。

 パッケージが大破したこの状態では、こんな高さから落ちたらひとたまりもない。

 まともな防御力が残っていないからだ。

 このままでは、二人仲良くあの世行きだ。

「……」

 [ルシファー]の手から落ち、地に向かうそのさなか。

 傷だらけの結が、うっすらと目を開ける。

 その体には、いつの間にか光がチラついている。

 それは、これまで何度も出してきたあの光だ。

 凜華の体を治し、[ルシファー]の力に僅かながら影響を及ぼしたその力。

 遥か昔のある者から受け継がれた……

「……!」

 その光を体に纏う結が、今度ははっきりと目を開ける。

 地面はすぐ目の前。

「……アマテ…ラス」

 無意識化の呟き。

 同時に、

「ふっ!」

 結の体にチラつく光が新たな形を一瞬にしてとる。

 それは幻想的な形の翼だ。

 翼というが、何かの文様みたいなものだが。

 生み出された翼は彼女の背に浮かび、その体の落下を押しとどめる。

「……!」

 叫ぶ。

 翼のことは無自覚なまま、凜華の下に飛び込む結。

 地面到達ギリギリのところで彼女の体を抱く。

 勢いのまま地面すれすれを飛行。

 障害物である木々を速度を殺さず回避。

 ある程度進んだところで翼を羽ばたかせ、急制動をかけて森の上に飛び上がる。

 体に付着している血が飛び散り、木々の葉を赤く染める。

 凜華を腕に抱いたまま森の上。

 傷は癒えてないが、その姿は力強い。

 その瞳は、金に変化している。

 幻想の翼を広げ、少女を抱く結。

 翼が黄金の光を放つ。

「……あれ?」

 ふと気が付く。

 人類種でありながら空に浮かぶ自分に。

 いつの間にか存在する幻想の翼。

 手にある凜華。

 先時は血を流し、傷だらけであったその体が何事もなかったかのようにきれいになっている。血は相変わらずついているが、もうその下に傷は存在しない。

「これ……」

舞う光を見て呟く。

――あの時の光と同じ……

 金色に染まった両目が夕日を映す。

 いつの間にか日は落ちてきている。

 [インパクター]戦後の、休暇であったはずの三日目が終わりに近づいてきている。

「何だろう……?」

 あの時現れた力に、こんなものはあったか。

 そもそも自身のこの力は何なのか、彼女には理解できていない。

 不思議に思い、なんとなくそのまま滞空する結。

 凜華は傷が治っているが、目覚めはしない。

 その時、

 グウゥゥゥゥンンン!!!

「っつ!?」

 [ルシファー]が甲高い音を発す。

 その“声”が辺り一帯に響き渡る。

「デザイア…」

 佇む[ルシファー]の方をみる結。

 そこには他に、一体の幻竜種とその背の誰か一人がいた。

 幻竜種は紅い鱗、全てをかみ砕く顎。

 そして、頭に一つの紅く輝く角を持つ。

 鱗に覆われた四脚は力強く、放たれるオーラはその存在の大きさを表している。

 翡翠(エメラルド)の瞳はその中に戦意を抱き、らんらんと輝いている

 鋭い牙が揃う口からは、鱗と同じ紅い炎が漏れ出ている。

 一方、その背の一人は。

「……破ったの?」

 他の誰にも聞こえぬ声で呟く。

 種族は■■種。(本人または四星種以外に呼んではならない)

 纏う機体はARPX-14[リブート]。

 彼女に許された大いなる力を最大限強化する、彼女だけの機体。

 背に懐中時計を模したような大型ユニットが浮かび、両腕には腕を延長するアーマー。

 装甲はほぼ全身を覆う。

 顔のみが素の状態。

 正確にはこめかみ辺りに小型ユニットがついている。

 そのため、彼女のラインがくっきりと表れている。

 小さめの背丈、ほぼ皆無の胸。

 本人はこんな見た目だが、この世界に置いては強さに関係しない。

「グフフフフ……」

 幻竜種が炎を口から散らせつつ呟く。

 その目がらんらんと輝く。

「潰しがいありそうなのだな。グフフフ…」

 戦意をたぎらせ、つま先の爪をぐりぐりと動かす。

「ん?あれ……」

 戦いたくてうずうずしていた幻竜種が、滞空する結に気付く。

 ■■種は[ルシファー]の方にくぎ付けになっていて結には見向きもしない。

「あの光……」

 自分の方に視線が向けられたのに気づく結。

 凜華を腕に抱えたままそれに、

「こんにちは……あ、こんばんわ。か」

 ひとまず大声で挨拶する。

 よく分からない状況だが。

「おう!」

 元気よく返事をする幻竜種。

 開かれた口から出るその声は、とても大きかった。

 大気が震える。

 そして、

「ところでさぁ、一緒にあれ、ぶっ潰さねぇか?」

 一人背に乗せたまま、近づいてくる幻竜種。

「あのデザイア…そうだな。何かそれっぽい見た目してるし名前は……[ルシファー]でいっか!」

四脚を器用に動かしてポンと手を叩くような動作をする幻竜種。

「で。あの[ルシファー]をな!」

 それなりに離れていても聞こえる大音量だ。

「え?え~と」

 急に言われてうろたえる結。

「やろやろ、な?」

「ま、まぁ元からそのつもりだったし……いいけど」

「よし!じゃぁやろうかっと……うわっ!?」

「あ、うわっ!?」

 これまで放置されていた[ルシファー]が動き出す。

 長大な腕が振るわれ、結たちを叩き潰さんと襲い掛かる。

 それを察知し、結は背の幻想的な翼を無意識で輝かせ身を捻る。

 その際、凜華の体をしっかりと抱きかかえて落とさないようにする。

 急な機動を描く。

 空気抵抗が発生し、彼女等の体を打ち据える。

 だが結は、

「何も感じない…?」

 衝撃を一切感じなかった。

 彼女の体には光があった。

 幻竜種の方は、

「おお。いい動き」

 そう言い、翼を大きく羽ばたかせて迫る[ルシファー]の片腕を回避する。

 今までずっと[ルシファー]を注視していた■■種がその動きに驚く。

「うわっ!?バハムート!」

「うん?ああ、いたんだったな。わりぃな!」

「く、軽い……」

「まぁまぁイア、大丈夫だっての!」

「何が?」

「やり始めるってことだよ!」

「ちょっと!こっちは飛べないから!あんまり大きな動きは……!」

「安心しろ!取り合えず竜の息吹(ブレス)出すだけだから!」

 そう言う幻竜種バハムートは、その口内に爆炎を発生させる。

 それに呼応して彼女の巨体が震える。

「この……!」

 彼女の背にまたがる■■種イアは、装甲によって延長された腕、その先の腕部をバハム―との鱗の隙間に引っ掛けて体を固定する。

「くらえ!」

 一声。

 同時にバハムートの口から爆炎、竜の息吹(ブレス)が勢いよく放出される。

 その色は紅い。

「思いっ切り揺れてる……」

 イアは如何にかバハムートの背にとりついたまま呟く。

「ガアァァァァァァ!!!!」

 より一層大きな声が辺りにひび渡る。

「す、凄い……」

 旋回する結がその声と爆炎の勢いに驚く。

 同時に態勢を整える。

 ゴオォォォォォンン!!!

 バハムートの放った爆炎が腕を振るった後の[ルシファー]の巨体に迫る。

 !!!!!

 それに反応した[ルシファー]は、下半身の脚を前面に出す。

 無数の脚がその躯の正面に展開。

 円形の縦のようなものを生成する。

 それに対する迫るバハムートの爆炎は万物を焼き、溶かす灼熱だ。

 [ルシファー]が作った程度の物では、防ぐことはできないだろう。

 パッケージやロストアームズ以外のものでデザイアに通用する数少ない攻撃だ。

 イレギュラーなタイプでも、これは通るはずである。

『…問題ないな。展開の必要もないか。警戒する必要はないな』

 目を細めるような動作をする[ルシファー]。

 展開されていた脚が瞬時に元に戻る。

 [ルシファー]は迫りくる爆炎に対し、一切の事をしなくなる。

 そして、爆炎がその躯に激突する。

「凄い……!」

 再び結が呟く。

 紅い炎は[ルシファー]の全身をなめるように広がる。

 この攻撃は強力。

 地獄の炎にも等しい高温。

 普通のデザイアならこれで瞬時に消え去る。

「グウゥゥゥゥ……はぁ。疲れた」

 バハムートが息を吸い、吐き出す。

 これはとんでもなく強力だが、その分彼女の体力を大幅に削り取る。

 めったに撃てるようなものではないのだ。

「やったか?……おっと、これはやってないときの奴か」

「あれは……!」

「これって……!」

 爆炎が払われる。

 腕が振るわれて炎が消し飛び、その中の巨体が現れる。

 例によって一切の損傷はない。

 だが、その表面にはポリゴンが多数存在していた。

「……やはり、禁忌に触れていた!」

 イアが怒気をはらませて言う。

 現場で見て理解した。

 このデザイアはやはり、絶対に触れてはならない法に抵触したのだ。

「決定。全力を持って殲滅する」

「お?やる気だな。割と全力で撃った奴効かなかったけど、まぁいいや。じゃ、行くぞ!」

「そこ!」

「私!?」

 今まで気づきもしなかった結の方にイアが突如振り向き、叫ぶ。

「手伝う!こいつ殺るの!くる!」

「え、あ、はい!」

 その気迫に押されて思わずうなずく結。

 しかし、腕の中の凜華の事を思い出す。

 どうするべきか。

 いったん降りて、彼女を地に置いてくるべきか。

 その時、

「う……?」

 長らく目を覚まさなかった凜華が目を開ける。

「あれ?どゆこと?」

 結に抱かれ、空にいる状況に疑問を持つ彼女。

「早くして!」

 なかなか動かない結に焦れたイアが再度叫ぶ。

「まぁまぁ。あちらさん逃げる気はないようだし。一緒に叩き潰そうぜ!」

 バハムートがそう息巻く。


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