第三章[休みとトラブルの一週間]第十八話
「アメジスタ様、来ましたよ」
「え、速くない?」
地面に座るアメジスタが目を丸くする。
プリズムハートがドームに入って言ってから数分。
彼女等もドームを破壊して中に突入するため、なにかしら装備を持ってこようと[プラネシア]の基地に連絡したのだ。
ルビリントたちの中には、あのドームを破壊できる装備を持つ者も、生成できるものもいなかったため、他の所から持ってこようと考えたのである。
そして、連絡してから一分ほどで大型武装が運ばれてきた。
わざわざ転移門を使用して持ってきてくれたのか。
そうだろうがそうでなかろうが、非常に助かる。
中のデザイアが、事を起こさないうちに倒しておくべきなので、速いに越したことはないのだ。
「…持ってきた大型武装は…?」
アメジスタの隣に座るルビリントが尋ねる。
いまだパッケージを纏っている。
「はい、ルビリント様。こちらに」
彼女の“子”の一人が、武装を持ってきた邪翼種の少女の方に、ルビリントを案内する。
ルビリントたち一行の端の方に、彼女はいた。
「私はメリフィムよ」
立ち上がり、自己紹介する彼女。
その後顔に手を当て、彼女はにやりと笑う。
妙に露出の多い衣装で、その上にアーマード・パッケージを纏っている。
機体はARPX-11[イブリス]だ。
邪翼種専用のパッケージで、背面に左右二つづつ、計四つのユニットを浮遊させる。
下の二つは大型武装を扱うための腕になっており、上の二つは特殊装備、呪砲[禍]となっている。
これは[劣化]などの呪いを打ち込むことで、デザイアの弱体化を試みるという、唯一の魔術をそのまま使用した装備だ。
その他の装備は、大剣とエネルギーライフルであるが、今の彼女の機体には装備されていないようだ。
代わりに例の大型武装を背部のユニットに持たせている。
「じゃぁ、それを」
「分かったわ。はい。結構重かったのよ」
パッケージの腕部を使い、その武装をルビリントに手渡すメリフィム。
両腕の魔力結晶を巨大化させ、それを受け取るルビリント。
宝玉種は周囲の魔力を多く取り入れることで、体の魔力結晶を活性化させ、大きくすることができる。
これも宝玉種の魔力操作能力の高さゆえだ。
「…これがあのドームを貫くための…」
受け取った武装を見て呟くルビリント。
それは、7mもの長さがあり、その先端には先が鋭くとがった漆黒の杭が、顔をのぞかせている。
そして、その周りには、在りたたまれた支柱が円状になりように、取り付けられている。
パイルバンカーの類の装備だ。
「この装備は…」
メリフィムが、運んできた装備について説明する。
これは各所が改修されており、ARPX-10[ゴライアス]のエナフィリウムバスターキャノンの先端に取り付けることで、使用可能となっているらしい。
なぜ一機種限定なのか。
そうルビリントが聞くと、彼女は「詳しくは知らないけど、開発陣が付けてみたい武装を出しあった時、その時のノリで作った物らしいわよ」と、答える。
ヴァルキュリアスの開発陣は、主に代表と副代表が、ロマン主義者であるらしく、暇があれば今回のようなパイルバンカーや、ドリル、変形合体する武装など、実用性に少しかける装備群をちょこちょこ作成しているらしい。
もちろん、ちゃんとパッケージの開発は行っている。
「ええと…」
「そうそう、こうするの」
メリフィムの説明を受けながら、砲塔にパイルバンカーを接続するルビリント。
「…あ、いけた」
意外と簡単に接続に成功する。
それを確認した後、砲を上に向ける。
支柱が展開し、砲の側面にパイルバンカー本体を固定する。
「後は、魔力を込めて打ち出すだけよ」
「うん…。じゃぁみんな、今から撃つよ…!」
ゆっくりと空に上がり、“子”たちに呼びかけるルビリント。
その声を聴き、“子”らは発射後すぐにドーム内に突入できるようにと、同じように空に上がる。
「一人で大丈夫?」
ルビリントの隣に上がったアメジスタが横目で話しかける。
「うん。一人で撃てると思う…」
頷いてパイルバンカーを構えるルビリント。
機体下部のスラスターを操作し、姿勢を固定する。
「固定完了…それじゃ、発射!」
ドームの方にパイルバンカーを向け、魔力を注入する。
そして、即座に漆黒の杭が高速で打ち出される。
杭は一瞬にしてドームに到達する。
今度はドームを貫通できるのか。
前回エナフィリウムバスターキャノンを打ち込んだときは効果がなかったが、今回は。
「「いった!」」
ルビリントとアメジスタが同時に叫ぶ。
打ち出された杭は、容易にドームを貫通する。
物理攻撃の方が効果があったらしい。
プリズムハートがやった時と同じだ。
「よし!じゃ……」
「…あ」
杭がドームを貫いたのを見、突入しようとしたが。
ここもまたプリズムハートの時と同じように、即空いた穴が塞がってしまった。
考えてみればわかることだったのだが。
「「……」」
額から汗を流す一行。
「…どうしよう」
ルビリントが呟く。
杭がドームを貫き中に突入する。
中にいる新型デザイアに向かって杭は突き進む。
?
デザイアはそれに気づき顔を上げる。
杭に即座に反応し、腕を振り上げ、目の前に到達した瞬間、デザイアは腕を振り下ろす。
ガキンッ!
まるで虫を払うかのように、杭が払い落とされる。
デザイアはすぐに興味を失ったこのように別の方向を向く。
払い落とされた杭は、近くの穴へ落ちていく。
その際、一瞬崩れていない地面の一部分に接触したとき、
「い!?」
誰かの声が上がる。
しかし、その声は小さく、デザイアは気付きなどしなかった。




