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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
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第三章[休みとトラブルの一週間]第十三話

「できた」

 呟くリジェネ。

 その目の前には、中身が紫に染まった強烈な臭いを放つ鍋が。

 ぷくぷくと泡立っていて、その色も相まって毒物にしか見えない。

 皿によそったら、皿が解けてしまういそうな。

「さて」

 しゃがんで台所下の引き出しから、ボウルを取り出すリジェネ。

 結と凜華の二人は気絶したまま。

 しかしそんなことなど気にせず、ボウルに鍋の中身をよそる準備をするリジェネ。

 お玉を鍋の中に入れる。

 シュ~という音がし、その鍋の中身の危険さを、より一層際立たせる。

 お玉の中に紫の液体が入り、お玉が持ち上げられる。

 その中には、ゾンビのごとく皺くちゃになった魚の頭部が。

 一応スープか何かの料理なのだろうが、何故具がこんなことになるのだろうか。

 例の赤い調味料のせいか。

 だとしても、こんなことにはならない気がするが。

「美味しそうね」

 そう言って、ボウルにその危険しか感じさせない料理?を盛るリジェネ。

 再び、シュ~という音が。

「ふ~ん…いい匂い」

 結たちが卒倒した臭いを苦にせず、むしろ楽しむリジェネ。

 好みとかそういう次元ではない気がする。

 見た目は最悪。

 香りもまた。

 なのに、それを美味しそうや、いい匂いと言えるリジェネの感覚はどうなっているのだろうか。

 これが種族の違いという事か。

「スプーンはこっちね」

 スプ-ンをとってボウルを台所後ろにある小さな机に置き、魔力を収束させて幻想の椅子を作り出すリジェネ。

 魔力の物質化の基本技術だ。

 そしてその椅子に座り、手を合わせる。

「いただきます」

 そう言い、スプーンを手に取って食事を始めるリジェネ。

 紫の液体(取り合えずスープと呼ぶことにする)が彼女の口に運ばれる。

 それが彼女の口の中に。

「ん~~!!美味しい!」

 最高の笑顔を見せながらスープを食べるリジェネ。

 すごくおいしそうに食べている。

 味覚もかなり変わっているようだ。

 または本当においしいのか。

「…ん?えっと…」

 ふと目を覚ます結。

「あら、どうかしたの?」

 それに気づき、彼女の方を見るリジェネ。

 勿論、スープを食べながら。

「食べる?」

 結に問いかけるリジェネ。

 口にスープを運びながら。

「え…え!?」

 臭いに気付き、結の顔がこわばる。

「美味しいわよ。少しくらいなら…」

 その言葉とともに、ボウルからスープをすくい、結の方に差し出すリジェネ。

「いえいえ、いいです!」

 全力で顔を横に振る結。

―明らかに普通の食べ物じゃない!

 そう思ったのだ。

「そう」

 スプーンを引っ込めるリジェネ。

 残念そうな表情だ。

「う…」

 すぐに凜華も目を覚ますが、

「げっ!?」

 例のスープの臭いに気付き、部屋から高速で退く凜華。

 結の手を引いて。

「あ」

 結も部屋の外に放り出される。

 その勢いにまま転がり、向かい側の壁にぶつかる。

「いった……」

 体を倒して頭を抱える結。

 結構痛かったのだ。

「そんなに嫌なの?」

 首をかしげるリジェネ。

 そうしながらも、スープを食べ続ける。

「何であんなものを食べれるの…」

 引き気味で言う凜華。

「確かに…」

 同意する結。

 リジェネの食すスープからは、いつの間にか紫の湯気が立ち上っている。

「美味しい」

 心底食事を楽しんでいるリジェネ。

 それを見て、彼女の味覚と嗅覚の特殊さに恐れおののく結と凜華。

 そんな光景が広がっているとき、突如リジェネの家が大きく揺れる。

「何!?」

「地震?」

「いや、多分上のデザイアね」

 結と凜華がここに来てから数時間。

 空中空母型[ヴァリアント]が再び動き出す。

 

 「これが…」

 ドームの中に突入したプリズムハート。

 意外と明るいドームの中、そこで彼女が目にしたのは、形状を変化させた[ヴァリアント]と新型のデザイアだった。

「このドームを作ってるデザイアか~」

 そう言って槍を構えるプリズムハート。

 背中のユニットが音楽を紡ぎ、彼女はそれに合わせて歌い始める。

 魔力が収束し、槍の先端が輝く。

 それを投擲しようとする彼女。

 しかし、[ヴァリアント]らも黙っていなかった。

 !!!!!!

 形状変化した胴体から複数の閃光が放たれる。

「おっと。それ!」

 背部スラスターを巧みに操り、いくつもの閃光を回避するプリズムハート。

 歌いながらその攻撃を回避する様は、ダンスを踊るがごとく美しかった。

 !!!!!!

 それに怒りを覚えたのか、閃光の数が増加する。

 けれど、それらは彼女に一つとして当たらない。

 彼女はかなり余裕の表情だ。

 もう見切ったといわんばかりに。

「永久の愛を!」

 歌いながら、今度こそ槍を投擲するプリズムハート。

 先端が光り輝くその槍は、即座に[ヴァリアント]の胴体を貫く。

 ギギャアァァァァァァ!!!

 周囲を振動させるほどの音量で叫び声をあげるデザイア。

 コアを貫いたのか。

 いや、

「神意の光!」

 [ヴァリアント]が光の粒子にならないのを見、歌い続けながら次に攻撃に移るプリズムハート。

 その時、彼女の反対方向から一条の閃光が、変異した[ヴァリアント]の片翼を貫く。

 さらに複数のミサイルが、叩き込まれる。

 爆発が連続し、[ヴァリアント]が轟音を発す。

「?」

 歌いながら、攻撃の行われた方向を向くプリズムハート。

 目を凝らして見ると、その方向にはARPX-04[インフィニット]を纏った一人のヴァルキュリアスの隊員が。

「よしっと」

 彼女は、持っていたエネルギーライフルとミサイルポッドを投げ捨てる。

 そして、プリズムハートのもとに飛んでくる。

「あなた、ヴァルキュリアスの隊員だね?」

 歌いながら頷くプリズムハート。

「なら一緒にあのデザイアを…」

 そう言いながら、ロングレンジライフルを生成する。

 互いに武装を手に、[ヴァリアント]に遠距離攻撃を仕掛ける。

 プリズムハートは槍を。

 とある隊員は、ロングレンジライフルを。

「この光で!」

「発射っと!」

 プリズムハートは槍を歌いながら投擲。

 隊員の方は、ロングレンジライフルから一筋のビームを。

 それぞれ放つ。

 そして、直撃した。

 したはずだった。

「な!?」

「あれは…」

 これまで全く動かなかった新型デザイア(修復は完了しているようだ)が手をかざし、二つの攻撃を防いだのだ。

 形状変化した新型デザイアは、各部が大型化。

 強力なバリアを張る能力を新たに獲得していた。

 新型デザイアのバイザータイプの目が光る。

 ブウゥン

 それは左手を二人の方に向け、握りこむ。

 その直後、ドーム内の色が失われる。

「これは…」

 さらに重力が強まり、プリズムハートたちを地面に引きずり落としていく。

「こ、この…」

 機体の背部スラスターを全開にし、抵抗する二人。

 しかし、その抵抗むなしく二人は地面に引きずり降ろされていく。

 それに追い打ちをかけるように、

 !!!!!

 [ヴァリアント]から極太のビームが放たれる。

「「!」」

 重力の増大によって、二人はその攻撃を回避することができない。

「あ、ヤバイ」

 思わず歌うのをやめて呟くプリズムハート。

「まずいって!」

 焦る隊員。

 そして、

「うわぁぁぁぁぁ!!」

「くうぅぅぅぅぅぅ!!」

 回避できない二人に、[ヴァリアント]のビームが直撃する。

 パッケージが破壊され、飛行手段を失う二人。

 それによって重力にあらがう術を失った二人は地面に落下していく。

「…」

 その時、プリズムハートの姿が変わる。

 いたって普通の聖翼種の姿に。





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