第三章[休みとトラブルの一週間]第十二話
「あれか…」
アメジスタが呟く。
甲蟲種の隊員の報告を受け、大型デザイア[ヴァリアント]の所に飛んできたルビリント一行。
しかし、そこには…
「これって…」
同行する宝玉種の一人が、真剣な表情で言う。
そこは、デザイアがいるのであろう場所は、巨大で真っ黒なドームで覆われていた。
外からは中の様子が一切見えない。
その漆黒は、こちらに全てを拒絶しているように感じさせる。
「でも…あの中にデザイアがいるなら…」
このドームは防御のためのもので、中でデザイアは傷を癒しているということになる。
このまま完全再生されると厄介なことになる。
[ヴァリアント]。北方の海岸線基地に出現した新型のデザイアで、その基本能力は、胴の下部と、両翼の先端から子機を多数飛ばす。
その子機は同時期に出現した[ディーヴァ]とは違い、その一つ一つがコアを持った独立したデザイアだ。
名称は、[ヴァリアス]。
かなり小型の飛行型デザイアで、人ぐらいの大きさだ。
そのため、特に目立った能力も無く、現在確認されているデザイアの中で、下から二番目の強さだ。
けれど、最下位のノーマライズと同じで、様々武装を搭載でき、更に集団行動を得意とする。
その連携を以てこちら側を翻弄してくる。
さらに、本体の装甲は紙同然でも、小型ゆえにかなり高速で飛行するため、攻撃を当てるのが難しい。
[ディーヴァ]の下位互換に近いタイプだ。
場合によっては、[ディーヴァ]よりも厄介かもしれない。
そんな強力な子機を大量に格納、輸送するため、空中空母型に分類される。
ちなみに、海上空母型も存在する。
とにかく、その子機群を飛ばしてこれるようになられたら厄介なのだ。
だから、動けないうちに撃破しておくべきだ。
存在の報告からかなり時間がたっているため、もう再生は終わっているかもしれないが。
「…攻撃しよう、ルビリント。これだけいれば、仮に再生が終わっていて、反撃してきたとしても、対処できるはず」
そうルビリントに言うアメジスタ。
「うん。そうだね…」
それを了承するルビリント。
残りの者たちは、二人のどちらかの“子”。
宝玉種の始祖の二柱の判断に、めったなことでは意見しない。
つまり、攻撃を仕掛けることで決定だ。
「じゃ、じゃぁ…私から撃ってもいい?」
「いいよ。あなたがこの隊の隊長だし。先陣切ってもらわないと」
「分かった!じゃぁ、いっくよ~!」
そう言って、機体の右の砲を黒いドームに向けるルビリント。
「よし、チャージ完了…いっけぇぇぇぇぇ!!」
[エナフィリウムバスターキャノン]の先端から光があふれ、極太のビームが放たれる。
そして、ビームがドームに直撃し、爆発を起こす。
「よし、直撃!」
ルビリントが喜ぶ。
彼女は最大出力で撃ったのだ。
おそらく破壊できているはず。
そう思い、ドームの方を見るアメジスタ。
ところが、
「え…通って、ない!?」
爆発の煙がはれると、そこにはいまだ健在の黒いドームがあった。
―少し、距離があって威力が減衰していたとしても、それなりに損傷するはず。でも、ここから見える限りでは損傷は見えない。どんな耐久力を…!?
「あれ…通用してない?」
目立った外傷の見えないドームを見て、驚くルビリント。
[ディーヴァ]を一撃で撃破して見せた砲なのだが、それが通用しないとは。
「ルビリント様。私たちが!」
そう言って、各々の機体の射撃武装を構えるルビリントとアメジスタの“子”達。
「いけ!」
ある“子”の声とともに、多くの閃光がドームに向かって放たれる。
けれど、それらも…
「そんな…」
ドームを破壊するには至らない。
「どうしよう…」
攻めることができず、困る一行。
早くどうにかしておきたいが、これでは…
「あは☆困ってるね?」
「…?」
突如頭上から声が。
一行が空を見上げると、そこには一人の少女が。
「「誰?」」
見知らぬ少女に首をかしげるルビリントとアメジスタ、そして二人の“子”ら。
「私はプリズムハートだよ!困ってるようだから、助けてあげる!」
背中の翼を羽ばたかせ、名乗る少女。
その後、ピースもしてくる。
「何だろう、あの天使の子…」
「うん…」
ちなみに“天使”というのは聖翼種の別名だ。
「で、あのドームを壊して、中にいるであろうデザイアを、倒せばいいんだね?」
いつから話を聞いていたのか、こちらの目的を理解しているプリズムハート。
それにすごく軽い感じがする。
そして、そう言うや否や、
「行っくよ~!」
パッケージを纏い、黒いドームの方に飛んでいくプリズムハート。
ルビリント一行を置いて。
「そ~れ!」
ドームの目の前まで接近し、背中のユニットから槍を引き抜き、それを投擲するプリズムハート。
その槍はドームに突き刺さると思いきや、直前で止まり、その形状を変える。
パイルバンカーのようなものに。
そしてそれは、ドームの表面にとりつく。
パチン!
彼女が指を鳴らす。
と同時に、ドームに杭が撃ち込まれる。
ドゥン!
「よし!」
杭がドームを貫通する。
その衝撃によって、杭の貫いた周りに、人一人が通れるくらいの穴が出来上がる。
「じゃ、行ってくるね~!」
そう言ってパイルバンカーの発射台を槍に形状変化させてその手に持ち、その穴に入るプリズムハート。
「きゃは☆」
彼女が穴を通った後、すぐに穴は塞がってしまう。
ルビリントたちが通る暇などなかった。
「…え。行っちゃったけど…」
「ていうか、あんな簡単にドームを突き破って…」
どうすべきか迷う一行。
プリズムハートは簡単に中に入っていってしまったが、現状自分たちには無理なのだ。
基地から何か大型の武装を持ってくるべきか。
それでドームを破壊して…
「とにかく、連絡しよう?」
アメジスタに言うルビリント。




