第三章[休みとトラブルの一週間]第十話
…………
湖に落下した大型デザイア。
それとその背に乗っていた小型のデザイア。
それらがゆっくりと動き出す。
両方とも大きく損傷しているので、まともな動きはできない。
なら、何をするつもりなのか。
……!!
大型のデザイア、バハムートによって[ヴァリアント]となずけられたタイプ。
それの胴体が白い煙を噴き上げながら、二つに割れる。
ブウォォォォォンン!!
そこから途轍もない大きさの音が辺り一帯に響く。
「な!?うるさいって!」
それらのデザイアを撃ち落したヴァルキュリアスの隊員が、その爆音に思わず空中で止まり、耳を塞ぐ。
長時間聞いていたら耳が壊れそうな音量だ。
とてもじゃないが耐えられたものじゃない。
……!!
さらに小型のデザイアの方が、半分消失した上半身を起こし、大型の方の胴のもとに近づく。
―何するつもり?
耳を抑えながら、疑問に思う隊員。
デザイアを撃ち落すのに使った砲は、重くてかさばるため、地上に置いてきた。
すぐに攻撃はできない。
しかし、嫌な予感が…
そう思ってデザイアのもとに隊員が接近する中途、小型デザイアが大型の開いた胴にたどり着く。
そして、
オォォォォォォンン!!!
より一層大きな音が響き渡り、
「!?」
嫌な感じが周りの物を射貫き、
大型デザイアを中心に、突如として黒い空間が…、
「これ、は…」
あたり一帯を包み込む。
何のためか…
自身の再生のための時間稼ぎか。
それとも…
「…ん?ここは…」
暗い部屋の、少し湿ったベットの上で、目覚める結。
起き上がって周りを見ると、隣にはベットには凜華が。
「うん?」
状況が呑み込めず、混乱する結。
「どうしてこんなところにいるんだろ?」
ひとまず、気を失う前の事を思い出してみる。
「え~と…湖で遊んでて…あっ。あのデザイア!」
落下してきたデザイアの事を思い出し、声を上げる。
「う~ん?どうしたの結?」
その声で凜華も目覚める。
起き上がり、周りを見渡す凜華。
思い出したことを伝える結。
「確かにそんなことが…ん?じゃぁ、あのデザイアはどうなって…」
その時、
「あら、起きたみたいね」
部屋の奥から一人の水妖種の少女が現れる。
普通、水妖種の下半身は魚なのだが、彼女は普通に足がある。
一見の人類種のようにも見えるが、頭に水妖種の特徴の一つである小さなひれがついていることから、水妖種とみて間違いないだろう。
恐らく、魔術によって疑似的な足を形作っているのだ。
彼女は片手に槍を持ち、周りに水を浮かばせている。
「私はリジェネ。この家の住人よ」
そう言って、周りの水をクルリと動かすリジェネ。
「あなたが私たちをここに?」
「っていうか家?私たち、湖にいた筈なんだけど」
質問する二人。
「そうよ。で、ここはこの湖の下にある、私の家」
腕を組んで質問に答えるリジェネ。
「後、何で私たちをここに?」
「外で轟音がして出てみたら、あなた達が沈んでくるのを見つけたからだけど」
連続の質問に、少し面倒くさそうに答えるリジェネ。
「そうなんだ。じゃ、あのデザイアはどうなって…」
「質問が多いわ!」
「あ、うん…」
すぐに切れたリジェネに驚く二人。
かなり短気なのか。
「もう。ちゃんと説明するからそこに座って」
「あ、うん」
ベットから降りて床に座る二人。
それを確認してから、話始めるリジェネ。
「いい?さっきも言ったけど、上の湖で轟音がしたから、家の外に出てみたの。そしたら、浮かぶデザイアっぽい何かと、沈んでくるあなた達がいたの。危険を感じたから取り合えず回収してあげたの。すぐに逃げたから、デザイアはあのままよ」
すでに答えた質問の答えも含め、ちゃんと話すリジェネ。
「あなた達は、ここでかれこれ五、六時間ぐらい意識を失ってたわね」
「ご、五、六時間」
「ほんと、昼間によくそんな眠れるわね」
「あ、はぁ。どうも」
「褒めてない」
その時、自分たちの服装が、水着のままなのに気付く二人。
それによって急に恥ずかしくなってくる二人。
「こ、こんな格好のまま…」
顔を赤らめる凜華。
「う、うん」
結もそれに続く。
「あ、言っとくけどまともな服とかないから。あっても貸さないし」
「え~」
頬を膨らませる凜華。
恥ずかしいが、この格好のままでいるしかないようだ。
「で、あなた達は上のデザイア、倒しにでも行くの?」
「え?あ、今休暇中だけど、敵が出たんなら倒さなきゃいけないし。そうだね」
「いや、待って結。私たち、デバイス今持ってないよ。魔術と私の幻獣化だけじゃあれ倒すなんて無理だけど」
「え?…ほんとだ、無い。そういえば他の荷物と一緒に置いておいたんだった」
体中を見わして、言う結。
まぁ、水着なので確認しなくても持ってないのは一目でわかるが。
「ど、どうしよう。凜華…」
「私に言われても…」
どうしようもなくなって、会話が止まる二人。
「まぁ、[プラネシア]のヴァルキュリアスの連中に、連絡は入れておいたから、そのうちあのデザイアは撃破してくれるはずだけど。わざわざ出る必要はないんじゃない?」
「え、でも…」
「デバイス持ってないなら、行っても瞬殺されるのがオチでしょう。やめときなさい」
そう言って部屋を出ていこうとするリジェネ。
「あ、待って!」
「何?」
思わず、彼女を呼び止める結。
「えと、助けてもらったお礼に、何かできないかな…?」
「そんなのいいけど。そこで休んででもいれば?」
「お礼したいの。それに今、まともに戦えないなら、暇になるから」
「まぁ私も手伝いぐらいはしようかな。暇だし」
結の申し出に賛同する凜華。
「って、暇つぶしかい…」
軽く突っ込んでおくリジェネ。
「で、何か手伝えることない?」
「ないない?」
「む。そこまで言うなら、ご飯の準備を手伝ってちょうだい」
「それならお安い御用だよ」
「うんうん」
結の言葉にうなずく凜華。
それから立ち上がる二人。
まだ少し体が湿っていたので、結が[フレア]の術式を小規模で行使し、体を乾かす。
「終わった?手伝うっていうなら早く来て」
部屋の奥から手招きをするリジェネ。
「あ、うん」
「すぐ行くよ」
それを見て、彼女のもとに行く二人。




