第三章[休みとトラブルの一週間]第五話
「くっ、見えない。探査術式に反応もない。いったいどこに…」
『焦るなよ…』
一人の人類種の女性の駆るARPX-03[ガーディアン]と、一人の魔人種の男の駆るTCPA-04[ζ(ゼータ)]が、暗く深い森の中で敵を探し佇む。
戦闘訓練をこの森で行っていたのだが、突如、何処からか攻撃を受けた。
それは何回も続いている。
ここは内陸で、デザイアもいるわけはないのだが…
「はっ!?」
暗闇から何かの射出音が聞こえてくる。
そしてそれが、生い茂る森の天井の隙間からの光に一瞬照らされる。
「これは……!?」
それは円筒形の物体に縦に切れ目を入れ、目元から広げたような見た目をしていた。
中は真紅で、魔獣の口内を想像させるぐらい気持ち悪い。
後ろにコードか何かが見えるため、アンカーか何かか…
「うっ!?」
そう思っていると、[ガーディアン]を纏う人類種の女性に、それは瞬時にとりつく。
彼女の体をしっかりと捕まえ、逃げれないようにしてくる。
「くぅ……」
がっちりとつかみ、放さない。
徐々に力が加えられていき、機体がミシミシと音をたてる。
「このままじゃ、機体が持たない……」
女性が苦し気な表情を浮かべながら言う。
『もう少し耐えてくれ!今、本体をたたく!』
[ζ(ゼータ)]が動き、アンカーの伸びる方向に、背部に懸架していたレールガンを両手で持つ。
『くらえ!』
搭乗する魔人種の男が叫ぶ。
それと同時にレールガンから、実体化した魔力弾が瞬時に打ち出される。
『よし』
撃った方向で爆発が起きる。
直撃したか。
これならアンカーの根本は断てたはず。これでもう…
そう思って、女性の方を向くと、
『何!?』
まだアンカーは、女性とそのパッケージを締め付け続けていた。
そして、アンカーの中心に赤い光が灯る。
「はっ!?」
そこに瞬時にエネルギーが収束し、ゼロ距離から女性にビームが放たれる。
「なっ!?かはっ!?」
女性は吹き飛ばされ、血を吐きながら地面を転がる。
『大丈夫か!?』
[ζ]が女性の方を振り向く。
「う…く…」
彼女は、パッケージの防御力のおかげで即死こそ免れたものの、重症のよだ。
体中が傷だらけになっており、血が服を滲ましている。
これでは、放っておけば死んでしまう。
『この…!』
敵はどこに!?
ピィィィィンン!!
闇の中に赤い光が出現する。
そして、暗闇から一体のロボットの様なものが出てくる。
『やはり、デザイア…!』
既存のメカとは違う風変わりな見た目、間違いない。
頭部はそこまで大きくなく、目に該当するであろう部分はバイザータイプ。
前に出っ張った胴に、短い脚。
そして、いつの間に戻したのかさっきのアンカーユニットを右手に。
左の手は腕のサイズに対してかなり大きい。
五本ある指は、その先が鋭く尖っている。
いわば、クロー。
何となく獣の脚先を連想させる。
『しかし、なぜこんなところに…いや、其れよりも早く倒して彼女を…』
キュイィィィィンン!!
そのデザイアの頭部バイザーが赤く光る。
『来るか…!?』
デザイアが、バックパックのようなものを展開、瞬時に距離を詰めにかかる。
『くそっ、速い!』
レールガンを女性がいない方に投げ捨て、同じく背部に懸架された大型ソードをに機体の手をかける。
その間にデザイアは機体の懐に入り、左手のクローを機体の装甲に突き立てる。
しかし、
『残念だったな!』
分厚い装甲を破り切れず、一瞬動きが止まったデザイアに[ζ]の大剣が襲い掛かる。
この装備は、片方のみが刃になっており、もう片方が魔導推進器が取り付けられており、その推進力と装備の重量で相手を薙ぎ払う大型武装だ。
もちろん、推進器を利用して、横薙ぎなどの攻撃も可能。
『今度こそ!』
けれど、デザイアは[ζ]の脚部を蹴って体を上にあげ、攻撃を回避する。
『なっ!?がっ!?』
懐にとりついていたデザイアを破壊しようとした一撃は、デザイアが回避を行ったことで、[ζ]の懐を直撃する。
『く…そ…』
推進器で加速され威力を増した一撃は、機体の装甲を破り、コクピットを直撃した。
攻撃を逆手に取られ、自滅させられるとは…
キュイィィィィンン!!
デザイアの目が光り、機体を押し倒す。
『く…は…!』
負傷したことで操縦ができず、抵抗もできない。
デザイアの左手が振り上げられ、右手は倒れる人類種の女性の方に向けられる。
終わった…
これは避けられない。ここで自分たちの生も終わりか。
そう思い、諦めて目をつぶる魔人種の男。
デザイアが同時に二人を仕留めにかかる。
その時、
「どうも~。ご都合主義な感じではありますが、プリズムハートが助けに来ましたよっと!」
突如、空から声がする。
それに反応し、攻撃を中断するデザイア。
?
暗い森の天井を突き破り、あるものが現れる。
滞空するのは一人の聖翼種の少女。身に纏うのは、ARPX-20[夢装者]。
音を武器として扱う機体だ。
「くらえ!聖装奏[カデンツァ・レイ]!」
そう言うが早いか、彼女は歌いだした。
透き通るような美しい声で。
背部ユニットが音楽を奏で、歌声とともに、一つの芸術を作り上げる。
『これは…』
魔人種の男が呟く。
心が温まる優しい音色。
体を癒す歌声。
それらによって、体が治癒されていく。
それもすごい速度で。
「は…」
人類種の女性もその力で体が治癒され、起き上がれるようになる。
そして、デザイアの方を見ると、
!?!?!?!?
この音色によってかもだえ苦しみ、各部をきしませている。
「!」
それを見たプリズムハートは、歌い続けながらもデザイアの方に接近する。
!
その行動に気付き、デザイアがぎこちなく動くと、その姿が即座に消える。
「消え…た?」
女性が呟く。
それを歌いながらも効いて、ゆっくりと首を振るプリズムハート。
そして、彼女は少し視線を動かし、その後歌声、音楽の音量を上げる。
『いったい何を…』
魔人種の男が疑問を口にする。
治癒は現在進行形で続いている。
「!」
プリズムハートが目を見開く。
それと同時に曲はラストスパートに入る。
彼女は歌いながら姿勢を下げ、背中のユニットから一振りの槍を取り出す。
そして、それを投擲する。
「どこを狙って…」
人類種の女性が疑問の声を上げるが、投げられた槍は何もないはずの虚空を貫く。
「!?」
その直後、景色がぶれ、先のデザイアの姿が現れる。
『これは…』
デザイアの体の中心には風穴が。
そしてデザイアが前に倒れ、光の粒子に代わっていく。
「どういう事…?」
そんな呟きが漏れるうちに、プリズムハートの歌が終わる。
「よし、撃破!やった~。意外とやれるもんだね!」
テンション高めに言うプリズムハート。
背中の翼をめいっぱい広げ、力強く羽ばたき、宙返りする彼女。
「……」
呆然とする二人。
「おっと、それじゃあね!聞いてくれてありがとう!私の初ライブ!」
そう言って、一回転し、飛んでいくプリズムハート。
『あ、おい…』
二人を助け、一瞬で行ってしまった彼女。
「どうする?」
女性が呟く。
『と、取り合えず帰るか…』
あの子に礼を言いたかったが、もう姿も見えない。
諦めるしかない。
また会う機会があったら言おう。
「じゃぁ、あの湖でいい?ちょっと遠いけど」
凜華に聞く結。
『いいよ。二人もつれていくからね。よろしく』
「分かったよ。集合時間は…」
少し考えていると、
『十時に例の噴水前でどう?』
凜華から提案が。
「あ、そうしよう!その方がこっちも都合がいいし」
『じゃ、決まり!』
双方の同意で、予定が決まる。
折角の休暇のなのだから、楽しまなくては。




