第三章[休みとトラブルの一週間]第二話
「美味しかった~」
「確かに」
汁の一滴すら残さず食べきった二人。
だいぶ腹も膨れ、失われた体力も回復した。
頭上の二人は話が纏まったらしい。
その結果は、
「分かりましたよ。その武装に憑依すればいいんでしょう?」
「そうだよ、それならエリは眠らずに済むし、ミューティは体を得られる。まさにウィンウィンだよ」
エリュシュオンがピースする。
「本当は、こんな小さな武装に憑くのは、本当は納得できないんですけど」
「分かったって言ったんだから、文句言わないの」
「は、はい」
ミューティである光が、エリュシュオンの背中の武装ユニットに入り込む。
「話終わった?」
凜華が上を見て訪ねる。
「うん。お互い納得できる結果になったよ」
「いえ、私はふごっ!?」
武装ユニットを叩いて、ミューティを黙らせるエリュシュオン。
「行こっか。凜華」
「そうだね。ごちそうさまでした」
店主にお礼を言う凜華。ワンテンポ遅れて結も。
「礼儀正しいなおめぇらは。うちに来る奴は大半横暴な連中ばっかなんだが…お前らにはまた来てほしいとこだな」
店主が上半身の四つの腕(脚?)を組み満足そうに言う。
「それじゃ」
そう言って店を出る結と凜華、それに合体?状態のミューティとエリュシュオン。
「これからどうするの?」
「う~ん…私はいったん家に帰ろっかな。遊ぶとしても明日」
「そうだね。まだ疲れは抜けきってないし」
家に帰ることで同意する二人。
実は、彼女らは今日の早朝に返ってきたばかりなのだ。
つまり、さっきのは朝ご飯。
「じゃ、また明日連絡するから。ばいばい」
「まぁ、こんな時間帯に言うセリフでもないけどね」
くすくすと笑う結。
「確かに」
凜華も苦笑する。
そんなやり取りをした後別れる二人。
エリュシュオン及びミューティは凜華の方について行った。
「お~い、パールちゃん!」
通りを歩いていたフレースが声を上げる。
「ふぇ、フレース…さん…?」
それに気づいて驚くパール。
「どうしてここに?まだ帰ってからそんなに時間、経ってないのに」
フレースが近づいてきたところで聞くパール。
「ちょっと買い物に、な。そういうパールちゃんは?」
「私もです…」
「そうなのか。何買うんだ?」
それから少し、道端で話す二人。
「じゃぁ、俺と目当ての物は一緒か」
「はい。でも、売ってる場所がわからなくて。[プラネシア]の都市部に来たことはほとんどなくて」
困った表情をするパール。
それを見て、フレースの頭にとある考えが浮かぶ。
…ここで案内してやるとか言ったら、好感度上がるかもしれん。前回は日花里に邪魔されたけど、今度こそいいとこ見せなきゃな!
「パールちゃん」
「ん、何ですか?」
パールが顔を上げる。
「俺が案内してやるよ」
髪をかき上げ、ポーズをとってかっこ良さを意識して言うフレース。
「いいんですか?」
パールの表情が、ぱぁっと明るくなる。
「ああ。欲しいものは同じなんだからな」
「じゃあ、お願いします…」
パールが顔を赤らめながら答える。
よし、成功!よくやった俺!
そう思うフレース。
「なら、行こうか」
パールの手を握り、その手を引く。
「あ、はい!」
パールが元気に返事をする。
そのまま二人は町を歩き、買い物に向かう。
「ところで、何でパールちゃんはそんなに顔を赤くしてるんだ?」
「あ、それは…男の方と手をつないだことなんてなくて。ほら私、宝玉種ですし」
「ああ、なるほど」
宝玉種は始祖と呼ばれる上位個体のみから生まれる。要はその他の者は繁殖能力など持っていない。だから必要がないため、異性と関わる機会がないのだ。まぁ、フレースとは種族が違うので、何かあったところで、何もできないが。
「じゃ、俺が君の初めて…」
強い風が吹く。
木々が揺れ音をたてる。
「あれ、何か言いました?」
「あ、いや何でもない」
急に恥ずかしくなり、顔を赤らめるフレース。
「ただいま~」
家のドアを開ける結。
昔は、[プラネシア]に家はなかったのだがデザイアの襲来、その他もろもろの事情が重なり、ここに引っ越すことになったのだ。
そんなこんなで新しく建てられた家に踏み入る。
「あ、お帰りなさい」
母が奥から出てきて迎えてくれる。
服装は自身と同じ和服。
今まで言っていなかったが、結はこれまで和服姿で過ごしてきた。(ただし、動きやすいよう裾が短くなっているが)
「怪我とかなかった?」
母が心配そうに聞いてくる。
「うん。何かいろいろあったけど、大丈夫だったよ。あと今日から一週間休暇だって」
靴を脱いで廊下に上がり、母に自身の無事を伝える結。
「そうなのね。じゃぁこれから家で過ごすの?」
「たまに出るだろうけど、大体はね」
母の問いに答えながら、廊下を進む。
随分母と会うのが、久しぶりな気がする。
いきなり大陸の端まで行ってきて、そこでデザイアと初戦闘し、一日かけて戻ってきた。
それがかなり長く感じたからかもしれない。ハードすぎたため。
「そういえば師匠は?」
自身の剣の師匠の事を思い出し、母に質問する。
「例の会議よ。結構長引いてるみたいなの。もうそろそろ二日になるのに」
すぐに答えてくれる。
「そんなにやってたの…」
基地の最上層に存在する特別な空間。
その狭い空間で二日に渡って会議をしているとは……自分には到底無理なことだ。
「まぁ、疲れたでしょう。休んできて」
「ありがとう、お母さん」
身を案じてくれた母にお礼を言ってから廊下の先にある階段を上り、自分の部屋に向かう。
「まだ、真昼間だけど。寝るかなぁ」
普段なら絶対やらないことだが、今は猛烈に疲れている。
これまで我慢してきた眠気が一気に襲ってくる。
「ふわぁぁ」
あくびをしつつ、今の服を脱ぎ、寝間着の浴衣に着替える。
部屋に置いてある魔導洗浄機(要は洗濯機)に服を放り込む。
これで後は勝手にこれが服を選択し、乾かしておいてくれる。
これで、服にしわなどがつかないのだからすごい。
「さてと」
布団を壁の魔法陣から取り出す。
この術式は人工的に作り出した異空間に、物を保管するための物だ。
本来存在しない空間を作り出しているので、世界法則が干渉してあまり大きなものは入れられないが、布団を入れるぐらいなら問題ない。
布団を広げ、畳の床に敷く。
その形を整え、外からの光を魔術で遮断する。
これで眠る準備が整った。
「じゃあ、おやすみ~」
そう言って布団に寝転がり、目をつむる。
…何かいろいろあったな~
そう思っているうちに彼女は眠りに落ちる。
「ふふ。かわいいわね。流石、私の子ね」
部屋の扉を少し開け、その隙間から結を見る彼女の母。
彼女の見ている結の寝顔はとてもかわいく、気持ちよさそうだった。




