表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第三章[休みとトラブルの一週間]
25/91

第三章[休みとトラブルの一週間]第一話

「この箱の中身、いったい何が入って……」

一人の聖翼種の少女が呟く。

自身の姉に頼まれ、家に荷物を運んでいる途中だ。

中身はかなり重要なものらしい。

箱の大きさに対し、中身は随分と軽い。

箱には厳重な封印、っぽい雰囲気の装飾がされている。

何処かふざけているような感じがして、真剣味にかける。

真剣そうに渡されたはしたが。

兎に角、大好きな姉の頼みなのでちゃんと持っていかなければ。

そう思い、翼をはばたかせ、家に向かう。

「よっと」

 すたっ!という音とともに、家の玄関前に降り立つ。

 塔型の家の。

 後は家に入り、上層の姉の部屋にこれを置けばいい。

「ただいま~」

 玄関の古風な扉を開け、家に入る。

 といっても家族は姉だけなので、彼女がいない今、誰もいないが。

「さてと」

 靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。

 狭いリビングを通り過ぎ、奥の螺旋階段を上る。

「今頃何してるのかな」

 そんなことを呟きながら、螺旋階段を登り切り、姉の部屋のドアを開ける。

「これを置けば完了っと…うわっ!?」

 部屋に入ろうとしたところ、何かにつまずく。

 狭い場所なので、翼を動かして体勢を立て直すこともできない。そのまま、

「うわぁぁ!!」

 床に転がる。

 その拍子に箱が手を離れ、床に落ちる。

「あ!」

 落ちた衝撃で、箱の蓋が取れ、中身が箱の外に出る。

「これは……」

 出てきた物を見て呟く。

 光り輝く青いデバイス。

 一見、アーマード・パッケージの展開デバイスのようにも見えるが、あれは光り輝いてなどいない。

それに、これはぱっと見、かなり古そうなだ。

こんな骨董品、何に使うのだろうか。

「あ、傷とか付いてないかな…」

 落としたのだから、傷がついたかもしれない。

 だいぶ古いし、壊してしまっていたら姉にどう説明しよう。

だからあってほしくはないが……

 そう思い、そのデバイスに触れて確かめようとする。

 そして、そのデバイスに触れたとき、

「え…」

 光があふれ出る。

 それは彼女を包み込み、その姿を変化させる。

「これは…何か」

 光が収まった時、

「ふふ」

 そこにいた聖翼種の少女はいわゆる変身というものを遂げていた。

「何か、誰か助けに行きたいな…」

 彼女はそう言って自分の部屋に向かい、自身のパッケージのデバイスをとる。

「あはっ☆」

 鏡の前に行き、テンション高めに笑顔を作る彼女。

「じゃ、行こうっと~」

 すぐに鏡から離れ、窓を開ける。

 そして、背中の翼を広げて外に飛び立つ。

「プリズムハート、いっくよ~!」


「疲れた……」

「ほんとに」

 中央都市[プラネシア]のとあるラーメン屋のカウンター席に突っ伏する、結と凜華の二人。

「初任務にしてはハードすぎ」

「それね」

 愚痴る二人。

 新型のデザイアを、機巧種たちや海岸線の基地の人々の協力で倒した[神姫の双翼]。

 しかし、それはもともと予定外の事で、本来は遺跡の物資の運送が任務。

 デザイアが襲来したことで、戦闘に参加せざる負えなくなり、相当体力を消耗してしまった。

 そこから休む間もなく、物資の運送。

 何を隠そう、遺跡は大陸の端。

 つまり、遺跡から[プラネシア]まで自力で帰ってくるということになった。

 行きは基地で転移門(ゲート)が使えたため、そこまで苦労すことはなかったが、あれは一方通行。

 つまり帰りはどうしようもない。

 あれは[プラネシア]にしかないし、転移術式が使える高位の魔術師も彼女らの隊にはいないのだ。

 おまけに物資を抱えた状態で移動。

 パッケージを使用してはいたが、それでも一日かかった。

 

 その負担は尋常なものではない。

 まぁ、一番負担が大きかったのは、竜化してとはいえ、巨大かつ重い物資を大量に持たされたヴィーヴィルだったが。

 ちなみに機巧種たちについては、基地の者たちが如何にかしてくれた。

 具体的な話は聞いていないが。

 あの情緒不安定リーダーの率いる軍団、いったいどのように始末をつけたのだろうか。

 けど、そんなこと今はどうでもよくて。

「これからどうする~…」

「今日は休もうよ~…」

 ただただ、疲れたのだ。

 一応、相当な重労働だったので、休暇が一週間もらえた。

 多いようにも思えるが、デザイアとの初戦闘、物資の長距離運送。

 この二つを連続してやったのだ。それぐらい許されてもいいだろう。

 デザイアが再び動き出したようだが、侵攻速度は速くなく、攻めてくる数も今は少ない。

 現地の者らで対処できるレベルではあるとのことなので、今はこうしている。

 他の四人も好きにしているだろう。

「エリュシュオン。そろそろ憑依させてくれません?」

「いやだよ、またエリの意識眠っちゃうじゃん。そんなに出て来る機会ないんだし、そう簡単には憑依させないよ」

「う~ん。それだと私、体がないままなんですが…」

「適当なものにくっついとけばいいじゃん」

 結と凜華の頭上で揉めている光球と聖閃姫。

 光球の方がいつもミューティと呼ばれている精霊種。

 もう片方は、彼女が普段憑依しているフィギュア。

「もうちょっと静かにしてよ…」

「ここ店の中だし…」

 文句を言う結と凜華。

「あんたら、注文は決まったのかい」

 渋い声で甲蟲種の店主が聞いてくる。

「じゃあ、このフレアピッグの豚骨ラーメン」

「私は、このマンドラゴララーメン」

「はいよ」

 注文を済ませる二人。

 上の二名に関しては食べない、と言うか食事は必要ない。

 精霊種は魔力さえ、あれば問題ないし、聖閃姫は生き物ですらない。

「ここらで説明しとく…?」

「そうだね…」

 上の二名、彼女らに関して。

ミューティは普段、聖閃姫というフィギュアの憑依している。

しかしこの聖閃姫、実は自我がある。 

 もともと彼女らは十年ほど前から生産されていた、ホムンクルスの錬成技術を利用した細かい作業補助のための存在、舞姫。

 時期に娯楽にも使われるようになり、互いを戦わせ、それを見て楽しむという用途が生まれてから、いつしか聖閃姫とも呼ばれるようになった。

 ちなみに魔術を少し扱えるようになっている。

 凜華の家には、その呼び方が広まってから彼女の兄によって購入され、やってきた。

 その後いろいろあって機能停止に陥り、大事に保管されていたところ、凜華が、体を得られず彷徨っていたミューティを見つけてきて、その素体に憑依させたのが始まり。

 長きにわたり、聖閃姫本体、エリュシュオンの意思が覚醒することはなかったが、デザイア襲来から一年後のある日、ミューティがその体から離れたときに突如目覚めた。

 現在は、普段はミューティが憑依時はエリュシュオンは眠り、ミューティがパッケージに憑依している時エリュシュオンが覚醒する、という方式だ。

 しかし、いかんせんミューティが憑依する時間帯が長く、エリュシュオンはあまり出れていない。そのため、彼女は不満を抱えており、それが今の憑依の拒否につながっている。

 ちなみにミューティが凜華の事をマスターと呼ぶのは、以前からエリュシュオンがそう呼んでいるからで、憑依している関係上少し性格が混ざっている。

「へい、お待ち」

 店主が出来上がった二つのラーメンを置いてくれる。

「さて、食べよっか、凜華」

「そうだね、説明疲れたし。これ食べて体力回復しないと」

 消耗してる二人は、こういうものが食べたかったのだ。

 ひとまず、相変わらずもめている二名は置いておき、麺を口に運ぶ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ