第二章[人機再起動]第十二話
「このぉ!」
ライフルを撃つ。
デザイアの表面に傷がつく。
しかし、即座に修復されてしまい、結局のところダメージを与え得られてはいない。
「なかなか」
パールが呟く。
かなりの時間、攻撃を続けているが、なかなか有効打を与えられない。
このままだと押し負け、基地に直接攻撃が入れられてしまう。
「あれを使ってもらうしかないか……」
戦闘中のとある隊員の声が、コクピットに流れる。
たまたま拾ったらしい。
「あれって何だろう……」
聞こえた言葉を疑問に思いつつも、戦闘行動を続行する。
「隊長、このままじゃ不味いです。指令にあれの使用を」
「確かにな……分かった」
ある隊員と、彼が所属する隊の隊長が会話をする。
隊長の方はすぐに基地司令に通信を行う。
「指令」
「何」
即座に返答が来る。
少し焦りを感じる声音だ。
「あれをお願いします。このままでは」
「ジリ貧、か。安心して。準備はすでに整っているから」
その発言の後、指令がオペレーターに指示を飛ばす声が聞こえる。
どうやらこうなるのは見越していたらしい。
そして数秒後、
「戦闘中の隊員に後退命令を。周りから集めたのにも」
「了解」
隊長は、即座に機体の通信機能フル稼働させ、
「戦闘中の全隊員に告ぐ。基地左右に後退しろ。あれが使用される、正面は開けろ」
その通信を聞き、隊員たちが基地の方に機体を下げる。
「あれ?」
ミューティが不思議そうにつぶやく。
あれとはいったい……
「ひとまず、言う通りにしましょう」
分からないが、何かすごいものが使われるのだろう。
そう思って他と同じように後退する。
「パールさんも」
「あ、はい!」
付近に滞空していたパールの機体の腕を引く。
そして、基地付近まで後退したとき、基地が震えだした。
「何!?」
パールが驚く。
「これは…」
揺れとともに、基地の中心のブロックが二つに割れる。
ゴオォォォォンン!!
デザイアが基地に攻撃を行う。
今まで基地にしてこなかったのは、パッケージとの戦闘で忙しかったからだろう。
それがなくなった今、遠慮なく攻撃が加えられる。
しかし、その攻撃は、
「あ!」
弾かれた。
「基地の防衛力はパッケージだけじゃないのよ」
最初は展開が間に合わなかったが、これまでの先頭の間に展開の準備を整わせていたのだ。
「この広範囲防御系大型術式、[封絶結界]が」
キュオォォォォンン!!
デザイアが怒ったかのように音を響かせる。
「魔力のチャージはどれくらいできているの?」
「100%です」
「よし」
そして、二つに割れたブロックの間から、巨大な砲塔がせりあがってくる。
「正式採用型・大型反属性反応魔力砲[グレイプニールⅡ]か」
その砲台は、とにかく大きく、長く、ごつかった。
「ヴィネ、用意はいい?」
「はいぴょ!」
司令が砲手の宝玉種に確認する。
エネルギーたる魔力は、無属性の状態で、かなりの量が砲に貯められている。
後は砲手がその魔力を半分ずつ、相反する属性に変えればよい。
この世界の魔力は基本的にこれといった特徴を持たない無属性の状態で存在するが、知性のある生物が精神の力を以て影響を及ぼすことで、それまでに持っていなかった性質、火、水、風、雷、地、光、闇、聖、邪の九種類のうちどれかの属性を獲得する。
魔力の属性を持つとは、無属性の魔力を、別の属性に変える力を持つことを指す。
多くの種族は後天的にそれを得るが、宝玉種だけは先天的に持っている。
彼女らは、先天的に持つ代わりに、新たに属性を獲得、または変更することはできない。
けれども、基本一つしか彼女らは魔力を持たないが、まれに複数個持って生まれるものもいる。
宝玉種特有は魔力との親和性が高く、はるかに高度な魔術、魔力操作が行える。
今行われようとしているのは後者だ。
「ええとっぴょ」
砲の真下の空間に立つヴィネ。
そこで、砲にため込まれた魔力の属性の獲得を行わせる。
半分の魔力には聖、もう半分には邪の属性を込める。
この量は絶対に均一でなければならない。
出ないと、砲撃で威力が出ない。
反属性反応魔力砲は、ロストアームズから得られたデータから開発されたものだ。
相反する属性を持つ魔力(例えば今のような聖と邪)は、基本的に一緒にすると対消滅してしまうが、互いの勢力があまりに強いと、双方が打ち消しきれず、それでも性質として打ち消そうとするため、膨大なエネルギーが生まれる。そのエネルギーを発射するというふうに、武装に転用したのが、この反属性反応魔力砲だ。とてつもない威力を持っており、当てればデザイアを一瞬にして灰燼にできる。
ネックなのは、いちいち魔力の属性を制御する者が必要なことだ。
これまでのデザイアの大きさだと、ここに置かれているほどの物は必要ないが、今回のような事例を見越して建造されたのだ。
「よし、できたっぴょ!」
成功。均一に属性を変化させれたようだ。
「よし、では射角固定に移ります」
砲塔がデザイアの砲を向く。
これまでの作業の間もデザイアは攻撃を続けていたが、結界ですべて防御されていた。
砲が向きを変えていく。
少しずつ動き、標準を合わせていく。
そして数秒後、射角が固定される。
「固定完了!いけます!」
「よし。結界解除、[グレイプニールⅡ]発射!」
基地に展開された結界が解除される。
それと同時に、砲撃がデザイアに向け、放たれる。
!?!?!?
デザイアがその攻撃を受け、動きを止める。
放たれたエネルギーは、デザイアの中心を打ち抜いていた。
キエェェェェェ!!
断末魔の叫びをあげ、デザイアの体が光の粒子に代わっていく。
コアを直撃、破壊したようだ。
「これでどうにかなりましたね」
司令が額の汗をぬぐって呟く。
「あれは……」
「すごいですね」
一部始終を見ていたパールとミューティが驚きをあらわにする。
とんでもない威力だ。あの大きさのデザイアを一撃で破壊するとは。
「こんなものが設置されてたんですね」
「そ、そうですね…」




