第二章[人機再起動]第十一話
「くうっ!」
二つ目の障壁が破られる。
続いて最後の障壁が破られ、
「……くっ!」
結がそう思った時、
「はっ……」
体から突如、光があふれる。
その光は一瞬のうちに大盾を形成し、その攻撃を防いだ。
「これって……」
二年前、あの時出たものと同じ……
大盾が光となって消え去る。
なぜ急に出たのか。結には分からなかった。
「どうして、あれを防いだの。私たちをかばうように」
機巧種の少女が呟く。
何故なのか。敵に与するものが、それを殲滅しようとする自分たちを。分からない。分からない。分からない。彼女等にはただ、それが分からなかった。
今かばったところで、何もメリットなどないだろうに。
「えと、それは…なんとなく?」
「なんとなく?」
曖昧な回答に少女は聞き返す。
「守りたいって思ったの。とっさに。自分でも詳しいことはよくわかんないけど」
「どうして。敵なのに……敵なのに、あの獣たちに与してるのに…」
心底分からないといった表情。
「敵も何もないよ!そもそも大戦は500年前に終わったし」
「え?」
ポカーン。そんな音が聞こえてきそうな表情をする機巧種たち。
「え?」
何か変なことを言っただろうか。
そう思っていると、
「あの、今のもう一度……」
もう一度行ってくれと頼み込んでくる。
「え?前半?後半?」
どっちの話なのか聞いておく。
「後半」
「そもそも大戦は500年前に終わった…」
「そんな、終わった!?」
再度その言葉を聞き、信じられないといった顔で機巧種の少女は呟く。
ちょっとわざとらしい感じがする。
「う、うん。終わったけど…」
「それじゃあ、私たちが多種族を殺すことに、意味はないってことに……」
がっくりと膝をつく少女。
「これからどうしよう……」
ブツブツと言い始める機巧種たち。
先程は信じられないとか言っていたのに、今度はあっさり信用した。いったい何なのだろうか。
「えと……」
結が頬を掻く。
「この!」
一方上空では戦いが続いていた。
結たちがそんなやり取りをしている間も。
だがやはり、攻め切れていない。
デザイアの再生力に阻まれているのだ。
「じゃぁ、協力する…」
機巧種の少女が申し出てくる。
「いいの?」
「ほんとに大戦が終わってるなら殲滅に意味はない。私たちの役割は、“大戦を終わらせるために”多種族を殺すことだから。よく見れば、あの頃と空の色は違うし、憎しみを感じない……」
小声でつぶやき続けるシユ。
さっきから彼女は幾度となく態度を変えている。
情緒不安定とでもいうべきだろうか。
「うん。それじゃあれを倒すのを手伝ってほしいの」
「分かった。じゃあみんな…」
「あ、名前聞いてなかった。なんていうの?」
ふと思い出したことを言う。
「ん?シユ、だよ」
あっさりと答えてくれる。
「シユだね」
「みんな、構えて」
すぐにシユが、他の機巧種に呼びかける。
それに応えて、機巧種たちが各々の武装を上空のデザイアに構える。
どうやら彼女がリーダー的存在らしい。
「あ、そうだ」
結は機体の通信機能を使用する。
「凜華」
「結?無事だったの?」
凜華の安堵が伝わってくる。
戦っていたせいで結の安否を確認する余裕がなかったのだろう。
「あのちょっと伝えたいことが」
「戦闘中だから手短にお願い」
「うん。えっと、今からこの子たちが攻撃するっぽいから、当たらないように離れてほしいの。他の人たちにも伝えて」
「どういうこと?」
凜華がこちらを見降ろす。
彼女に手を振る。
「え、説得できたの?」
凜華はそのことに驚きつつも、言われたとおりに他の者に伝える。
「シユ、ちょっと待って。みんなが離れるまで」
彼女に、味方に攻撃が当たらぬよう、逃げる時間を設けたいことを伝えるが、、
「もう無理だけど」
そんな回答が返ってくる。
「へ?」
「すでにエネルギーはチャージ済みだし、速く撃たないと砲塔が潰れちゃうよ」
「ちょ、待って…」
しかし、彼女らは待ってくれなかった。
「みんな、発射」
シユの声とともに、機巧種全員が砲撃を行う。
その色は緑。
「逃げて~!!」
多数のビームがデザイアと、その付近にいる者たちに接近する。
基地の者たちは容易く回避する。
ヴィーヴィルと日花里もだ。
しかし、
「のわっ、なんだよこれ!お!?」
「ちょっと、速いよ!こんなすぐ来るなんて聞いてない!」
フレースと凜華は如何にか避けようと頑張っている。
かすっているような気もするが
「ちょ、シユ!」
「あれを倒すんでしょ…?」
「いやそうだけど…あ」
デザイアの方をよく見ると、各部が大ダメージを受けている。
今もなお砲撃は続く。
撃破を阻んだ再生力は、破壊のスピードが速すぎて、もはや意味をなしていない。
「すごい…」
そして、あるものがその顔をのぞかせる。
「あれは!」
大破した巨体の中心から、球型の物体が見える。
あれこそがこのデザイアのコアだ。
あれを潰せば、デザイアは消滅する。
「シユ!あの球を撃って!」
「どれ?」
「あれ!」
「う~ん?」
そんなやり取りをしていると、
「ええい、この!」
声が聞こえる。
現在攻撃回避中の凜華の声である。
「コア!?なら…」
凜華が飛び上がり、機体の砲をコアに向ける。
「いけ!」
砲塔から、弾丸が目にも止まらぬ速さで射出される。
あやるかに見えたが結果は外れだった。
「外れた!?くう!」
残った砲台から反撃を受け、後退を余儀なくされる凜華。
「結!手伝って!」
「え、うん。分かった!」
結は機体のスラスターを使って飛び上がり、背中の装甲に懸架された大剣を手に持つ。
アームドユニットを伸ばし、一気に加速。
「それぇぇぇぇぇ!!!」
大剣を正面に持って飛び、コアを目指す。
かなり大胆な方法だが、これなら……
「ちょ……!?」
結は驚く凜華の真横を通り過ぎ、コアに接近する。
近くの残存砲台が攻撃してくるが、アームドユニットで防御する。
そして、コアのもとに……!
「それ!」
コアが大剣に貫かれる。
「やった!」
コアがひび割れ、崩壊する。
それと同時に、デザイアから断末魔の叫び声のようなものが上がる。
キュゴオォォォォンン!?!?!?
そして、デザイアの体は光りの粒子となり、消滅した。




