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アポカリプス・デザイア  作者: 結芽月
第二章[人機再起動]
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第二章[人機再起動]第十話

「え、えええええええええ!?!?!?」

 結が思わず叫ぶ。

 急にどこかに飛ばされたかと思ったら、その先の上空にデザイアが、しかも見たことないサイズの物がいたのだから驚いて当然である。

「どうしよう…」

 彼女の声が震える。

「あれ。いったいどういうこと?」

 そこに凜華が近づく。

「凜華、あれ」

 結が空のデザイアを指さす。

「ん?うわっ!?」

 それを見、大きさに圧倒される凜華。

「こんなサイズのデザイアは……」

 不安を口にする結。

「こんなの対処できるかな」

「無理だよね。う~ん、今はまだ攻撃してきてないけどすぐにしてくるだろうし。どうにかしないとね」

「それも重要だけどさ、こっちもどうにかしないと」

 フレースが周りを見ながら言う。

 周りには先ほどの空間にあったものがすべて存在している。

 もちろん機巧種たちもだ。

 ここに飛ばされる前に全員が目覚めたのだ。

 そのうち自分と日花里以外の三人を攻撃し始めるに違いなかった。

「どうしよっか?」

 日花里が軽い口調で言う。

 こんな状況でもこれまでのノリを保っている。流石といったところか。

「う~ん」

 結は考え込む。

 とにかく時間がない。何か…

「う~ん」、

「ちっ、不味いな。あいつ、こっちに気付いたか」

 突如ヴィーヴィルが呟く。

 デザイアが、下部の砲塔を結たちに向ける。

 下に向けただけだが、デザイアは真上にいるので撃たれたら直撃は逃れられない位置だ。

「あわわわわ」

 結は再び慌て、思わず周りを見る。

「そうだ!」

 結の頭に一つの案が思い浮かぶ。

「結、何か思いついたの?」

「うん!」

 凜華にその案を話す結。

「ここの子達を説得して、デザイアを攻撃してもらうの。だいぶ強いはずだし。ちょっと申し訳ないけど……私たちだけじゃ、これは倒せそうにないし」

「できるそんな事?」

「人以外の殲滅が目的だったっていうなら、デザイアも攻撃してくれるはずだよ」

「まぁ確かに」

 凜華が一理あるなという顔で呟く。

「みんな~くるよ~」

 のほほんとした日花里の声とともにデザイアから攻撃が放たれる。

 多数の光が煌く。

「うわっ!?」

 結は慌てて機体のアームドユニットを頭上に移動。防御を行う。

「うう」

 デザイアからビームの雨が降り注ぐ。

 防御を継続しながら、結は周りを見る。

 凜華や日花里の四人は防御が成っている。

 アーマード・パッケージはデザイアの攻撃から装着者を守るために、タクティカルに勝るとも劣らない強力な防御装備を持っている。(ただし例外はある)そのおかげでビルを簡単に壊すようなデザイアの攻撃にも如何にか耐えているのだ。だが、この威力は想定外だ。長くはもたない。

本来はエクスマキナやアラクネなどの初期に現れたデザイアの攻撃を防ぐことを前提としているのだから。

「あれ」

 結は機巧種たちの方を見ると、彼女らは特に何も対策を講じていないように見える。

 起きたばかりで、そんなことは行えないからだろうか。しかしそれでは……

「あ!」

 その時、機巧種の一人に攻撃が当たる。

 直撃だ。これでは助からない。

 結はそう思った。が、

「え?」

 攻撃を受けた機巧種は、傷を負っていない、それどころかビームを弾いている。

 何もしていないのならこんなことは起こらないはず。

 よく見ると、胸元には小さく、赤い魔法陣が出現している。

 おそらくあれらが防御結界か何かを生成し、彼女らの体を保護しているのだろう。

 その小さな魔法陣を展開するだけでこの攻撃を防いでいるのだ。

 なかなかにすごいものである。

「あれも、機巧種の力の一端だよ。さっきのは攻撃だったけど、今度は防御」

 日花里が機体に刻印された遠話術式を介して結に話しかける。

「あれも……」

 攻防両方に長けている機巧種に驚きつつも、防御を続ける結。

「あれ?」

 突如攻撃が止む。

 彼女は四つのアームドユニットを、元の腰の位置まで持ってきた後、デザイアの方を見上げる。

 それによって素性への視界が開け、その巨体に攻撃を加えているものの姿が見える。

「あ、もしかして基地の連中か?」

 フレースが気付いき言う。

 このデザイアに気付いて攻撃隊を出してくれたのだろう。

 ARPX-11[イブリス]など、様々な機体が戦っているのが見える。

 今のうちに話してみよう。

 そう思う結。

「取り合えずあの子を……」

 結は最初に誤って自分が起こしてしまったこのところに近づく。

「えぇぇぇぇん!!!」

「え…」

 デザイアのサイズのインパクトのせいで、これまで気づかなかったが(結は周りを散々見渡していたのに、何故気付かなかったのだろうか)、その子はずっと泣き続けていたらしい。

 どれだけの涙の量が……

「あの」

「う?な、に……?」

「ちょっと頼みが……」

 話をしようとする結。

 だが。

「あなた、さっきのぐすっ、三人のぐすっ、仲間でしょ…近くにいたし……何で人類種なのに、他の種族と一緒にいるの?…あの三人のせいで、装置壊しちゃったし……う、うえぇぇぇん!!!!」

「え、その……」

 結は対応に困る。

 すぐに泣いてしまうし、信用されていない感じがするし、そもそも話を聞いてくれない。

 説得は難しそうである。

 他の機巧種は意思疎通できるかもわからない。

 デザイアが敵であるとわからせるにはどうするべきか。

「おい、俺が竜化してあいつを潰す。とっとと場所を開けろ」

 突如ヴィーヴィルが言う。

「え?」

 急な要求に驚く結。

「あ、そっか。ヴィーヴィルが完全に竜化してあれにとりついて攻撃すればいいのか」

 凜華が納得し言う。

「じゃぁお願いするね~この子たちの説得は厳しいだろうし~まぁ脅威と理解したら、説得せずとも戦ってくれるだろうけど~」

 日花里がヴィーヴィルに賛成する。

「行くぞ、シフト!我が本来の器をここに!」

 竜化の文句が、本来の長さで発せられる。

 そしてヴィーヴィルが、遺跡に来た時のように竜の姿になる。……なるはずだったのだが。

「あれ」

 しかし、何も起こらなかった。

「あ?」

 当の本人が一番驚いている。

「あ、魔力不足じゃない?パッケージの保有魔力だけじゃ、ヴィーヴィルを完全に竜化させるのは難しいし、ここの魔力もこの子たちが大方使っちゃったからじゃないの」

 魔力は大気中に満ち、総量は常に一定に保たれ、不足するようなことは基本ないが、一定範囲内の魔力が急劇に消費されると、その補填を自然界が行うのには、相応の時間が掛かる。

 今は機巧種たちが防御のために大量の魔力を使ってしまったらしく、そのせいで魔力濃度が低い。

 幻竜種が竜化するには、相当量の魔力を使う。

 パッケージは使用者から魔力を吸い上げ、それを増幅して使用者に与える機能があるが、それで増幅した魔力量では、完全な竜化を行うのには不足なのだ。

「ちっ、何してくれてんだこいつらは」

 ヴィーヴィルが文句を言いたげな表情で言う。

 彼の方はダメらしかった。

「じゃぁ……」

 再び、機巧種に話をしてみないといけないだろう。

「あれ、でも他の子は……」

 結はあることに気付く。

 他の機巧種の子達は目が虚ろだ。

 最初の子と同じ状態であるのだろう。

 とすると、言葉を交わすことさえ難しそうだ。

「結局はこの子……」 

 結は目の前で未だなお泣き続けている子を見つめる。

 水分を失い過ぎて、ミイラにでもなるんじゃないかと思いながら。

 当然そんなことにはならないが。

「お願い!頼みがあるの」

「うっ、うっ……」

「えと、あのデザイアを一緒に倒してほしいの!じゃないと……」

 ビイィィィン!!

 突如耳をつんざくような音が発生する。

 デザイアが再び結たちを攻撃しようとしていた。

 基地の者たちは頑張ってくれているようだが、大きさが大きさゆえに攻めあぐねている様子だ。

「みんな、私たちもいっくよ~!。ここに居続けても攻撃受けるだけだしね!」

「た、確かに」

「そうした方がいいかも」

「行くぞ」

「え、みんな~……」

 四人が早々に空に上がる。

「早く、結も!」

 凜華が上空から結に叫ぶ。

「でも…」

 基地の人たちも攻めあぐねているのだ。

 自分たちが行ったところで、そこまで状況は変化しないだろう。

 ならやはり、この子たちを味方につけて一緒に戦った方がいい。

 そう結論づけた結は。

「お願い!」

 より真剣に機巧種に頼み込む。

「う、なに……?」

 ようやく泣き止んだ少女が涙声で言う。

 目元に未だ涙が浮かんでいる。

「あれ、聞いてなかったの…?それはいいや。あの……」

 結はちゃんと話をする。

 今回彼女は一応は聞いてくれた。

 だがしかし。

「信用、できないよ…あの獣たちと一緒にいたでしょ…。あなた、敵なんじゃないの……?そんなのと協力するって…」

「獣って……。違うの…それはね」

「私たちの役割は、人以外の殲滅だけど…。敵側に回るんだったら人でも」

 少女は信じなかった。

「私たちはね……」

 ちゃんとそれについても説明しようとする結。

「人以外は、要らない!それに見方する人も!」

 其れとは対照的に機巧種の少女は武装を結に向けてくる。

「殺す!それが私たちの!」

『私たちの』

 他の機巧種たちがそれに反応したかのように動き出す。

「存在意義!」

『存在意義』

 一斉に武器を向けてくる。

 結に向かって。

「結!?」

 上空でデザイアに砲撃を加えていた凜華がそれに気付き、声を上げる。

「な。ありゃ、やべえんじゃ…」

 その声に反応し、下を見たフレースが言う。

「何で…」

「多種族の殲滅が最優先だけど、あいつらに味方するなら。あなたから、殺す」

 機巧種全員の目が赤く染まる。

 完全に結を攻撃対象に入れたようである。

 もはや彼女の話を聞き入れはしない。

 思考自体がどこかおかしかった。

「何でみんなを殺そうとするの!?存在意義?殺すのが存在意義だなんて悲し過ぎるよ!」

「獣側についたあなたには、わからない。この価値が」

「殺すことに価値があるっていうの!?そんなのおかしいよ!」

 理解できない考えと言動に思わず叫ぶ結。

 その時。

「結!」

 凜華が叫ぶ。

 それと同時に先程とは比べ物にならないほどの太さのビームが降り注ぐ。

「は!?」

 先程の数倍の威力を持っているであろうことが見て取れる。

 いくらこの子達でもこれは防げないのではないか。

 そう思った時の結の行動は早かった。

「この!」

 彼女はアームドユニットのスラスターを使い、ビームの射線上に躍り出る。

「何…!?」

 そして、アームドユニットを正面に出す。

「プロテクト!」

 彼女は自身が使える数少ない魔術のうち、防御の術式を使用する。

 大型の魔力障壁が三枚、正面に出現する。

 パッケージの防御機能を含めた四段構えだ。

 ビームが直撃する。

「くっ」

 如何にか受け止める結だが、すぐに一つ目の障壁にひびが入る。

 耐えきれるのか……

 不明である。



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