第二章[人機再起動]第九話
グオオォォォォンンン!!!
不協和音が辺り一帯に響き渡る。
新たなデザイアがゆっくりと侵攻する。
その球体状の体全体に備え付けられた砲が火を噴き、周囲に被害をもたらす。
すでに基地にも、その攻撃は届き始めている。
「第二タクティカル隊、発進準備!」
指示が飛ぶ。
「おう!」
「行くのであります」
タクティカル・パッケージの使用者たちが機体を動かし、カタパルトデッキに移動する。
その数総勢二十四機。
種類は六種類。
使用者によって各部がカスタマイズされた機体群が、デザイア迎撃のため動き出す。
広いカタパルトデッキが出撃機体で埋め尽くされる。
「ARPX-06[Δ(デルタ)]行きます!」
「ARPX-02[β(ベータ)]出るぞ!」
次々とタクティカル・パッケージが空に飛び立つ。
重装備の機体、細身の機体。その姿は様々だ。
それらは背部スラスターの出力を最大にし、デザイアの方に向かっていく。
「いけ!」
先頭のARPX-07[フロンティア]が、背部に取り付けられた十の流線型の攻撃ユニットを射出する。
この装備は自立型の支援ユニットで、射撃、斬撃、防御など様々な事が行える。
「くらえ!」
そのユニットから緑色のビームが放たれる。
このユニットは、支援機という分類ではあるものの、そこから放たれるビームは強力で、
タクティカルが装備する通常魔導兵装と同等か、それ以上の威力を誇る。
パッケージの武装はアーマードのものでも、小型デザイアなら、一撃で仕留められるように調整が施されている。タクティカルはサイズが大きく、規格の関係上、アーマードよりもさらに強力な武装が装備されている。
相手は、いまだかつて確認されていない大型デザイアだが、タクティカルの装備ならある程度は通用するはず。
ビイィィィィンン!!
直撃。爆発が起き、デザイアから煙が上がる。
そもそも的が大きいので、めったなことでは外さないだろうが。
「よし!」
さらに後方の機体たちも射撃を行う。
大型デザイアは、全身の砲を以て反撃してくる。
タクティカル部隊は、その攻撃を回避しつつ、射撃武装による攻撃を叩き込む。
その攻防が続く。
そして、デザイアが動きを止める。
「効いてるぞ!」
部隊の一人が、機体に備え付けられた通信用魔道具を通して叫ぶ。
まだコアの破壊は行えていないが、このままいけば……
全員がそう思う。
しかし、
キュオォォォォンン!!
再び、不協和音が鳴り響く。
そして、大型デザイアが再生を始める。尋常じゃない速度で。
「え、この再生速度は……!」
今まで確認された六種のデザイアのどれもを上回る再生速度だ。
攻撃を放っても、瞬時に再生され、無かったことになる。
これではいくら攻撃しても無駄だ。
本気を出してきた、という事だろうか。
「あ、また動き出すよ!」
デザイアが再び進みだす。
方向はこれまでのまま。
脅威が迫る。
初の飛行タイプ、さらに大型であの再生力。
これは苦労しそうだ。
目的は当然ながら、この巨体の撃破なのだから。
『ミューティさん、あれ』
パールが機体の左腕を使って正面を指さす。
その先に、大きな球体が少しずつ進んでいるのが見える。
かなり目立つ。
『あれですね。間違いなく。煙みたいなのも見えますし』
電文にあったデザイアとはあれの事だろう。
そう確信するミューティ。
『早く行かなくちゃ』
『そうですね』
二人は機体の飛行速度を上げる。
機関部の、マナブーストジェネレーターがうなりを上げる。
支援のため、そこに向かって飛翔する。
だいぶ手こずっているようなのが、遠目に見てもわかる。
最初に現れた飛行型のデザイアは、空を突き進む。
クゥボオオォォン!
その頭部の赤い目を光らせ。
「あれの狙いはここかもしれませんね」
ククルカンが言う。
そこは薄暗く、広いとは言えない空間だった。
そこにある真ん中に穴が開いた円形のメカメカしいテーブル。
円卓とでも呼ぶべき代物。
それは全体が魔道具となっており、その中心に立体映像が映し出されている。
そのある一地点を、彼女は指している。
「この進行ルートからみてその可能性が高いですね」
円卓の一角に座っている、水妖種の女性が呟く。
「なら、さっさと通達して、迎撃しようぜ。そこはもし、やられたら厄介だからな」
同じく円卓の一角に座る(椅子の上で胡坐をかいてふんぞり返っているが)幻竜種の幼女(見た目は)が言う。
「でも……報告によると、相当早いみたいだし……」
「それはどうとでもなるだろ」
「いえ、この速度で動くデザイアのコアを的確に打ち抜くのは至難の業です。魔術だけでは
打ち抜けないのですから」
宝玉種、幻竜種の幼女(少なくとも見た目は)がそれぞれ発言し、ククルカンが冷静に言う。
「どうしたものかなぁ」
聖翼種の女性が顎に手を当てて考え込む。
「童に考えがあるぞ」
徐に眼鏡をかけた魔人種の少女が手を上げる。
「どんな?」
「ルビリント、お主が行けばいいんじゃよ」
「ふぇ!?私なの?」
ルビリントと呼ばれた宝玉種の幼女が、驚いて声を上げる。
「お主なら、この速度でも反応する事は可能じゃろ?」
「確かにそうだけど……」
もじもじするルビリント。
「こんな序盤から出ちゃっていいのかな?」
「いいんじゃないの?別に」
「そんな軽く……!」
ルビリントが慌てる。
「私は別にいいと思いますよ?そちらの方が確実ですし」
「……そう?じゃぁ出ようかな……!」
「なら、行ってくるのじゃ!」
ポチッ!
「え?」
ルビリントの座っていた椅子の下の床が、パコンッ!という音をたて、左右に割れる。
「え、ちょ、ちょっと~!?」
速攻でルビリントは、できた穴に落ちていった。
「成功、じゃな」
「さらに新たな反応!?」
オペレーターが絶句する。
「何ですって!?」
司令が叫ぶ。
今進行してきているデザイアの対処で忙しいのに、また新たな敵が!?
「ん?でもこちらに来る様子はないです。この基地とは別の方向に向かっています。このまま行くと……あ!」
「どうしたの!?」
「この進み方だと、第37号遺跡[レキアラ]に到達します!」
「それって、新人部隊が物資回収を行っているところじゃ。まずいわ、デザイアとの交戦経験が少ない新人たちにあのタイプが倒せるとは思えない。どうすれば……」
眼前のデザイアの撃破に戦力を注いでいる今、[レキアラ]の方に割ける戦力はない。
そもそも、これの対処のために周りから戦力を集めてきてしまったのだ。
本来はあちら側の防衛も行うのがこの基地の役割なのだが……集めてしまったのは失敗だった。これでは遺跡周辺はがら空き、デザイアの進行を許してしまう。
「くっ、仕方ない。今からでも」
オペレーターに指示を出す。
「残りのアーマード部隊を出して!本当は、最悪の場合の保険として、残しておきたかったのだけど、仕方ないわ」
オペレーターを通じて基地のアーマード使用者に指示が送られる。
使用者たちは次々と各々のアーマード・パッケージを展開、遺跡の方へ出撃していく。
「間に合うといいのだけど」
グオオォォォォンンン!!!
例の不協和音が鳴り響く。
もう一機の大型デザイアは、遺跡のすぐそこまで迫っていた。
基地の連中は間に合わなかったのだ。
そして、デザイアは海岸線を超え、遺跡に到達する。
その時、
シュオォォォンン!
遺跡の手前に巨大な魔法陣が現れる。
その魔法陣が光りだし、その光は辺り一帯を輝かせる。
魔法陣が回転し、周囲の魔力を集め、何かを形成し始める。
数秒後、光が消え、魔法陣も消滅する。
代わりに、現れたのは……
「う、ここは…」
円錐状の巨大な装置と、十何人もの機巧種と、結、凜華、日花里、ヴィーヴィル、フレースの五人だった。




