第二章[人機再起動]第八話
「目標への攻撃を開始する」
少女が右手の砲を前面に向け、エネルギーをチャージし、魔力砲を発射する。
「のわ!?」
射線上にいたフレースが慌てて背中の翼を広げ、さらにスラスターを使い攻撃を回避する。
「……」
少女は無言。
そして今度は左手の砲を構え、凜華の方に放つ。
「ええ!?」
驚き、とっさに幻獣化して砲撃を避ける凜華。
「……く」
今度は両方の砲を前に突き出し、ヴィーヴィルの方に標準を定める。
「……はっ」
再び攻撃が放たれる。が、
「ふっ」
ヴィーヴィルはいとも簡単によけて見せた。
「単調だな。読みやすい」
「……む」
ヴィーヴィルの言葉に反応し、少女が顔を膨らませる。
少し、かわいかった。
というか急に恰好つけたこと言い始めたヴィーヴィル。
意外とまともな回避能力はあるらしい。
これまでただの自信家のような行いもあったため、意外である。
そして少女が背中の翼を動かす。
その形状が変化する。
渦を巻くように。
「……この」
少女は右側の砲を前に向ける。
今までの数倍のエネルギーが砲に溜め込まれる。
これは当たればただでは済まなそうである。
「……くらえ」
少女が呟く。
それと同時に魔力砲が撃たれる。……撃たれるはずだった。
「……あれ」
砲撃は来なかった。
「何で?」
少女は首をかしげて呟く。
背中の翼が次々と形を変える。
「えい」
再び砲撃を試みる。
しかし、出ない。
「何で……」
少女がうつむく。
「あれ。終わり、なのか?」
「えっと、そうなんじゃない?」
すぐにでも動けるようにと準備していた二人が言う。
「うぅ……」
何か鳴き声らしき声が聞こえる。
「うぅ……」
少女からのようだ。
「な~んで~????」
顔を赤らめて、少女が泣き出す。
「ほら、私たちは攻撃されなかったでしょ?」
「え。まぁ確かにそうだったけど」
ワンテンポ遅れて頷く。
「ところであれどうするの?」
現在号泣中の少女を見る。
宙に浮かんだまま泣いている。
「そうだな~。取り合えずフルボッコにして捕まえよう。なんか武器使えないみたいだし」
「フルボッコ!?」
思わず大声が出る。
「いやだって、私たち二人はいいけど、他の三人はばっちし殲滅対象になってるみたいだし。危ないじゃん。戦闘不能にするくらいだよ。今ならいけそうだし」
「いやでも……」
ちょっとかわいそう。
「いや、機巧種って本来尋常じゃない戦闘力持ってるから。多種族を殺すために改造されたんだから当然だけど。今やっておいた方が得だって」
「お得って」
再び少女の方を見る。
相変わらず大泣きしている。
尋常じゃない量の涙を出しているように見えるのは気のせいだろうか。
「演出じゃない?それはいいとして結。私そうするよ。さっきほんとに死ぬかと思ったし」
凜華は日花里の案に賛成らしい。
「あ、俺は可愛い女の子に手を上げたかないんで、遠慮しときますわ」
フレースは嫌らしい。
少し言い方が気持ち悪かった。
しかも不気味な笑みを浮かべながらである。見てる側はあまりいい気持ちはしない。
「けっ、ならさっとやるぞ」
ヴィーヴィルが舌打ちをし、急げとせかす。
早く終わらせでもしたのだろう。
「え、でも……」
「なら仕方ない。結ちゃんはフレースと一緒にここの隅っこにでもいといていいよ!」
日花里がそう言って、前に出る。
「ささ、俺たちはこっちいよ」
いつの間にか接近していたフレースが、急に肩に手をのせてくる。
「ひゃ!」
少し驚く。
「おいおい、気にすんなって。仲間だろ?」
フレースが笑いながら言ってくる。
気持ち悪い、この人……!!
そう思う結。
「さて、いっちょやりますか!」
日花里が手をポキポキ言わせながら、機体のスラスターを使用し飛び上がる。
それと同時に凜華とヴィーヴィルも。
「ん?人?何で?」
涙声で少女が言う。
一旦明らかに多すぎる量の涙が止まる。
出どころは本当にどこなのか。
「ごめ~ん。諸事情でちょっとボコらせてもらうね~。殺したりとかはしないから~」
日花里が笑顔で言う。
「ちょっと怖いんだけど」
「そう?」
日花里が不思議そうな顔で返答する。
たまに暴力的な過激な表現が出てくるのはどうにかならないのか。
「いいから早いとこ、やっちまおうぜ」
ヴィーヴィルが尾の先についた武装を展開する。
先端に大型ブレードを付けた砲との複合兵装だ。
ブレードを取り外して使う事もできるので、使い勝手が良い。
砲は尻尾の動きでいかようにも発射核度を変更可能だ。
「まいっか」
凜華が背部ライトアームの武装、重奏砲を前に出す。
それなりに強力な武装になる。
「じゃ、突撃~!」
日花里が笑顔で叫び、機体左右の大型ユニットのカバーを開かせる。
彼女の機体は左右のブーメラン型のユニットから無限に相反する属性を持つ魔力を一時的に凝縮したミサイルのようなものを放つことができる。
そして。
「食らいやがれ!」
「重奏砲[穿]発射!」
「マナミサイル、全弾発射~!」
三人のパッケージからそれぞれ攻撃が放たれる。
「あれは過剰なんじゃ……」
その光景を結が見て呟く。
「へ」
少女が間抜けな声を出す。その直後に、
「え、え~い!?」
相変わらずの涙声でそう言い、右の砲を消滅させ、瞬時に大剣を展開する。
「この!」
それがおおきく振りかぶられる。
「な!?」
「に!?」
「おお!」
三方向からの同時攻撃を見事にかき消した。がその勢いで、
「あわわわわ!!!!」
大剣を空間の真ん中の装置に向かって投げてしまう。
「ああ!」
少女が涙目で叫ぶ。
「あら」
そして、その剣は装置に上の方に突き刺さる。
「あ……」
少女がやってしまったというような顔で呟く。
「あああああ!私ったらうっかり!マスターたちのぉぉぉぉぉ!」
急に頭を抱えて発狂し始める。
「……ええと」
凜華が頬をかきながら困った顔をする。
「は?何なんだよ急に」
ヴィーヴィルがイラつきながら言う。
「うええええん!!!」
絶叫から一転。
少女はさっきよりひどく泣き始める。
五人は対応に困りその場で止まってしまう。
その時、
『て…そう…そう…し…す。ガガガが…範囲…ぴ、全…い』
突如ノイズだらけの音成が空間に響き渡る。
「何!?」
突然のことに一同は騒然とする。
『じょ…かい』
音声は続く。
より大きくなって。
「何、何か起こるの?」
凜華が不安そうに言う。
そして、五人が混乱し、一人が泣いているその空間の、
「のわ!?」
「え!?」
他のすべてのカプセルが開き、機巧種たちが出てくる。
「あれ、これまずいんじゃ……」
凜華が額から汗を垂らしながら言う。
「ちっ」
ヴィーヴィルが、もはや恒例に近くなってきた舌打ちを行う。
さらに、異変はそれだけにとどまらず、中央の装置が光り出す。
「……!」
瞬時に空間に光が満ち溢れ、そこが丸ごと消える。
機巧種と五人を含めて。
「あ……」
声が出る。
すぐにその声を発したものも消える。
最後には岩石の真っ暗な空間が残ったのみ。
「う、ここは…」
結が目を開ける。
あの強い光は何だったんのだろうかと考えながら。
そして、その瞳が最初にとらえたのは……
「え、えええええええええ!?!?!?」
空中に浮かぶ、巨大な球体型デザイアだった。




