第二章[人機再起動]第七話
「え」
少女が目を開き、突如喋ったのに驚き後ずさりする結。
「あなた、達は……」
彼女がもう再び呟く。
プラグが、その部分的に機械化された体から外れてぶら下がる。
同時に煙を吐き出して、カプセルが開く。
彼女が結たち側に倒れこんでくる。
「あわっ」
何かに突き動かされ、結は慌てて受け止める。
「あなた達は……」
少女はひたすら同じことを言い続ける。
先は光っていた瞳も今は輝きが失われている。
「あの……あなたは」
結は話しかけてみるが反応はない。
動きはほとんどなく、息が僅かに聞こえるのみ。
「どうしたら……」
結はそう言って四人の方を見る。
だが凜華と日花里が肩をすくめたのみ。
このような状況などそうそう合うものでは無い。
対応の仕方など分かるはずもない。
遺跡の最深部で見つけた少女らしき者たち。
一体何者なのか。
「どうしたらってなぁ。俺、こういう状況は遭遇したことねぇし。こんな感じの子は好きだけど。ちょっと口説いてみてぇかも……」
「口説く?」
フレースが少々危ない発言を漏らした。
「あ、今のは忘れてくれ」
「え、うん」
フレースが慌てて誤魔化す。
最後の言葉は気になるが、ひとまず置いておく。
「とにかく座らせてあげたら?」
日花里が提案する。
「う、うん」
結はその言葉に従い、その子を床に座らせる。
十数秒様子を見るが特に変化はなかった。
「お~い」
彼女が耳元で叫んでみるが、効果はない。
その時、再び日花里が口を開いた。
「その子ってもしかして」
「知り合い?」
「そうじゃないけど~」
日花里が手を振って否定する。
「昔、契り手になる前の話しなんだけど……」
さっきまでの軽い雰囲気は何処かへ行き、真剣な表情で日花里は話始める。
「さっきはカプセルに入ってたせいで、よくわかんなかったけど、この子たちって、機巧種なんじゃないかな」
「機巧種?」
結にとって聞いたことのない単語だ。
“種”がついているということは知性生物なのだろうが、そんな種族はいないはずである。
一体何なのだろうか。
「あ、結は知らないか。この世代が知るわけもないか。人類種は長生きしないし」
日花里が呟く。
「いや、私も知らないけど」
「俺もだぞ」
凜華とフレースが手を上げる。
「あれ二人も?フレースとかは知ってそうだけど」
「知らんけど」
フレースが何を言ってるんだと言わんばかりに答える。
「はぁ」
日花里が生返事をする。
「あれ、ヴィーヴィルは知ってるの?
「……知ってるがな……」
「あ、そうなんだ」
「けっ!」
ヴィーヴィルが舌打ちをする。
感じの悪いものである。
「分かった説明する。機巧種っていうのは……」
日花里の説明が始める。
三人はそれを聞く。
機巧種とは、崩星大戦時に存在した人工の種族だ。
もともとは人類種であったが改造され、兵器となった。
当時魔術に関しても、戦力に関しても、多種族に劣っていた人類種はこの差をいかにして埋めようか考えた。
そして、一部の者たちがある案を考え出した。
それは、8~14歳の伸びしろのある子供たちを改造し、強制的に上位の魔術の使用を可能にさせ、されに武装を装備させて洗脳し、兵器として扱うという恐ろしい案だった。
それは機巧製造計画と呼ばれ、発案した一部の物らによって極秘裏に行われた。
人類種は数が多く、人材は豊富にあった。
そのため、素材に困ることはなかった。
彼らは二年のときを経て、機巧種の一番機の製造に成功。
それはすぐに実戦に投入され、多大な戦果を上げた。
よって計画は続行され、いくつもの機巧種が生み出された。
彼女らは己を兵器として扱い、戦い続け、壊れ、死んでいった。
決して止まることはなく、ひたすらに人以外の種族を殺すために。
だが、その繰り返しは突如、終わった。
ある地下研究所の職員がそこにいた全ての機巧種を封印、施設を爆破した。
そこは計画の中核を担う施設で、そこが消失したことにより、計画は一時中断された。
製造は他の場所でも行われていたが、開発に関するデータはそこがすべてを持っていたためだ。
そして、計画が再起動する前に大戦は終了した。
追及を恐れた発案者たちによってそれに関する一切の資料が処分され、計画は歴史の闇に葬り去られた。
そのため、情報は機巧種を直接見た者しか持っていない。
おまけに寿命の関係で、そのほとんどが死亡。
人類種の後世には、ほとんど話は伝わっていない。
「て、言う事なんだけど」
説明が終わる。
「へぇ、そんな事が」
「ま、俺らが知ってるわけねぇな。別種族のことだし」
「この子達がそんな……」
一行は部屋を見る。
壁際にはぎっしりとカプセルが並んでいる。
そのカプセルからはコードが上の方に伸び、部屋の中心に鎮座する、円錐状の機械につながっている。
ここで今眠っている全員が、体を己の意志に反して弄りまわされ、兵器に落とされた。
そう思うとゾッとし、同時にかわいそうにも思えてくるものである。
「おい。そろそろ来るぞ」
突如ヴィーヴィルが言う。
「あ、確かに」
思い出したといった感じで、ポンッ!と日花里が手を叩く。
「えっと、どういうこと?」
凜華が訪ねる。
「えっと、さっきも言ったとおり、人以外の殲滅を目的とするから、私と結ちゃん以外は全員攻撃される可能性があるってこと」
「へ?」
そのやり取りが行われるとほぼ同時。
「ん?人……いや、殲滅対象……」
その機巧種の子が顔を上げ、周りをゆっくりと見渡す。
虚ろだった目が、今度は赤に染まる。
声が機械的になる。
「破壊。しなくちゃ」
そう言った瞬間、その体が宙に浮かぶ。
凶器的な力がその身から発せられる。
「!?」
「な、まさか……」
ある程度まで浮かび上がったところで、機巧種が眩い光を放つ。
「ちっ。覚醒しちまったか」
ヴィーヴィルが舌打ちをする。
「戦闘形態に移行。武装展開」
宣言のごとき声が聞こえるともに光が収まる。
そこには。
両手に大型魔力砲を装備し、背中に幻想的かつ、機械的な翼をもち、体に漆黒のスーツと変色する帯を纏った、兵器となった少女が存在した。
目が再度赤く光る。




