第二章[人機再起動]第六話
「ん?あれは……」
一行のその先。狭く、苔むした通路の奥の方に何かが見えてくる。
「扉?」
五人はそれの前にたどり着く。
在るのは扉のようにも見える物であった。
表面に装飾はなく、チリなどで薄汚れている。
「魔術式のドアじゃないね。ここが崩星大戦時の遺跡だと考えると、普通の自動ドアだったりするのかな?」
日花里が扉を触りながら呟く。
その表面からぽろぽろと汚れが落ちる。
「んなことはいいじゃねぇか。取り合えず、蹴りでもして開けりゃいいだろ」
ヴィーヴィルが面倒くさそうに言う。
罪悪感はもう消えたらしかった。
「まあ、それでもいいけど。蹴ったら何かが……ま、いっか!それ!」
日花里は一瞬悩むそぶりを見せたが、すぐに止めて扉を魔術で足を強化し、扉を蹴破る。
扉はあっさりと倒れた。
その表面には亀裂が縦横無尽に走っていた。
単純に劣化していたのであろう。
特にトラップが起動するような感じはなかった。
「あれ。電気通ってるし、何か来るかと思ったけど」
凜華が呟く。
彼女は警戒していたようであった。
そもそも、すでに危険かもしれない所に入ってしまっているのだから、今更ではあったのだが。
「さ、進もう!」
日花里が指を突き上げてさらに奥に進んでいく。
その足取りは軽い。
「あ、ちょっと!」
ピピッ!
「あれ、通信?」
パールの機体にメッセージが送られてくる。
「ええと、我が基地は新型のデザイアによる攻撃を受けている。敵は強大であり、支援が必要と判断。これをメッセージを受信できた者は至急、援護に来てほしい。海岸線第二十七基地司令リビア。ふ~ん……え!?」
コクピットの中で慌てふためく。
海岸線第二十七基地は、ここから3㎞(キロメリ)の地点にある大型の基地だ。
そこが敵の攻撃を受けているらしかった。
「ええっと……」
パールはひとまず深呼吸する。
体に魔力が巡り、少し落ち着く。
「連絡を。ここをこうして……」
彼女は魔導電子光盤を操作し、作業中の五人と連絡を取ろうとする。
しかし、
「あれ、つながらない……何で?」
その後も通信を試みるパールだが。
「やっぱりつながらない……」
『どうしたんですか?パールさん?』
彼女にミューティが話しかける。
「えっと、それが……」
送られてきたメッセージについて伝える。
『え!?私には送られてきませんでしたけど……今、そんなことが』
「はい、だから五人に連絡しようと思っているんですけど……」
「できないと」
「はい」
一体なぜ連絡ができないのか。
待っていれば出てくるだろうが、おそらく事態は一行を争う。
このままいけば取り返しのつかない事態になるかもしれない。
「私たちだけで行きましょう。時間の猶予もないでしょうし」
『ですね。伝えておきたかったですが……』
「そうだ!記録術式でメッセージを残しておきましょう」
『いい考えですね。それで行きましょう』
パールはミューティの賛成が得られたところで、機体からおり、手近な物資に触れ、術式を構築する。
「パールよりみんなさんへ、実は……」
術式を起動させ、記録する内容を呟く。
言い終わったところで最後の仕上げをし、術式を完成させる。
「よし」
そう言って、機体に戻る。
『できたんですね』
「はい」
ミューティに返事をした後、機体を再起動するパール。
機体を戦闘形態に移行させるためだ。
「起動完了。異常なし」
『では』
「行きます!」
二人の機体が、背部のスラスターからエネルギーを放出し、それに浮かぶ。
機体の向きを変え、基地に向かって飛行を開始する。
「これは……」
扉の先は先程の通路とは打って変わって薄暗く、不気味な感じがした。
少し道は広くなったが左右にガラス張りの何かがある。
ところどころのガラスは割れており、それがさらに不気味さを後押ししていた。
「何かスゲーー……あれだな」
「いやな感じ……」
結が凜華に話しかける。
「そうだね。何かねぇ、パッケージ纏ってても、幻獣化してたとしても、飲み込まれちゃいそうな感じが……」
凜華もいい感じはしなかった。
「けっ」
ヴィーヴィルが舌打ちをする。
彼もこの感じは嫌らしい。
「あれ、まだ扉があるよ」
日花里が奥を指さす。
「ほんとだ」
見えづらいが確かに奥の方にまだ扉が見える。
先程の物ほど劣化していないように見える。
「それはいいけど、速くこんなとこ出たいな。もともとここ行こうって言ったの俺だけど。なんか呪われそうだし」
「ささ行こうよ。転送装置かなんかあるかも!」
日花里がハイテンションのままで言う。
特に何も感じていないらしい。
契り手として数百年活動してきたようだし、こういうものは慣れっこなのかもしれない。
「う、うん」
五人はそれに向かって進む。
道は相変わらずの光景だ。
結は怖くなってきて、少しスラスターを吹かして速めに進む。
数秒後、
「さて。じゃいっくよ~!」
最初にたどり着いた日花里が、扉に手を当てる。
そこに何かの術式を展開する。
「離れといてね~」
そう言われ、少し距離を開ける結たち。
「よし、ボム!」
日花里がそう言った瞬間、光が集まって小規模の爆発が起こる。
そして、扉は奥に倒れる。
結たちはゆっくりと中に入る。
「え……」
そこには7mほどの高さの空間が広がっていた。
「女の子?」
凜華が呟く。
壁にいくつものカプセルが設置され、その中に少し幼い少女たちが入れられていた。
体中に機械がついているという、変わった点はあったが。
「これって……」
「何だろこれ?」
日花里が首をかしげる。
「これはいったい……」
フレースが衝撃を受けて呟く。
「……」
ヴィーヴィルは無言。
凜華は手近なカプセルのもとに行ってそれを観察する。
「やっぱり、女の子だよね……」
「何なんだろ……」
自分も近くのカプセルの前に行く。
「この子たちは、どうしてこんなところに」
結がそう言ってカプセルの蓋に触れようとした時。
ピッ!
「ん?」
妙な音が発された。
音は結の左手のある部分から出たようだ。
そこにはパネルのらしき物がある。
とても古い物のようだが。
彼女はそれを押してしまったらしかった。
「あ」
そして、ウィーンという音とともに、カプセルの中に満たされていた液体が減っていく。
「ん、何だ?」
結のもとに他の四人が音に気付いてこちらにやってくる。
「結、何したの?」
「何かこれ、押しちゃったみたい」
「え、大丈夫なの?」
「分かんない」
言っている間にもカプセル内の液体は減っていき、最終的にはプラグにつながれた少女?のみが残る。
そして彼女が目を開ける。
「あなた達は、誰……?」
プラグにつながれた状態で、消え入りそうな声で、そんなことを呟く。
瞳が碧く輝く。
機械的な光であった。




