講社の寄り合い
キラキラした冷たい塊は、で大きなバケツの中でユラユラと透き通ったひかりを不規則に反射する。そのなかで茶色い瓶のビールやら、オレンジ色のジュースやら、黒い瓶が、カラカラと揺れる。
冷やされた瓶は、慌ただしく広間に運ばれ、ますます宴会は賑やかになっていく。
しわがれ声の鳥を捌いていた叔父さんは、上機嫌に都々逸を唸りだす。手拍子の中を母も祖母も手伝いさんも、慌ただしく動いている。修子はお鍋のお風呂に入れられたお銚子の番をしている。
番頭さん気分である。お鍋がグツグツする前にお風呂から出すのはもっぱら祖母の役目である。いつの間にかお銚子はお風呂から引き上げられ、新入りが入ってくる。
番頭さんはだんだん番台さんのようになって、「お風呂上がったらフルーツ牛乳とイチゴ牛乳どっちにしますか?」と聞いてみる。小さな椅子に腰かけて、台所の隅でいつもと違う大仕掛けなお祭りの一日を見ているのである。メリーゴーランドのように、私は止まってるのに回りだけがグルグルと動いている。イヤ違う、世界が止まっていて私が回っているのだろうか?
そのうち広間から法螺貝の音がお腹に響いてきた。貝殻のお化けは、グルグルした形なのに、どうしてだかその大きな音はまっすくな感じがする。グルグルなのに、まっすぐ。人生と性根みたいなものだ。
この大きなお祭りは、講社を束ねる講元の年中行事の一つなのである。講中のおじさんたちは何十人もいて、皆それぞれに仕事を持っている一国一城の店主たちである。
個性も仕事もバラバラの講中の五月蝿方のおじさん達をして、「おとろしよ」といわしめる祖父は、講社だけでなく、この海の町をも纏めていた。
今日は家中が
賑やかだ。こんな日は、滅多にない。私の目と目の間には、大きな瘡蓋ができていた。その上にはまだガーゼが貼り付けられていた。
食卓は賑やかな方がいい。