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1.ユーティス牢獄

※ガールズラブとありますがそれがメインというわけでは無いです。

 ユーティス牢獄は、アルセーヌの街の外れの丘の上にある。

 周囲は草木が生え、一見すると廃墟の小さな牢獄のような。

 ……いや、実際に牢獄なんだが。廃墟じゃ無いんだなこれが。


 俺、レオン・シャーロットの生まれた家、「シャーロット家」は物騒な家だったと聞く。というのも、俺は幼少期の記憶がそんなに無い。


 小さい頃の記憶なんかすぐ忘れる、よく言われている事だ。それ自体はそんなに気にはならないが、自分の生家が物騒だなんて言われたら良い気はしない。

 このユーティス牢獄を造ったのは俺の今は亡き親父で、俺と俺の兄貴でシャーロット家長男であるギル、長女で妹であるユリアの三人は否応無く牢獄に務めさせられる事になってしまっていた。


 死人に文句を言っても仕方ないし、住居もユーティス牢獄の離れに置かれているものだから、今更仕事を変えようとか、逃げようみたいな気力も思いも無かった。


 今は俺の兄貴のギルがユーティス牢獄所長であり、副所長が俺だ。……荷が重くないかと言われれば嘘になる。が、仕方ない。この牢獄を造ったのは親父、それに人手不足のこの時代に「牢獄で働きたい!」なんて奴は変わり者だろうしな。


 もちろん俺以外にも看守はいるが、何にせよ収容されている人数が十数人しかいないため、看守の数も多くはない。


 そこから死刑囚は死刑にされたり、罪人もたびたび収容されて来るから収容人数は変動しがちだ。


 ガシャン!ガシャガシャッ!


 独房の並ぶ通路を巡回にと歩いていると、俺の向かう先から鉄格子のうるさい音がした。

 駆け寄ってみると、そこではユリアと囚人が何かを言い争っているようだった。


「嫌だ!死にたくねぇ!なぁ頼む、無期懲役が良い、死刑は嫌だ!」

「何をふざけた事を。大量殺人犯のくせに。お前は近いうちに死ぬんだよ」

「いつだよぉ!」

「知らせない決まりになっている」

「こンの……クソ女!」

「あ?」


 ユリアが鞘から剣を抜き出した。まずい、短気でキレやすいあいつはおまけに戦闘力が高い。何でこんな奴まで看守なんだろう……とか考えてる暇はねぇな!


「おい!ユリア!やめろ馬鹿!」


 俺の呼びかけに気付いたユリアは、舌打ちをしながら剣を鞘に納めた。遠距離で決着をつけられる銃というものがあるこの時代に、ユリアは剣を常備している。

 処刑人でもあるせいかもしれないが。


「レオン、こいつがうるさい」

 どこか子供っぽく抗議して来たユリアは、不機嫌な表情をしたまま例の囚人の独房の柵を蹴る。


 背中まで伸びたストレートの茶髪に、深い青色の目。俺とユリアは双子ではなく年子の兄妹だが、外見は双子並みに似ているらしい。

 髪の色、目の色、鋭めの目付きまで。兄貴曰く「中性的」なんだという。

 俺の髪が短く無かったら女に見えたんだろうか。


「あのなぁ、そりゃお前みたいな怖い顔して剣を装備した女が来たら怖いだろ。なぁ。こいつ囚人だから可哀想じゃないけど」


 更にやって来た看守に恐怖が増したのか、独房の奥へ引っ込み尻もちを着いた囚人を見る。


「お前確かエドワード・パブロだよな。そんなにビビらなくても今日は死刑の日じゃないぞ」

「きょ、今日は!?」

「というか大量殺人犯!てめぇが死ぬのにビビってんじゃねぇ!」


 俺はエドワードをビシッ!と指差す。ユリアの呆れた視線を感じつつ、そのまま固まっていた。


「……」

「何か言えよ」

「……ダサい」

「ああ!?」


 そんなやり取りを続けていると、いつの間にか少しだけ、こちらに近寄っていたエドワードが苦笑いしていた。


「俺はこんなガキに殺されるのか……」

「うるっせぇ!!」


 我ながらガキっぽい発言をしていると、遠くからパタパタと誰かが駆けて来た。


「ちょっと!何やってるのよもう!」



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