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思い出が私を強くする

作者: スギヤマ

大型ビジョンはさびいし光を放つ、小雨の降る夜の街で。

無慈悲な言葉の弾丸で撃ちぬかれ、胸にはポッカリと穴が空いたまま行き場を探してさまよう私は、この街を必死に東京の渋谷や新宿などに寄せようと、孤軍奮闘する大型ビジョンに目を奪われた。

女の子ってなんでできてる?

砂糖やスパイスや素敵なものぜんぶ。

大きな四角い器から流れる化粧品のCMに出ている人気のモデルのセリフは、私に向って言っているような気がした。


5年間付き合った彼氏から別れを告げられ、小雨の降る町を傘もささずに、白くモヤモヤした喪失感を背負って、数時間前まで彼と会うために準備していた幸福感が充満した部屋に帰ってきた。

大学生から付き合い始め、お互い社会に揉まれながら忙しい時間の合間をとりながら、愛を育んで来たつもりだった。この人と結婚をするという未来を疑わなかった。

だがそう思っていたのは私だけだった。結婚という終点に向う列車に乗っていたのは私一人だけで彼はもうとっくにその列車からは降りてしまっていた。

テレビをつけて、服を着替えないでリビングのソファに崩れ落ちるように倒れた。

喪失感は居心地がいいのか上機嫌で、私を可愛そうな目で見て弄んでいる。

女の子ってなんでできてる?

砂糖やスパイスや素敵なものぜんぶ。

さっき見ていた大型ビジョンに流れていたフレーズが脳裏をよぎる。

このフレーズ最初に聞いたのは小学生の頃で、たしか桑原涼介くんという男の子に言われたのを思い出した。

小学生の頃は周りの女の子に比べて、身長が低かった私を周りの男子はよくからかってきた。

「おい、ちび!!」と一人の男の子が笑いながら言うと、周りのいる2、3人の男の子が笑っている。私はなにも言えずに男子を睨んでいると「男子うるさいよ。里奈ちゃんは小さくないよ」と隣りにいる大原さんが言うと「うわー、大原に殺されるぞ。」と男子は笑いながら走って逃げていく。

この光景は、休み時間や下校時間に恒例行事のように、毎日なんども繰り返される。男子のつまらないちょっかいを週5で相手にするのはかなりしんどい。

それでも大原さんは男の子たちのちょっかいを毎回相手にしてた。

大原さんはクラスでも背は大きいほうで、クラスでは男子に太刀打ちができる女の子で、女の子たちの中では頼りにされていたので、責任感があったのかもしれない。

「本当に男子って馬鹿だよね。毎日この件を何度もやって飽きないのかね。」

「そうだね。」

「そうだ里奈ちゃんに、いいこと教えてあげようか。」と急に大原さんの話すテンションは変わった。

「なんなのいいことって?」

「他のクラスの子から聞いたんだけど、佐藤くんって。里奈ちゃんの事好きなんだって。」ニヤニヤしながら大原さんは言ってきた。

「そうなんだ。」と素っ気のない返事で返すと。

思っていたリアクションと違うのだろう、大原さんは目を全開にして驚き「えっ!! だってあの佐藤くんだよ。嬉しくないの?」と私に確認するように言った。

「うん。私、男子の事苦手だから。」

かっこいいなと思う男の子はいたが、男の子の乱暴な口調や横暴な態度に疲弊していたせいで、異性を好きになるという感情は、異性への嫌悪感という黒煙に飲み込まれ行方不明になっていた。

「えー。もったいないよ。」という大原さんの言葉で、おそらく私は今みんなが喉から手が出るほどほしい目には見えない宝石なんだということしか分からなかった。

その後は、大原さんから佐藤くんという男の子が、いかに素晴らしく素敵で周りの女子から憧れの的になっているかという、佐藤くんのプロパガンダのようなモノを聞かされた。

そのせいもあり佐藤くんという男の子には興味が湧いたが、佐藤くんの事を好きにはならなかった。


図書係なのでクラスの本棚の整理を週に1回しなければならず、金曜日の放課後に整理をする。係には男女で1人づつ選ばれるのだが選ばれた男子は、本棚の整理のことを知らないふりしてものすごい速さで帰ってしまった。

週明けの月曜日におそらく先生に忘れてましたという嘘で乗り切るのだろう、やっぱり男の子はずるいし身勝手で大嫌いだ。

もしも一緒だったら、ちょっかいを出してきてうざいので一人のほうが楽と気持ちを切り替えて、本棚の整理に取りかかる。

私以外誰もいない教室は窓から夕日が射し込み、夕日に教室を丸呑みされたのかと思うくらい朱色に染まりまる、外からは放課後の校庭で遊ぶ児童の楽しそうな笑い声はBGMになり哀愁漂う教室を彩う、私はこの雰囲気をが好きで私は雰囲気をゆっくり咀嚼するよに味わいながら本棚の整理をしていると、クラスのドアが雰囲気を壊すように開き、佐藤くんが教室に入ってきた。

「本棚の整理は2人じゃないの?」とわざとらしい演技でクラスに入ってきた。

佐藤くんのわざとらしい演技に察しがついた。私は嵌められた。

そう思っていると、いつも授業を受けている無表情の教室は佐藤くんと私のための劇場にかわり、規律正しく並んだ机と椅子のセットは8本足の観客に見えてきた。

「さきに帰ったよ。」作業しながら答える。

「それは、ひどいな。あいつそういう所あるんだよな。」と言いながら私よりも頭2個分くらい大きな体が、私の隣に立って本棚を整理をし始めた。

「大丈夫だよ。手伝わなくて、違うクラスなのに悪いよ。」手伝ってくれるのはありがたいが、本当は佐藤くんから離れたかった。

佐藤くんのおせじにも上手とは言えない演技が出す独特の雰囲気は、私の体には合わず鳥肌が立ち体には、炭酸飲料の無数の気泡ようなモノが浮き出る。

拒否反応としては立派すぎる証拠が体からあらわれる。

「大丈夫だよ。俺暇だし2人でやったほうが早く終わるよ。」

早く帰ってくれ。ほかの女の子たちならこの状況を高級フレンチのコース料理を楽しむように、雰囲気、表情、声など隅々まで堪能しているであろう。

だが、私はちがう苦行でしかならない。男の子の身勝手で横暴な態度に週5で振り回され男子への嫌悪感という入れ墨が私の心には刻まれているせいで、どんなすばらしい男の子でも2人っきりの時間を苦行に変えてしまう。

「ありがとう。佐藤くんやさしいね。」体の底から言葉をひねり出した。

もう佐藤くんを先に帰らせようとするのはやめよう、さっさとこの本棚の整理を終わらせて、このお遊戯会を終演させよう。

私の褒め言葉を受けて佐藤くんは、なんだか照れているのを見て少し心が静電気のような痛みが走ったが、そんな事に気にかけている余裕はなかった。

本棚の整理はものすごい早さで進んだ、2人ということもあったが、ここから早く開放されたい気持ちがカンフル剤となり私の作業を早くした。

「佐藤くん、今日は本当にありがとう。」

「いいよ、暇だったしそれに一人で整理は大変だろ。」

机の上にある真っ赤なランドセルを取りに行こうとすると「あのさ、俺さぁ・・・」佐藤くんの声はさっきまでとは違い、演技じみていないなんだか本当の佐藤くんの体から出ている声で話し始めた。佐藤くんの方に体を向けると、佐藤くんは下を向き、緊張で顔全体硬直しあれだけ大きかった体が小さく見えた。

私はみんなの憧れの佐藤くんの弱々しい姿を見て驚いていると、下を向いてた佐藤くんは顔を上げ前を向きジッと私の目を見る。窓から夕日が差込み、それを浴びた佐藤くんの双眼は少しオレンジがかっていて少しドキッとした。

「俺、伊藤のことが好きなんだ。付き合ってほしい。」

初めて異性から告白された。佐藤くんの言葉が体中に駆け巡り、心臓は狂ったように早く動き出し、体の底からジワーッと熱くなっていき内臓が溶けそうになった。

声をだそうにも声が出なかった。異性に告白をされるという未知の体験に、自分の頭は働くのをやめてしまった。何を言っていいのかわからない。

佐藤くんは下を向いている。返事を待っているのに、待っているのに佐藤くんに何を言っていいのかわからない。最悪の雰囲気が私と佐藤くんの間に流れる。

ここから逃げ出したくなるような息が詰まる雰囲気だ。

私の返事の遅さが作らせてしまった雰囲気に、居た堪れなくなった佐藤くんは「急に変な事を言ってごめん。」と言って、下を向き教室を出ていこうとした。

「待って、佐藤くん。」

出ていくのをやめて佐藤くんはこちらを見る。

「あの・・気持ちはすごく嬉しけど、私はまだそういう事わからないから、いい友達」と私が話している途中で佐藤くんは走って教室出ていってしまった。

私は佐藤くんの態度にその場に戸惑い立ち尽くした。

さっきまでの猛威を奮った嵐が急に治まったように、さっきまでの体の異常はいつの間にか普段どおりに動いている。

返事が中途半端な状態で終わってしまったせいで、私はなんだかモヤモヤした。魚の骨が喉に刺さったような違和感をどうすることもできなかった。

金曜日はいつも最高の気分で、2日間も学校という大きな箱で繰り広げる規律社会から開放されるのだ、とにかく楽しく金曜日の放課後という時間を堪能しているが、今日はちがった。アイツが余計なことしなければ、至高の時間を過ごしているはずだったのにと佐藤くんを恨み、他のどの男の子よりも強い嫌悪が目覚めた。

休みの2日間はとにかく佐藤くんで頭がいっぱいだった。

落ち着くと告白の場面が鮮明に蘇り、頭の中で何度も再生した。

何度も思い返していくと小細工をして2人っきりにして、ヘタクソナ演技で雰囲気を作り挙句の果てに告白しといて返事の途中で逃げる図体だけはデカイ腰抜け野郎じゃないかと嫌悪感が私にそう思わせるようになり、私の生まれて初めての異性からの告白という思い出は、史上最高の嫌悪感というホルマリンで漬けられ私の中で一生劣化することのない思い出となった。クラスの女の子はどういう目でアイツを見ているのか不思議でしょうがなかった。


週明けの月曜日に学校に入るとなんだか変だった。教室があるのは4階で、そこまでたどり着くまでに、特に女の子たちとすれ違うたびに冷たい視線を浴び、教室に入ると雰囲気がいつもよりも張り詰めていて、女の子達から視線はナイフで突き刺すように鋭く刺さった。

いつもならからかかってくる男の子は今日は避けている。

大原さんが教室に入ってきたので、私は「おはよう、大原さ・・」大原さんは私を一瞥してほかの女の子たちの方に行ってしまった。

私はいじめられている。

自分の席に座り、周りを見るのが怖くなり自分の机を見ながら、いじめられている事実を受け止めた。

なんで私がこんな目にあわなくちゃいけないんだ。なんで、なんで、なんで私なんだ。

机と睨み合いながら心の中でなにかにぶつけるように叫んだ。

全部アイツのせいだ。アイツが私に告白しなければ、アイツが私を好きならなければこんな目に合わなかったのにと佐藤への怒りや恨みの炎が燃え上がった。

だが、面と面向かってこの鬱憤を本人にぶちまけるほどの強かさは私にはなかった。

この小さな規律社会では生活をするのは本当に大変だ。

みんな足並みを揃えなければいけない一人で先に行く、もしくは劣るものがあれば周りからいじめという制裁を受ける。

だが一つ先に行ってもクラスの序列で上位にさえいれば制裁を回避することがある。

ざんねんながら私はクラスの序列では下から数えたほうが早く、そんな私が男子の序列トップの佐藤くんから好意を持たれているというだけでも地雷原に立っているのと同じなのに、告白をされてさらに告白を断るということは死刑だ。

授業が始まり机の中に置きっぱなしにしてある教科書を開くと、黒いマジックで書かれた侮辱や悪口で溢れかえっている。

バカ、ブス、チビ、ぶりっ子死ね、という悪口が教科書から飛び出し私を指で指して笑っている。

私の学年はいじめで不登校になった生徒が歴代の学年を比べても多く、そのせいでいじめは常習化しており、以前は机に落書きやモノがなくなるなどあったが現在は無視と教科書に落書きが一番先生にバレにくく制裁を与えられるというのが長年の経験で定番となっていた。

教科書に落書きや周りから無視などは、自ら先生や親に告白しなければならず、親を心配させるわけにも行かず、先生は生徒からの告白だと本気で扱わないケースが多く、もしもこの密告が失敗で終われば現状よりもいじめのレベルが上がるのかもしれないという見えない恐怖が密告にストップをかける。

まさか自分が受けるなんて思わなかったが、初めて受けた制裁は男の子のちょっかいが可愛いく見えるレベルになるくらいきつかった。

1時間目が終わり休憩に入るが、だれも私に話しけないクラスのみんなは私が存在をしていることを認めていない。孤独という湖にゆっくりと沈んでいく気分で、私の存在しない休憩時間を過ごした。

給食の時も机を移動してグループを組み食事をするが、グループを組むが机と机の間に隙間を開けて座る。食事中でも私は存在しない。私がいない世界でグループの話は成立してしている。

給食はコッペパンをひとかじりして全部残した。

給食が終わり教室の掃除のため机を下げると掃除係以外の人は昼休みに入れる。

掃除係ではないので昼休みに入ると、この教室から逃げるように飛び出し人があまりいない図書室に行った。

図書室は案の上人がいない、教室とはちがう雰囲気に私は癒やされた。

この空間は私の存在をこの箱の中で認めてくれる場所だ。

図書室の窓から昼の暖かな日差しが入り空間いっぱいに光をばらまく、この光を目一杯に浴びると、光は私の傷ついた心をやさしく撫でた。

この心地の良い光を浴びたくて窓際の椅子に座って何もせず何も考えず佇んでいると、教室と同じタイプの丸い掛け時計がこの光やこの空間に身をおくことにタイムリミットがあるという事実を教えてくれた。

あと25分で私は拷問部屋に戻らなければいけない、まるでシンデレラのようだな思ったが、私にはシンデレラのような強さはなかった。

その時だ、ガラッと図書室のドアが開いた。

ドアを開けたのは私よりも放棄のほうがたくましく見えるほど、小さく細く貧弱な体の男子生徒で私の存在にびっくりしたのか目を全開にしてこちらを見ている。

男子生徒は自分の体よりも大きな本棚の一番上にある本を椅子を使って取り、そしてなんとこちらに向って来た。

私は焦りあの小さな体が怖くてたまらなかった。

なぜなら男子生徒は私の存在しない教室で存在ている人間がだからだ。

「あのさ伊藤、ちょっとこれ見て。」と男子生徒はとっておきの宝物を見せるように笑顔で本を広げて見してきた。私はさっきまでパンパンに張っていた緊張と恐怖が一気に抜けた。男子生徒の瞳はものすごくキラキラと淀みはなくこの空間にマッチした瞳で、おそらく私の間抜け面が写っているだろう。

「どうしたの桑原くん。」と私は今日初めて学校で声を発した。

桑原くんは開いたページに書かれた文字を指でなぞりながら音読をした。


男の子って何で出来てる?

男の子って何で出来てる?

カエルとカタツムリと仔犬のシッポ

男の子って、それらで出来てる。


女の子って何で出来てる?

女の子って何で出来てる?

砂糖やスパイスや素敵なものぜんぶ。

女の子って、それらで出来てる。


「男と女で差がひどくない?」と桑原くんは、文字を私よりも短い人差し指でなぞりながら笑顔でこちらに向って話してきた。

私だから特別に話したわけではなく、おそらく桑原くんは誰でも良かったのだろうこのとっておきの宝物を共有できるのならば。

だが私には今の私だから特別に話してくれたのではないか、そんな風に思えて仕方がなかった。

桑原くんの音読は私をやさしく抱きしめてくれた。生まれたばかりの子供を母親がやさしく抱くようにそこには極上の愛情と温かさある。おそらく今の私をこんな気持にしてくれるのは歴史に名を刻むような役者でも不可能だろう。

それぐら桑原くんの音読は極上の代物だった。

「差があまりにもひどいね。」私は目に涙が浮かべている。

桑原くんは戸惑っている。「えっ!! なんでどうして。」と周りをキョロキョロと見回している。

「ごめんね。大丈夫だから心配しないで。」

「本当に大丈夫かよ。保健室行く?」

「本当に大丈夫だから。心配しないで。」

「それならいいんだけど。」

「桑原くんは優しいね。」

「普通、急に泣き出したら優しくするだろ。」

「そうだね。でもすごく嬉しいよ。」

桑原くんは照れているのを、私にばれないように下を向いている。

「差があまりにもひどいっていう話だよね。」私は桑原くんとの時間を、1分1秒でも無駄にしたくなくて無理やり話しを戻した。

「そうだよ。砂糖やスパイスや素敵なものぜんぶって、男にも少し分けてくれてもいいじゃん。」

「いやだ。一つたりともあげないよ。」

男の子と生まれておそらく初めてだろうこんなにふざけあった。

桑原くんは小さな体からだされる雰囲気に私はどんどん大胆になり本当の私がむき出しになっていく。

「伊藤ってこんな風にふざけるのな、以外だった。」

この言葉にドキッとした。私の中でこの人に嫌われたくないという気持ちが芽生えた。

女の子どうしでの仲間はずれにされたくない、嫌われたくないという気持ちとはまったく違った。男の子の場合はなんだかおかしいのだ。少しでもよく見られたい少しでも可愛く見られたいという気持ちが、私の神経を狂わせ体の動きをおかしくさせる。

桑葉くんとまともに目を合わすことができなり、言葉の一つ一つに神経をすり減し、力がはいる。

「桑原くんこそ昼休みに図書室で読書する人だとは思わなかった。」

「俺、頭悪いからね。」

「いや、そういうふうじゃないくて。」

「いいよ。だってそういふうに思って当然だもん。」

また失言をしてしまった。桑原くんは私の事を、性格の悪い女子と思い嫌われただろうか、

もう私の頭の中は桑原くんからどう思われているか、さっきの言葉で傷をつけてないだろうかと、桑原くんの事でいっぱいになっていく、今までの学んだ知識や記憶が桑原くんのためのスペースを開けるために耳の穴や毛穴からこぼれ落ちていく。

キンコーン!! カンコーン!! 

昼休みの終了の五分前に鳴る予鈴が、図書室に響く。

魔法のような時間の終了の合図とともに、拷問開始の五分前の合図だ。

「伊藤、保健室行かない。」

「えっ!! もう大丈夫だよ。泣いてないよ。」

「お腹が痛くなってきちゃった。保健室に連れて行ってくれない?」

「わかった。一緒に行こう。」

一緒に保健室に行くと。保険の先生はいなくて、桑原くんは白いベッドに横になり、私はベッド近くのパイプ椅子に座った。

「伊藤さぁ、いじめられている事を先生に言わないの?」

桑原くんの言葉に、私は雷に打たれるような衝撃を受けた。

「なんで、知っているの?」

「今日、学校に来ると机の中に、伊藤を無視をしろっていう紙が入っていた。」

「そうなんだ。」

やった犯人はわかっていた。

こういう女の子をいじめる時の首謀者は大原さんで、手口もこういう紙が登校した時に机に入っていた。

その時に書かれていたのは別の女の子で元々ほとんど話したことがない子だが、私は通達通りの無視を行った。

「大原の字だった。」

「なんで、わかるの?」

「俺んちの隣だから大原の家。小さい頃からよく知ってるんだ。」

「そうなんだ。」

「犯人を知っているのに先生に報告しないの?」

「できないよ。だって前回のいじめに加担しちゃったから・・」

「関係ないよ。伊藤は今いじめられているんだよ。それにあの子とは普通の学校生活でもほとんど話さないだろ。無視と元々話さないのは一緒じゃないよ。」

「でも、できないの。」

「なんで、なんでだよ。なんで言えないんだよ。」

ガー!! ドン!!

保健室の引き戸式のドアが開いた。この保健室での小柄な二人の作戦会議に終了を告げる音のように聞こえる。

「何してるの!! ここは具合の悪い人が来る所よ。」

保健の先生が戻ってきた。

「すいません。お腹が痛くて、でも先生がいないからベッドで横になってました。伊藤さんは僕の付き添いで来ました。」

「そう、わかったわ。もう元気そうね。」

「はい、しばらく横になったら楽になりました。」

「それは、よかった。じゃあ早く戻りなさい。」

「わかりました。」

先生から報告書をもらい、教室に戻るまでの道中は一言も話さなかった。

桑原くんは何度も報告書を見て居心地が悪そうにしていたが、私は見慣れている白い廊下を見ながら教室にはつかずにずっと廊下が続いていればなんて思っていた。

教室に戻ると私達は周りの注目を一気に浴びた。だが戦争の英雄やスポーツのスパースターのような注目ではなく、見世物小屋や水族館の端にいる深海魚にむけられる珍奇さや禍々しいモノを見るよな注目を浴びた。

そんな最悪の視線のレーザービームを浴びせられているのに、桑原くんはいつもどおりに振る舞っている。

先生に保健の先生の書いた報告書を渡して、そのまま席についた。

私は下を向いたまま席について、机に入っている黒い侮辱的な字でモザイクのかかった教科書を机の上に出した。

桑原くんはおそらくこれから私のようにクラス全員からの制裁を受けるのだろう、だが私の制裁が終わるわけではない。

ただ一つ心境の変化が私には起こっていた。

桑原くんと会話をした事で、この空間に私の唯一受け入れてくれるスペースをができたことによる恐怖と緊張でパンクしそうな心に小さいが余裕をつくりだした。

今日の授業が終り、ランドセルをいつもどおりに背負うって帰ろうとすると、いつもならば男の子が馬鹿にしてくるの今日は当たり前だがない、おそらくこれからずっと訪れる事はないだろう、おそらくいじめられて唯一よかったことだろう。

もう一度だけ図書室に行った。

何故だかわからないが、校門ではなく図書室に行きたいと体が勝手に動いた。

図書室は夕日の色をそのまま取り込んだのかと思うくらい室内全体が美しく温かみのある朱色で昼休みとは違った顔で私を迎い入れてくれた。

桑原くんと読んだ本を持ってきて、今日の会話で主役になった言葉の書かれたページだけを何度も読み返した。

文字を指でなぞりながら桑原くんとの会話の思い出や余韻を楽しみながら、何度も読み返すただそれだけで今日の前半に起きなた災難は、たんぽぽの綿毛のようにどこかに吹き飛んでしまった。

しばらくすると図書室のドアが開く、そこには担任の先生と桑原くんがいた。

「伊藤さん、ちょっといい。」と担任の先生が手招きをしながら呼んだ。

「なんですか?」

「大事な話があるの。」先生は真剣な顔で私の目線に合わせて言った。

「わかりました。」

そのまま教室に連れて行れたかた。

少し前までは学校が終わり、興奮を抑えられない子どもたちで賑わっていた。教室にはもう誰一人いない状況で、ゴーストタウンのような静けさや寂しさが醸していた。

教室では三つの机をつなげて、私の前には先生が座り、私の横には桑原くんが座り三者面談が始まった。

「桑原くんから聞いたんだけど、いじめられているというのは本当なの?」

先生はなんの躊躇もなく、いじめのことを聞いてきて私は動揺して先生から目をそらしてしまった。

これでは、いじめられてますと言っているようなもので、先生は「そうなのね。」渋い顔おしながら言った。

「具体的にどんな事をされたか教えてくれない。」

先生の問いに対して言うのを渋っていると、横にいる桑原くんが「無視と教科書に落書きされています。」とハキハキとした口調で私の代わりに先生の質問に完璧に答えた。

「それは本当なの伊藤さん。」先生は深刻な表情をして、目を強引に合わせてきた。

「はい・・そうです。」

私は決心がついた。桑原くんという頼りになる存在が、隣にいることで私は先生にいじめの事実を言う方向に舵をきった。

私はランドセルから教科書を出して、先生にいじめの傷跡を見せつけた。

「これは、ひどいわね。一体誰がこんなことを・・・」

先生は口元に手をあてながらあ然とした表情で一つ一つ大事に見た。

「それと今日の朝来たら、この紙が入ってました。」と桑原くんがいじめの開始を知らせる紙をダメ押しという感じでランドセルから出した。

「えっ・・・」先生は立て続けに出された、いじめがあった事実を知らせる証拠品が出てきて戸惑いはじめていた。

「この紙の字は、間違いなく大原が書いたものです。」

桑原くんは戸惑いを隠せない先生をお構いなしに、話しを進めていく。

そんな桑原くんが少しづつ怖く感じた。

「なんで大原さんの筆跡ってわかるの?」

「大原とは家が隣で、小さい頃からよく一緒にいたからわかるんです。もしも信用ができないのなら大原のノートを回収して確かめてください。」

「桑原くんそういう事はやめましょう。あまりいいことではないわ。」

「いじめを企むような奴ですよ。なんなら大原の字の癖教えましょうか?」

「桑原くんやめましょう。」

「なんで、悪いのは大原なんですよ。先生!!」

「桑原くんそういう犯人探しは、先生したくないな。」

「先生はいじめられてないもんね。」

「桑原くん、そういう口の聞き方やめましょう。」

「もういいよ。やっぱり先生はあてにならない。」

私は先生と桑原くんのやり取りの中で、桑原くんの表情、口調、目つきが図書室であったような温かみのあるものから激変していくのに恐ろしさを感じていた。

「先生、いじめの犯人探しをしなくていいので、このようないじめがおこっているという注意だけしてもらえないでしょうか?」

私はこの三者面談を早く終わらせたかった。

私よりも小さい体の中にいる、普段は眠っている化物の姿が完全に顕になるのを見たくなかった。

「そうね。先生も伊藤さんの意見に賛成だわ。」

「ダメだ。それじゃダメなんだ。」

冷たい言葉が先生と私の間を遮った。

横を見ると、ギラギラとなにかに取り憑かれているような目をした桑原くんが、先生を睨みつけている。

「桑原くん、もういいよ。」

「伊藤は優しすぎるんだ。こんだけひどいことを大原はしてきたんだぞ。伊藤にもそして他の子にもだ。」

「どうしたの桑原くんさっきからおかしいよ。」

「おかしくなんてなってない。あたりまえの事を述べているだけだ。」

「おかしいよ。もう今日はこれで終わりにしよう。先生もう帰ってもいいですよね。」

「えぇ、今日はもう終わりにしましょう。」

「みんな優しすぎるんだ。伊藤へのいじめはなくなっても、対象者が変わるだけで大原はしばらくしたらいじめは再開する。前回もそうだった。いじめられた子が不登校になって注意したのに大原は、しばらくおとなしくして頃合いを見ていじめを再開させた。」

「でもいくら注意喚起をしてもいじめが終わらないならどうするの?」

桑原くんは少し右の唇だけを上げてニヤリとして、口を開いた。

「帰りの会でみんなが揃っている状態で、先生が大原に直接いじめについて指摘をしてください。

そうしたら、大原を良く思っていない男子数人が絶対に煽る。カースト上位から失脚寸前の大原を女子も黙ってい見ているわけがない。クラス全員で大原を吊るし上げるんです。」

「いい加減にしなさい桑原くん。今日はもう帰りなさい。」

桑原くんの壮大で恐ろしいプランを聞かさされ、私は唖然とし開いた口が塞がらない状態で、先生は憤慨し私も見たことのない目で桑原くんを睨みつけている。


帰りは途中まで桑原くんと方向が同じで、道中は無言が続き気まずい雰囲気が私と桑原くんを包む。

私の視界には、少し前を歩く桑原くん越しに見える、沈みそうな夕日がまるで禍々しい夜に飲み込まれまいと必死に抵抗しているような空を見ていた。

「ごめん伊藤。」桑原くんは立ち止まり、そして振り返って私にそういった。

桑原くんの言葉は気まずい雰囲気を一気を終わらせた。

「なんで謝るの桑原くんが手伝ってくれなければ、先生に相談することもなかったんだよ。」

「伊藤の意見を無視して、勝手に突っ走ってあげくの果てに大事な時間を終わらせてしまった。伊藤が勇気を振り絞って先生にいじめの事を話したのに、その勇気を俺は踏みにじってた。」

「桑原くんのおかげで勇気を振り絞れたし、桑原くんがいなければ先生に告げることや私自身の意見を先生に言うことができなかった。だから、謝らないで。」

「ありがとう。」そう言って桑原くんは、前を向きまた歩き始めようとした時、「なんで、そこまで大原さんにこだわるの、大原さんが幼馴染だから、それとも大原さんが嫌いだから、いやじゃなければ教えてほしい。」私は嫌われるだろうと覚悟をして、桑原くんにぶつけた。

「大原って、昔はあんなふうにひどいことをするような子じゃなかったんだ。」

桑原くんは、私に背をむけたまま図書室の時のような温かみのある口調で私に言った。

「昔のように戻ってほしいの?」

「わからない。ただ大原がいじめなんかに一生懸命になる姿を、見たくない。」

「桑原くんって、大原さんのこと好きでしょ?」

「えっ!! なんだよ。いま言う事じゃないだろ。」

桑原くんは動揺していた。図星だ。

この瞬間、私の初恋は美しいステンドグラスが割れるように音を立てて粉々に砕け散った。

今ならあの帰り道での大原さんの気持ちがわかる気がした。

「大原さんの事、好きなんだね。」

桑原くんは何かが吹っ切れたように、清々しい顔で話し始めた。

「大原が好きだよ。大原の良いところもたくさん知っている。だからこそいじめをしている大原を見るのが辛いんだ。」

「桑原くんの気持ちを正直に伝えたらどう?」

「そんなことできないよ。」

「なんで、そこまで思っているなら絶対に伝えたほうがいい。」

険しい表情をして、唇をかみながら桑原くんは、次に言う言葉を選んでいる。

時間が私を中心に動いているのでは無いかと思うような沈黙が流れた。

言うべき言わざるべきか、どちらの道を進むのがベストなのか、私に大事なことを打ち明けようと熟考していると思ったらこの沈黙が心地よく感じた。

真剣な顔をした桑原くんが、私の目を貫きそうな勢いで見て、重い口を開けた。

「今から2年前、大原の母ちゃんが交通事故で亡くなったんだ。そこから大原は気に入らないやついじめるようになった。」

私は金縛りにあっているのかと思うくらい、桑原くんの発せられた言葉に驚き、体は動かなくなった。

「大原が時々、怖くなる。大原の見えている景色だけちがう景色何じゃないって思う時がある。そんな大原を見ると直接伝える事ができない。」

桑原くんは少し泣きそうで、助けを求めるような表情で私を見た。

その表情に私はどんどん引き込まれた。

「なんでそこまで大原さんの事を思っているのに、クラス全員で吊るし上げるなんて恐ろしい方向性で行こうとしたの?」

「それが一番だと思ったんだ。自分がいかにひどいことをしてきたのか、バツを受ければわかるんじゃないかって思った。」

「それは違うよ。悪いことをしたから、同じようにバツを与えるのは違う。大原さんはまたひどく心を痛めるよきっと。そしたらもう桑原くんの好きな大原さんが消えちゃうかもしれないよ。」

「直接伝えたら、大原はいじめをやめてくれるかな。」

桑原くんは誰かの顔色を伺うように私に言った。

「そんな怖がらなで桑原くん。女の子は何でできてるか知っているでしょ。」

桑原くんは少しニヤッとして、頷き「やってみるよ。伊藤ほんとうにありがとう。」と言って走って行ってしまった。

小さな後ろ姿を残り少ない夕日の明るさが、背中押すように照らした。

翌日先生は私に宣言したとおりクラス全員に注意喚起をした。

その日はいじめはなく、昨日という日がなかったんじゃないかと思うくらい、先週のようないつもどおりの学校生活が戻った。

その日の夜に大原さんがお父さんさんと一緒に私の家に来た。お父さんはスーツ姿で手には菓子折りの入っている袋持っていた。

大原さんのお父さんが事情を説明し二人は謝った。

私の母は事実をを聞いて驚いて固まってしまった。

おろらくこの状況やいじめのあった事実を一生懸命処理しているのだろう。

私は大原さんと一対一で話したいといい大原さんと共にその場を抜け出して、家の近所の公園でブランコに台に座りながら話した。

夜の公園は静かで、ブランコの台はペアシートのように見え、ブランコは私達を待っていましたと言っているような気がした。

「本当にごめんなさい。」大原さんは下を向きながら私に言った。

「もういいよ謝らなくていいよ、私もいじめられるのが怖くて紙の忠告に従ったこともあるし。それに大原さん私にちょっかい出す男の子から守ってくれた事もあったから、大原さんの事、恨んでもないし怒ってもないよ。だから仲直りしよう。」

「ありがとう。優しいね里奈ちゃん。」と大原さんは少し涙混じりの声で私に言った。

「桑原くんになにか言われた?」

「えっ!!なんで知ってるの?」

大原さんは涙目を大きく広げて私をまじまじと見た。

「昨日、桑原くんがいじめられている私を助けてくれたんだ。そして大原さんの事いろいろと教えてもらった。」

「そうなんだ。昨日急に家に来て、すごい剣幕でもういじめをしるのをやめろって言われた。あんな表情いままで見たことなかったから、びっくりした。」

「そうなんだ。直接伝える事ができたんだ。」

私は安堵していると、大原さんは顔を覗き込みニヤニヤしながら「里奈ちゃん桑原くんの事好きでしょ。」と私の目を見ながら言った。

「桑原くんの事好きだよ。」

大原さんはおそらく私がこういった返しをするとは思わなかったのだろう、一瞬戸惑いながら、そして嬉しそうに「里奈ちゃんなんか変わったね。前ならそんな風に絶対に言わなかった。」私に話した。

「そうかな。だとしたら桑原くんが変えてくれたんだね。」

「アイツに好きって伝えたの?」

「まだ言ってない。でも絶対に伝える。手遅れになる前にね。」

「やっぱり里奈ちゃん変わったよ。でも手遅れって大袈裟じゃない。」

「だって桑原くん引っ越すから、来学期にはいないんだよ。」

「えっ!! そんなのアイツ一言も言ってなかったよ。」大原さんは驚き座っているブランコの台から落ちた。

「私も今日のお昼休みに図書室で聞いた。」

「そうなんだ。」

大原さんは放心状態だった。

大原さんの姿が、ブランコの台の下に脱ぎ捨てられた抜け殻のように見えた。

その後大原さんはゆっくりと立ち上がり「もう、戻ろっか。」と言って一緒に家に戻った。

家に戻った後、仲直りしたとお母さんと大原さんのお父さんに告げると、大原さんはお父さんと共に帰り、私は仕事から帰ってきたお父さんも加わり両親からいじめの事情聴取を受けることとなった。

大原さんはお父さんと一緒に、その後何日かかけていままでいじめた女の子の家に謝罪をし、ひきこりになった女の子達も学校に復帰しその後、大原さんはいじめをすることをなくなった。

桑原くんはその後大原さんになんで転校の事を教えてくれないんだと、ものすごく怒られたみたいで、私は桑原くんになんで教えちゃうんだと怒られた。

桑原くんの引っ越し前日に二人で話したいと告げ、長期休み中の学校図書室開放で開かれている図書室で会うことを決めた。

「大原さんいじめをしなくなってよかったね。」

「本当によかった。伊藤のおかげだよ。」

「桑原くんが大原さんを変えさせたんだよ。」

「伊藤がいなければ、絶対に無理だった。本当にありがとう。」

「大原さんに告白できたの?」

「昨日、告白したよ。結果は振られた。」

「そうなんだ。」

私はホッとした。体中の緊張が解かれ、なんでもできそうな気がした。

「転校の前日で申し訳ないんだけど、私ね桑原くんの事が好きなの、桑原くんが大原さんの事が好きなのわかっていたけど、どうしても伝えたのかった。」

桑原くんはどうやら考えているみたいで、この時間はとても長く感じ桑原くんの唇は永久に開かないのでは無いかと思うくらい、私の期待が私の体や感受性をおかしくさせた。

「気持ちは嬉しいけどごめんなさい。やっぱり俺、大原の事が好きなんだ。でも伊藤と話せてよかった。もっと早く伊藤と話せればよかったけど。」

桑原くんに振られて泣くのかなと思っていたが、私は笑顔だった。

それよりも体の中で虫がいるのだろうかと思うような体の違和感がなくなりスッキリとした気持ちで桑原くんと別れた。

翌日、桑原くんは朝この街を出ていった。


そんな昔の事を思い出しながら私は気づいたソファで寝ていて、気づいたら翌日の10時をまわっており、カーテンから透ける太陽の日差しが昨日の服装ままのだらしない私に喝を入れる。

昨日からつけっぱなしのテレビからはまた化粧品CMが流れる。

だがそこに写っているのは人気のモデルではなく、昔の私の姿だ。

女の子ってなんでできてる?

砂糖やスパイスや素敵なものぜんぶ。

昔の私は精悍な顔つきで、今のだらしない私にぶつけてきた。

私は目をつぶり、その言葉をゆっくりと咀嚼をして体に入れた。

私の体は息を吹き返すような気持ちになった。

目を開けるともう昔の私の姿は消えていた。

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