日々
仕事終わり、電車の中はすでに満員だった。
座席にも座れず、つり革に掴まり、揺られながら名も知らない赤の他人とぶつかる。
舌打ちが聞こえた。
こんなことで怒んなよ。俺は内心舌打ちする。
体じゅうにべっとりと汗が染み付いて気持ちが悪い。早く帰ってさっとシャワーで洗い流したい。
シャワーを浴びた後はご飯にしよう。
今日のご飯は何にしようか.... 作る気力もたいしてわかないし昨日の余りもんでいいか。
仕事終わりの帰宅はいつもそんなことばかりを考える。相変わらずの日々だ。嫌になる。
何か他のことを考えよう! そうだな.... なかなか思いつかない。
今日のテレビは何がやるんだっけ。いやいや、それじゃまたいつもと同じじゃないか。もっと他のことを考えよう。
そうだテレビといえば今日の朝、宝くじの事が特集されていた。当たればなんと七億もらえるとか....
七億かあったら何に使うか。
そうだな、うん家を買おう。今はボロいアパートで一人暮らしだし。自分の家を持ってみたい。うん家だな。
他には旅行だな。アメリカとかスペインとか海外旅行に行くかな。
あと豪華なフランス料理とか食ってみたい。フォアグラとかキャビアとか、テレビでよく美味しいといわれてるけど実際のところどうなんだろ。
他には....
「次は~駅、~駅でございます」
電車が目的の駅に止まる。現実逃避を打ち消すかのようにドアが開き、電車を降りる人波に巻き込まれた。
電車から降り、徒歩十分。マイアパート『優雅荘』へと帰宅。
錆びた階段を昇りながら、所々ヒビが見える壁に目を通す。
優雅という名前なのにボロいとはこれいかに。
「いつかは引っ越して、本当に優雅な家に済みたいもんだ」
まぁ無理だろうなと苦笑し、ポケットから鍵を取りだす。
ドアを開け、
「ただいま~」
返事は返ってこない。うんまぁ、一人暮らしだし当たり前か。
それよりも、風呂だ風呂。
俺は着ているスーツをてきとうに脱ぎ散らかし、浴室に入ってシャワーを出す。
スッキリしない。シャワーの調子が悪く少しずつしかお湯がでないのだ。
体を洗い流すにもいちいち時間がかかる。
「まぁ、馴れたけどさ」
しかし、たまにはサーと洗い流したい、そっちの方がさっぱりするというものだ。
スッキリとしない風呂からあがり、俺は髪をタオルで乾かしつつ、冷蔵庫の中を確認する。
中には昨日の自分お手製の焼きうどんが残っていた。
今日はこれを食べるか。
冷蔵庫から取りだし、それを電子レンジに放り込む。ぐるぐると回るターンテーブルを眺めながら、することもなく俺は呆けて待った。
暫く経ってからチーンと鳴り、取り出す。
「いただきます」
我ながら綺麗に包んだラップを取ると、湯気が昇る。
一口頬張ると、なんとも可もなく不可もない味だった。
玉ねぎをしゃきしゃきと噛みながら、リモコンを手に取りテレビをつける。
女性アナウンサーが今日あった出来事を興奮気味で語っていた。
「ニュースか変えよ」
音楽番組が映る。
最近音楽聞いてないんだよなー このアーティスト誰だよ。チャンネルをかえる。
CMで度々流れていたバラエティー番組がやっていた。
今日放送だったのか。お、この芸人知ってる。ハハ、面白いなーやっぱ。チャンネルをかえる。
教育テレビ。チャンネルをかえる。再びバラエティー番組。チャンネルをかえる。ドキュメンタリー。興味なし。チャンネルをかえる。
「.... なんだよ。どれもこれもつまんねー」
テレビをけしたことにより部屋に静寂が訪れる。暗い画面に俺の顔が情けなく映っていた。
何やってんだ俺。何が七億円あったらだよ。現実はこんななのに。
シャワー浴びて、飯食って、テレビ見て、寝て、また明日仕事にいって、終わったら帰って。
「ハハハ、なんの充実もしない人生だな」
.... 寝るか。テレビを見ても面白くないし。
「よっ」
おもいっきりベッドにダイブする。寝るときはいつもダイブする。そのせいか、ベットの脚がぐらつきつつある。
今度からやめよ。これ高かったし。
一息つき、目を閉じる。暗い視界の中嫌でも今日のことを思い出してしまう。
あ~今日もまた怒られたな。部長の他に佐藤さんまで怒らせたし。
「何してんだよ俺.... 」
まぁ、明日にはどうにかなってるだろ。もう寝よ。明日もどうせ同じ日だし。
とっとと今日を終わらせよ。