4年前
「あ、ねこ」
黒くてふわふわな毛、丸くて金色の目、シュッとした体。
「かわいいわ…」
私は道端で猫を拾いました。今まで見た中で一番かわいい猫で、でも
「…たぶん誰かのペットね」
猫の首には首輪。飼い主がいる証拠です。心優しい悪魔を目指す、この私、コディアは、飼い主さんを見つけてあげ…るわけないでしょ!!バッカじゃないの?こんなカワイイ子、もらってくしかないじゃない!ふんっ悪魔なんてみんなそんなもんよ。逃がしちゃった飼い主が悪いんだわ。
「今日からあなたはワタシのペット。ワタシの名前からとって…そうねアディーナにしましょう。」
首輪をとって、猫を抱きなおす。暗い路地から飛び立とうとすると、後ろから誰かが声をかけた。
「それ、私の子」
飼い主かしら…金色の目、黒くて腰のあたりまで伸びたさらさらのきれいな髪…なんだ、天から落ちたばっかの天使じゃない。こいつにこのかわいいねこちゃんはふさわしくないわ。
「これはワタシがもらってくの。もうあんたのものじゃないわ」
ワタシもだけど、悪魔はみんな天使が大っ嫌い。この子が元天使だっていうのは、周りの雰囲気を見ればわかる。もともと周りの空気を澄んだ空気に換えるはずだったのが、黒い空気まき散らしてるんだもの。この子の周り、真っ黒だわ…天使の国で、いったい何をやらかしたのやら。
「ぶっ飛ばしてあげる」
両手に魔力をともす。まだ落ちたばっかりの堕天使にこれが防げるはずがない。あいつが反抗的な目で私を見る。ああ!おかしくてわらっちゃいそうだわ!強いのはワタシなんだから!
「あははは!死になさいよ!」
魔力を一気に放出する。最後までうざったらしい目をしていたあいつは、そのまま五メートルくらい吹っ飛んだ。
「まあ、いい気味」
高らかに笑いながら、ワタシはアディ―ナを抱きかかえて空へと飛び立った。
―――
地面にたたきつけられた私は、ゆっくりと起き上がった。おなかいたい…っていうかすずが連れてかれちゃった。
「もうやだ…なんで逃がしちゃったんだろう」
すずは一年前に家の前で拾った猫だ。おっきなおめめが鈴みたいで、この名前を付けた。
もう戻ってこないだろうと、諦めのため息をつきつつ、バックの中を確認する。
「お金は盗られてないな」
この前は男の悪魔に散々殴られたあと、お金を…くっそ悪魔がっ!ああもう怒りしか沸いてこない。絶対あの悪魔、いつか殺してやる!あとあの私の人生狂わせたあの天使のくせして嘘つきな野郎も!すずを取っていきやがったさっきのバカっぽい女も!
「絶対強くなって…絶対みんな後悔させてやる」
自然に顔が笑う。心の中の黒い感情が沸き上がり、周りの空気が黒に染まるのがわかる。ふと目に映ったガラスに反射した私の顔は、悪魔より真っ黒な笑みを浮かべていた。
氷華です。もう少しこっちの世界が続きます。
月夜さんは次から出てくる予定です。