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結衣と月夜と不思議な四つの世界  作者: 氷華 桜梨
3/51

4年前

「あ、ねこ」


黒くてふわふわな毛、丸くて金色の目、シュッとした体。


「かわいいわ…」


私は道端で猫を拾いました。今まで見た中で一番かわいい猫で、でも


「…たぶん誰かのペットね」


猫の首には首輪。飼い主がいる証拠です。心優しい悪魔を目指す、この私、コディアは、飼い主さんを見つけてあげ…るわけないでしょ!!バッカじゃないの?こんなカワイイ子、もらってくしかないじゃない!ふんっ悪魔なんてみんなそんなもんよ。逃がしちゃった飼い主が悪いんだわ。


「今日からあなたはワタシのペット。ワタシの名前からとって…そうねアディーナにしましょう。」


首輪をとって、猫を抱きなおす。暗い路地から飛び立とうとすると、後ろから誰かが声をかけた。


「それ、私の子」


飼い主かしら…金色の目、黒くて腰のあたりまで伸びたさらさらのきれいな髪…なんだ、天から落ちたばっかの天使じゃない。こいつにこのかわいいねこちゃんはふさわしくないわ。


「これはワタシがもらってくの。もうあんたのものじゃないわ」


ワタシもだけど、悪魔はみんな天使が大っ嫌い。この子が元天使だっていうのは、周りの雰囲気を見ればわかる。もともと周りの空気を澄んだ空気に換えるはずだったのが、黒い空気まき散らしてるんだもの。この子の周り、真っ黒だわ…天使の国で、いったい何をやらかしたのやら。


「ぶっ飛ばしてあげる」


両手に魔力をともす。まだ落ちたばっかりの堕天使にこれが防げるはずがない。あいつが反抗的な目で私を見る。ああ!おかしくてわらっちゃいそうだわ!強いのはワタシなんだから!


「あははは!死になさいよ!」


魔力を一気に放出する。最後までうざったらしい目をしていたあいつは、そのまま五メートルくらい吹っ飛んだ。


「まあ、いい気味」


高らかに笑いながら、ワタシはアディ―ナを抱きかかえて空へと飛び立った。


―――


地面にたたきつけられた私は、ゆっくりと起き上がった。おなかいたい…っていうかすずが連れてかれちゃった。


「もうやだ…なんで逃がしちゃったんだろう」


すずは一年前に家の前で拾った猫だ。おっきなおめめが鈴みたいで、この名前を付けた。

もう戻ってこないだろうと、諦めのため息をつきつつ、バックの中を確認する。


「お金は盗られてないな」


この前は男の悪魔に散々殴られたあと、お金を…くっそ悪魔がっ!ああもう怒りしか沸いてこない。絶対あの悪魔、いつか殺してやる!あとあの私の人生狂わせたあの天使のくせして嘘つきな野郎も!すずを取っていきやがったさっきのバカっぽい女も!


「絶対強くなって…絶対みんな後悔させてやる」


自然に顔が笑う。心の中の黒い感情が沸き上がり、周りの空気が黒に染まるのがわかる。ふと目に映ったガラスに反射した私の顔は、悪魔より真っ黒な笑みを浮かべていた。


氷華です。もう少しこっちの世界が続きます。

月夜さんは次から出てくる予定です。

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