アリンコども
今日は十匹も踏んじゃった。だって集団で行動するんだもん。地上にいるのはやめてよね。
ごめん、実はさっき耐えられなくて座っちゃったんだ。だってずっと立ってるの辛いんだもん。三十匹は死んだかな。
今回は特別だよね。僕だってムッとすることくらいあるんだ。だってあいつら噛みついてくるんだ。こっちだってやり返せるんだからね。住処に大量の水を流し込んだから百匹以上は倒せたよ。
あれ、最近見ないな。おかしいな、と思ったら一匹いた。ちゃんと掘り起こして殺したよ。なんかスッキリ。
********
俺が最後の希望。死んでいった同胞達のため、何としても生き延びる。
地上は荒廃し、棲める余地など一切ない。そもそも他に棲む場所を探すことなど到底無理だ。あいつ、悪魔が闊歩している限り。
もう日の目を見ることなど一生ないかもしれない。だがほんの僅かな希望に縋り、今は耐え抜く。俺は絶対諦めない。
現在、地中奥深くに身を潜めている。これだけ潜れば大丈夫。皆が残してくれた食料の貯えもある。
突然辺りがグラついた。まあそれだけならよくあることだが、今度はいつものとは違っていた。重力が逆行するような感覚。何だ、何が起こっている?
そして目を突き刺すような強烈な光が射し込む。ああ、久しく浴びることのなかった太陽光だ。
ようやく景色が視覚できるようになる。すると、何かに太陽が遮られ、暗闇が訪れる。
俺は上空を見上げた。そしたら奴が、悪魔のような微笑みを湛えた巨大な顔が、目の前にあった。
逆光を受けて黒いが、元はベージュの肌。四肢や体躯同様、肌色の生物。
❝その見た目はまさに、この俺と酷似しているではないか❞
ただ、幼い子供のように見える。
「こいつが俺以外の人類を滅亡させたというのか! 許せない! 殺してやる!」
俺がそう叫ぶと、奴と俺との視線が合致した。直後、にたーっと笑った。まるで、自分より身分の低い人形を見るかのように。
奴は片手に持ち上げている俺を含めた塊を、勢いよく振りかぶった。次の瞬間、真下に降り下ろす。
マッハの風圧に押しつぶされながら、地面に叩きつけられた。