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051:砂漠の国2 【閑話】

2話で終わると思ったら終わりませんでした。

次話で完結して、アキラに戻ります。

 リュージ一行は、キャラバンを組んで砂漠の中心地点を目指す。

ポライト男爵にアイザックと部下二名、現地ガイドに『バカ旦那の会』と冒険者達だ。

既に何回か調査を行っているようで、砂漠を渡るのは問題なかった。

準備を済ませ夜中に出発し、星を見ながら、ラクダの歩みに添って移動をする。


「アイザックさま、初回は下見だと思うので同行されなくても大丈夫だと思うのですが」

「リュージ君、気遣ってくれたのかな? 私は元々外で活動することも多くてね。人の皮をかぶった魔物を相手にするより、自然を相手にした方が、気分が良いんだよ」

「だからと言って無理はしないでください。多分、この状況だと危険も多い事でしょう」

「ポライトさまは慎重ですね。私もそのような考え方をしていましたが、どうも嫌な予感が……」


 これから目指す目的地は、以前に人が住んでいた集落があったようだ。

そこで何らかの異変が起き、集落と外の村落と交流が少ないせいか、知らぬ間に廃墟になってしまったようだ。

噂によると、夜間に生者を求めてアンデットが出るという。

ただ、砂漠の中で長期間滞在する者も少ないので、眉唾ものの話だという噂が広がっていた。

この土地も女神信仰のエリアらしく、その廃墟になった村で祀られた物や危険な何かを聞いても、はっきりとした答えはでなかった。


 日が昇り、まだ動ける暑さの頃に現地に到着した。

辺り一面砂だらけだけど、現地ガイドからは「中心からそんなに逸れていないだろう」と言っていた。

ラクダから降りると、まずは砂の様子を探る。粒子はそんなに細かくはなく、降りた衝撃で砂が舞い上がる程でもなかった。

全員ラクダから降りると、こちらの様子を伺っている。


「よっし、じゃあ野営地を作りましょう。皆さん協力してくださいね」

「「「「はーい」」」」

まずは腰に下げた片手用の杖を掴むと、小声で詠唱しているフリをして水の魔法を唱える。

杖の先からチョロチョロ流れる水が砂に染みを作り、少しすると何事もないように消えていった。


「まあ、こんなもんだよね」

「リュージさん、俺達は何をしたらいいですか?」

「うん、まずは周囲の警戒をしてください。冒険者はそれが仕事ですから。ああ、後ギルマスから『こきつかってやってくれ』って言われているので、男性2名には後で力仕事があります」

「「わかりました」」

「後、目印を立てるので『バカ旦那』からは砂の整地をしてください。これも許可を取っているので」

「「ああ、任せとけ」」


 どうも、台詞が逆のような気がするけどスルーした。

冒険者の魔法使いの女性には要人の近くにいてもらい、協会からの癒し手の女性には前衛二人のサポートをお願いした。

まだ日が昇ったばかりなので、アンデットには注意しなくても大丈夫だと思うけど、サソリやヘビ・猛禽類等の凶暴な鳥がいたら注意が必要だと思う。

ポライト男爵が持っている収納には、作業道具一式が入っている。

今回はグラウンド等を整備するトンボを取り出し、割り振った人員で頑張ってもらう。


「アイザックさま、彼らは本当に大丈夫でしょうか?」

「何故そう思うのかね?」

「こんな、風が吹けば整地も何もかもなかった事になってしまうのに……。それとも、何も考えていないのでしょうか?」

「では、お前に尋ねよう。私達は何かアクションを起こしたかね? 拙速は遅行にも勝ると言う。私達は何をするにも遅すぎたのではないかな? ここは彼らから勉強させてもらうつもりで見守ろう」


 魔法使いの魔法使いたる所以、それは魔法を使える事……当たり前だ。

整地をしている人を避け、リュージの収納からは鉄筋棒が飛んでいく。

整地が終わった場所をリュージが歩くと、『バカ旦那』の面々が一瞬ムッとする。

普通に踏んだだけで足跡がついてしまう砂漠で、整地させた上にその場所を歩くなんて嫌がらせ以外の何物でもない。

ところが、リュージが踏んだ場所には足跡がつかず、不思議に思った『バカ旦那』の面々は地面が固まっている事に驚いていた。


「どんどん暑くなるよ、作業は出来れば午前中に終わるようにしたいからね。大変だけど頑張ってね」

「「うっす」」

「リュージさん、見回りましたが生物らしいものはいなさそうです」

「そう? じゃあ整地を手伝って貰えるかな?」

「「分かりました」」


 四隅に刺さった鉄筋棒は、決して倒れることはない。

これは通常儀式魔法と呼ばれるもので、本来なら魔法使いを何十人と集めてやるタイプの魔法だけど、一人で出来るため多くの人数を必要としないものだった。整地を頑張っている間に、リュージは少しだけ離れて小さめの範囲に鉄筋棒を飛ばした。

こちらは特に整地をする必要もなさそうなので、先にこちらの魔法を済ます事にする。


 リュージが小さい方のエリアに温室と唱えると、乳白色の壁が鉄筋棒と鉄筋棒を結ぶ線上に競りあがってくる。

小さい方のエリアと言っても、ラクダを繋ぐ小屋として作り、中に三角と三角を結ぶ鉄製のポールを収納から出し設置する。

「何だ……、この魔法は……」

「アイザックさま、そしてみなさま。ここで見たリュージ君の魔法は、ここにいるメンバーだけの秘密でお願いします」

「秘密って、建物が出たんだぞ。いや、秘密にするのは了承しよう。私の部下やガイドにも徹底しよう。ただ、これは何がどうなっているのか教えて欲しい」


「すいません、一先ずラクダを中にお願いします」

「あ、あぁ、すまない。初めて見る魔法に驚いて……。何だこの快適な温度は……」

「これでも若干暑めで設定しているのですが……」

「そうか、居住施設を作る魔法で乗り切るんだな」

「いえ、これはあくまでシールドやプロテクションという防御魔法の応用です。多分、自分にしか出来ませんが」

「ふむ、とりあえずラクダを繋ごう。そうなると今整地しているのが、このメンバーの居住スペースだな」

「そうですね、とりあえずベースキャンプとでも考えてください」


 ラクダを全部繋ぎ終えると、水と干草をドンと置く。

ガイドとアイザックの部下が協力して、ラクダの世話をしてくれていた。

アイザックからは、ラクダの提供や簡易設置型のテントっぽい物も用意してくれた。ポライト男爵が収納持ちということで、多くの荷物を持つことが出来た。勿論、自分も収納を持っているけど、出発前にはそこに言及はしていない。


 あちらの整地も終わったので、もう一回温室の魔法を唱えた。

ベースキャンプが出来上がると、ポライト男爵と一緒に収納から次々と必要な物を出していく。

最初に寝るスペースを確保すると、次に『バカ旦那』の4人が作業スペースを設ける。

今回は仲の良い4人のようで、でっかい木製のテーブルに6つの椅子を置いて、小さな黒板を4つに大きな黒板を1つ設置する。

水瓶をどんと設置すると、アイザックに居心地を確認した。


「とりあえず仮の施設です。問題が解決したら撤去しますので」

「そ、それはもったいない。君だったらこの施設を増やす事も出来るだろう?」

「これは魔力が尽きたら消えてしまいますよ。大量の紫水晶でも準備出来れば……」

「よし、任せてくれ。必要な数量を準備しよう」

「申し訳ありません、言い方が悪かったようです。これでは根本的な解決に繋がりません。こんな砂漠の真ん中に、家が一軒や二軒あってもどうにもならないかと……」


 外気を遮り、室内は適度な湿度と若干高めの温度に保たれていた。

日が差し込む事はなく、空気の循環があるこの魔法は、室内で火を使っても苦しくなるような事もない。

リュージが踏み固めた地面は水平に保たれていて、砂に埋もれる事もないようだった。


 冒険者の4名は壁の強度を確認していたので、前衛で一人だけなら壁に攻撃しても良いと伝えてある。

「止めとけ」と静止するリーダーを一瞬見たもう一人の男性は、リュージを見るとウォーハンマーをすらりと構え、振りかぶって銅鑼を鳴らすようにドーンと壁に撃ち付けた……が、叩いた手が痺れているようだった。


「さて、リュージ君。こちらは私が対応しよう、少し休ませてもらうよ」

「はい、ポライトさま。少し騒がしくなりますが、お茶でも楽しんでいてください」

ポライトが適当な場所を見つけ、テーブルと椅子をセッティングしていく。

すると、リュージがお茶の道具を出し、年代物のお湯が出る魔道具の水筒を取り出した。


『バカ旦那』から魔道具職人のエントの弟子である女性と、冒険者から魔法使いの女性が外に出る。

「二人とも何か気がついた事や、こうしたらどうかな? っていう意見はあるかな?」

「そうですね、まずは異変の調査でしょうか?」

「魔道具職人の観点から言えば噴水でしょうか? とにかく水が必要だと思います」

「二人とも良い意見だね。じゃあ、まずは下がどうなっているか確認してみようか?」


 魔法使いに得意な魔法を聞いてみると、どうやら風属性魔法使いだった。

王国では土や水属性魔法使いが多いようだけど、宮廷魔術師団にいるメフィーという風使いやフレアという火使いもいる。

フレアはまあ……、頑張れとしか言いようがない。


 少し離れて周囲を確認すると、魔法使いが全魔力を使い果たすくらいの竜巻の魔法を放った。

小さなつむじ風が砂を軽く巻き上げると、どんどん回転数が上がっていく。

すぐ下の砂を抉るように、周囲の砂を巻き込みながら勢いは増していった。


「どうして、リュージさんの周りは無風状態なんですか?」

「それは、魔法使いだからね」

「さすが、伝説の特待生です」

「褒めても何も出ないよ。報酬は出るけどね」


「みんな、この支援団体に参加出来るのを楽しみにしているんです。少しでも何かを学べて、報酬も評価も高いって」

「あー、それわかる。私もエントさんに勉強させてもらえって言われました」

「お喋りはそのくらいで、そろそろ竜巻が消えるよ」


 巻き上げた砂は、キラキラ光を反射しながら落ちてくる。

ただ、大きく抉れた地面の下は何の痕跡もなく、精霊力というか魔力の偏りとは聞いていたけれど、異常や異変といった物ではなさそうだ。この広い砂漠を感だけで掘る訳にもいかないので、対処療法にするのがベターだと思う。

すると、先ほど出た噴水という案が濃厚になる。


「じゃあ、噴水っぽい方向で考えようか」

「力仕事もありますか?」

「そうだね。今のところ暇させちゃっても悪いから、それぞれから交代でお願いしようかな。護衛がいるかどうかは、ポライトさまに確認してね」


 二人が一旦ベースキャンプに戻ると、それぞれ仲間を連れてくる。

アイザックに同行している部下もいるので、護衛は必要がないそうだ。

リュージはスコップやシャベルを収納から出すと地面に並べる。

さっき抉れた場所を中心に、砂や土の層が変わる地点まで掘って調べてもらう事にした。


 砂を掘る作業は、アリ地獄を作る作業に似ている。

すり鉢状になっている場所を掘るのは大変な労力が必要で、基本的に掘っても掘ってもキリがない。

魔法使いによって大分砂の層は削れているので、リュージは水を撒きながら、これ以上雪崩れ込まない位置を作っていく。

そこから砂の壁を魔法で作り、四方を囲っていった。


 横2m四方、高さ3mくらい掘れただろうか?

ポライトとアイザックが一旦外の様子を見に来た時には、砂漠の真ん中にぽっかりと空間が出来ていた。

「これは深いというか、浅いというか判断に悩むところだな」

「この位の砂の量なら、掘り広げていけば何とか出来ない事もないですね」

「アイザックさま。この場所に植樹をしたいのですが、宜しいでしょうか?」

「ああ、構わない。というか、そんな事出来るのかい? ここに植えても砂に埋もれ水もないだろう」

「今のままではそうですね。ただ、少しやってみたい事があるのです」

「それなら私の責任に於いて、君達に任せることにしよう。なーに、もう失う物もない土地だ、思うようにやって欲しい」


 アイザックの許可が出たので、このまま進める事にした。

一つは温暖化対策として有効な二酸化炭素対策だ。

この現象が精霊力や魔力といわれる物の偏りだという事は分かるけど、火や風の勢いを削ぐのはこの土地にとって必ずしも良い事ではないと思う。要はバランスを整えればいいのだ。

日の光と水さえあれば、後は農場と一緒だ。樹は土を富ませ、土は樹を育てる。

陽に焼けない場所を作り、その樹を中心とした居住スペースを広げていけたら良いと思う。


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