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049:お買い物

 ハチドリ達は少なくなったら少なくなったなりに、編成を3班に変えていく。

そして、サラの発言により気がついた、1匹だけいる赤い鳥がリーダーかボスだと分かった。

黄色やピンクの個体もいて、夕焼けにより徐々に見分けがつかなくなっていく。

ただ今までじっくり見ることが出来たので、後は砂塵の魔法を使って団体を潰していくだけだった。


 足止めとして優秀だった砂塵の魔法が、このボス戦に合致した。

チューリップ畑は次々にはげてしまったけど、最後の最後までスケアクロウは動くことはなかった。

何回か瀕死になったハチドリが、スケアクロウの枝に留まった時、若干元気を取り戻しているようにも見えたけど、こちらが戦線を上げていくと向こうも出るしかなく、段々一回の戦闘数が少なくなっていくと相手はジリ貧になっていた。


 高速で飛んでくるハチドリは、止まった場所から一直線に来るしかなく、段々慣れてきた前衛達は余裕で捌けるようになった。

最後は3匹のハチドリをグレファス・シーン・タップが落ち着いて仕留めると、スケアクロウとチューリップ畑は溶けるように消えていった。


「よっし、準備不足が分かった。このまま宿まで戻って仮眠しよう。昼から動き出すぞ」

「「「「「はい、タップさん」」」」」

タブレットで時間を確認すると、もうすぐ陽が落ちる頃だ。

順調にいけば、今日を越えるか越えないか位には戻れるはずだった。


 結局、赤いハチドリがボスだったようで、ボスが消えるとハチドリのくちばしのような物が5個ドロップした。

今の段階では、何がどう役に立つか分からないので収納に回収した。

部屋を出たその先には、階段の手前に高さ150cmくらいの青い石柱があった。

手前には魔法陣があり、多分これが釣り人から聞いたテレポーターだなと思う。


「これは……、どう使うんだ?」

「係員もいないし、普通の冒険者には使えないようにしているんじゃないでしょうか?」

「サラ・ルーシー・アキラ。何か分からないか?」


 サラとルーシーは不思議そうに見ているけど、属性魔法は基本的に魔法陣を使わない。

そして、何となく自分にはこの装置が、マークの魔法のような気がしてきた。

青い石柱に魔力を流すと魔法陣まで魔力が届き、この場所を覚える事が出来た。

それは今覚えている4箇所の他の、5箇所目の場所だった。


「まあ、後で職員に確認するぞ。戻るか」

「はい、安全第一で行きましょう」

「そうだな、シーン。なるべく避けていくぞ」

「はい、タップさん。戻ったら弓矢も買っていいですか?」

「ああ、必要な物を準備しよう。みんな宿に戻るまで気を抜くなよ」


 いったん11層に降りたら、すぐに上層へ戻る道を探す。

順調に上へ上へ戻ると、0時をちょっと越えた位の時間にダンジョンを出る事が出来た。

やっぱり下層に行くにしたがって無駄に空間が広く、からまれにくいので移動は早く出来るが、動きにくい地形で時間が取られてしまったようだ。7層より上でからまれたゴブリンは、段々おざなりな対応になって処理していく。


 無事に到着して宿に戻ると、それぞれ寝る事にした。

朝起きたらミーティングの後に買い物をするようで、明日は休みになりそうな感じだった。

長期戦を予定しているので、きちんと休息を取るのは必要だとタップが言っていた。


 自分に与えられた部屋では、タブレットをアクティブ化して出来る事がないか確認をする。

正直言って、今の自分は荷物が多く持てるだけの『お荷物』だった。

低層では前衛で戦っても良いと言われ、ゴブリンの処理をしたけど、これは自分じゃなくても出来るので訓練させて貰っているようなものだった。


 剣術は多分だけど、グレファスと同じくらいの実力だと思う。

ただ十代の数年の実力差というか経験差は大きいみたいで、やっぱり体格その他で一段も二段も低く見えてしまうのだろう。

怪我に対しては積極的に神聖魔法を使っていて、預かったポーションは確保出来ているけど、多方面との約束で前に出辛い状況でもあった。


 タブレットでスキルを確認してみると、新たに取得したスキルはなかった。

その代わりと言ってはなんだけど、レベルが3上がって8になったので、スキルに割り振れるポイントが合計4になっていた。

ここで時空間魔法を丁度上げられるポイントになったけど、前におっさんから受けたアドバイスで特化型になると反動が大きくなると脅かされたので、別の方針を立てようと思う。


 一つは剣術を2から3に上げて、前衛としてシーンと並ぶ事だった。

これは当然危ないので却下されるだろう。そもそもレベルが2でも、十分強いはずなのだ。

別のアプローチとしては、神聖魔法を1から2に上げるか、召喚魔法を1から2に上げる事だ。

魔法はレベルが上がると、今まで出来なかった事が出来るようになるし、使用するMPが格段に下がる。

現状、時空間魔法は使えないし、召喚魔法は役に立ってないので、自分が頑張れる方向性として神聖魔法を2レベルに上げた。

使えるポイントは2ポイントあるけれど、ここで自分個人の為の強さを上げても仕方がないのでここで止めることにした。


 翌朝目覚めると、ちょっと早い程度の朝だった。

十分な休息は取れたし、下の食堂へ行くともうみんな食事をしていた。

このまま食事をしながらミーティングをして、それぞれ希望の行動を取るようだ。

軽めの食事をしながら、昨日の足りていない点をみんなで発表し合う。


 まずは遠距離攻撃手段の乏しさが指摘された。

グレファスはパーティーの盾を担うため、最前線で接敵するので今回頼んでいたタワーシールドをボス戦で使うことになる。

そして、グレファスに並ぶ前衛要員として、中近距離の攻撃が出来るシーンの槍は必須だった。

今回頼んでいるトライデントも無事届いたみたいだった。


 マジックユーザーとして、阻害魔法を得意とするサラとルーシーのポジションは現状維持だ。

タップはルーシーに攻撃系魔法を覚えて欲しいと言ったが、新しい魔法を覚えるのは一朝一夕で出来ることではないと思う。

そうなると、タップと自分が遠隔攻撃手段を覚えると、パーティーとしての火力が上がると思う。

今日はダンジョン対策用の買い物をして、明日の早朝にまたダンジョンにもぐるようだ。


 シーンとサラとルーシーは冒険者ギルドにある訓練施設に行きたいと言い、残りのメンバーは買出しをすることにした。

二手に別れると、タップの案内で武器と防具の店に行った。


「グレファス、どうだ? そのタワーシールドは」

「はい、結構重くて長時間持つような盾ではないですが、ボス戦でなら強力な武器になると思います」

「そうか、期待しているぞ。そもそも『特待生』って事は、俺達『王国民』みんなが期待しているって事だからな」

「……初めて言われました」

「あの3人とも大分打ち解けられているようだしな。まだ学生の身分なんだ、遊べるうちは遊んでおけ。ただな、お前達の先輩は卒業する頃には素晴らしい人物になっていたぞ。負けないように頑張らないとな。俺達の同級生の、ヴァイスのように」


「タップさんから見て、ヴァイスさんってどんな人ですか?」

「まあ、一言で言えばメリハリのある奴だな。まさに騎士科にいるのが当たり前の堅物……ってイメージだったけど、周りがあのメンバーだろ? 女生徒からの人気もあって、知らない間に一人の女性とくっついて、そのまま結婚までこぎ着けたな」

「騎士科から近衛になって、家名が復活してもうすぐ領地を貰えるとも聞いています」

「領地の話は分からないな。ただ、特区の管理を任されているくらいだから、上からの信任も厚いだろう」


 ヴァイスとはGR農場にいた、リュージ・レン博士・ザクス博士が学園時代に特待生だった時の仲間らしい。

もう一人ティーナという名の冒険科の特待生もいて、今は世界各国を旅しているようだ。

特待生が多く集まる年は『当たり年』と言われ、文化や産業の発展もあるけれど、良い事の反動も多いようだった。

特に魔法使いであるリュージへのちょっかいで、廃嫡や断絶した貴族家は少なくなかったと言っていた。


 そんな中、卒業後に表立って活躍したのがレン・ザクス・ヴァイスだった。

リュージは共同経営者と言うべきガレリアとその周辺が徹底的に保護し、裏での評価は高いけど、その活躍はあまり表に出る事はなかった。

基本的に評価はガレリアにつき、農場はユーシスとナディア夫妻が頑張り、学院ではセルヴィスが責任者になっている。

各国を回る旅でも、外交で活躍するポライト男爵が間に入ってくれているお陰で、多少無茶をしてもなんとかなっているようだった。


 レンがジャガイモで王国と近隣諸国の飢えを救うと、ザクスは薬で病気から人々を救う。

これらもチームを作って活動したと二人が宣言した為、結果的には王国の評価が上がったが、人々は二人の功績を称えると共にその影の人物に感謝をしていた。


 そんな中、地道な経験を重ねていたのがヴァイスだった。

ある意味、一番自分の実力でのし上がったと言っても過言ではない。

ただ、特待生5人でいた時代の人々の繋がりが過分にあったことは否めなかった。


 そんな話をして歩くと、武器と防具を扱っている店に到着した。

グレファスのタワーシールドもここで購入したもので、宿の店主から紹介を受けた場所だった。

店に入る前にグレファスからタワーシールドを預かると、代わりに今まで使っていた盾を返却する。

グレファスの目的は盾の修繕だった。


 タップは店員に店主を呼んで貰うと、すぐに対応してくれた。

タワーシールドとトライデントの礼を言うと、グレファスの盾の修繕をお願いする。

今日中に何とか仕上げて宿に届けて貰う事が出来るようで、安心して自分とタップが扱える弓を選んで貰う。


「タップさんはこの長弓で良さそうだけど、アキラには大きすぎるんじゃないか?」

「やっぱりグレファスもそう思うか?」

「お客様、やはり短弓になさった方が宜しいかと」

「でも、短弓では攻撃力に難がありませんか?」

「まあ、なぁ……。ダメならシーンかルーシーに持たせればいいか」


 店主は、弦が引けるなら後はバランスだけと言うので、みんなの前で引いてみせる。

ステータスを見ても強さが分からないので見てはいないけど、最初にここに飛ばされた時の説明で変更前は一般的な大人のステータスは持っていたと記憶している。

その後はレベルも上がっているだろうし、大丈夫だと思い弦を引くと、あっさりするくらい簡単に引くことが出来た。


 タップと同じ長弓を購入すると、矢と矢筒も購入し矢筒の細工でベルトに通せるようになった。

二人で矢筒を装備していると、グレファスが弓をもって弦を引いている。

見ていて不器用そうなのが分かり、上手く引ける前にタップに回収されていた。


 武器や防具の他にも、この店は冒険に必要なものを結構置いているようだった。

目についたのはフック付ロープで、登攀の時や降下用に使えるらしい。

このフックは何種類かあるようで、ロープの種類も結構あった。


「タップさん、このロープとフックを使えば大型魚なら何とかなりませんか?」

「ああ、そうだな。ただ、餌はどうする? 確かに大型モンスターならドロップも悪くないと言っていたが」

「そこは疑似餌にしましょう。金物屋と生地屋さえ行けば何とかなりそうだと思います」

「他に必要だと思うものはあるか?」

「そうですね、これに使えるオモリと固定出来る何かがあれば」

「お客様、生地屋と金物屋は近くに御座います。オモリもこれをお使いになって貰えれば良いかと。固定は埋め込みポールというものがあってロープを通す事が出来ます」


 店主のお勧めで色々購入することが出来た。

疑似餌の製作は寝る前にささっと出来るので、一旦冒険者ギルドに行ってみんなと合流することにした。

タップは弓をあまり扱った事はないけど、冒険者の学園時代には普通に使えたらしい。

武器の一通りの指導も冒険者ギルドで教えて貰えるようなので、弓を実践レベルまで早く覚える為頑張ろうと思う。


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