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038:魔法のアレコレ

「へぇぇ、この魔法いいね。というか、何もない部屋なんだね」

「ええ、覚えたばかりの魔法ですが、何故か何をするにもお金を要求されるんです」

「なるほど。面白い魔法だけど、そういう制約があるのか」

「制約ってなんですか?」

「まずは魔法についてだけど、サリアル先生から何回か講義を受けただろう?」

「はい、魔法とは出来ることしか出来ない。イメージをするのは大切だと」

「そう、そしてその手段は使える魔法の系統に依存するんだ」


 水を出す魔法なら水属性魔法の分野だ。

その属性が使えない場合、違う手段でイメージしなければならない。

リュージは水属性魔法が使えるが、使えないザクスは植物属性魔法で『朝露』という魔法を覚えた。

大量の水は発生しなかったが、水を得るということには成功した。


 次にタンクからホースを使って、水を撒く姿を想像して欲しいと言われた。

この水を撒くという行動が『魔法を使う』であり、どれくらいの量をどのくらい出すというのが魔力量と出力を司るらしい。

そして、工夫するのがホースの先を潰して勢いを増す等のバリエーションだ。

先を潰したら導線に負荷がかかるかもしれない、出力の場所で無駄に零れる水が出るかもしれない。

それを上手く使えるのが魔法使いだけど、ストッパーとして機能しているのが制約でもあった。


 加護と制約は表裏一体である。

女神さまや精霊さまの優しさであり、限界を超えないようにもしくは限界を超えるように授けてくれているものだ。

その説明を受けて、「お金で買うこと」がどう負荷に繋がるか謎だったけど、深い考えがあるかもしれないと納得した。

「手持ちのお金で足りるかな? ちょっとこれで買えるか試してみてくれないかな?」

リュージから渡された50万円分の貨幣で買えるかどうか、タブレットを開き選べる商品群を見た。


「リュージさん、オーディオだけで10万円・20万円・50万円の物があります」

「うん、それは良いんだけど電気はどうするの?」

「それは月々の契約料金を払って……、そこにあるコンセントに挿します」

「契約料金とは面白いね。それと、ここに繋げると外で使えないんじゃないかな?」

「そこは別の時空間魔法で無理矢理繋げることが出来るんです」

「へぇぇ、便利だね」


「ちなみに、この部屋にはどんなものが置けるのかな? 多分、普通に部屋に置けるものが該当すると思うけど」

「そうですね。ソファーやベッドなどもあるようですし、システムキッチンやバスルーム関係も選べるようです。それと……あ」

「もしかして、グランドピアノとか見つけたとか」

「何で分かるんですか?」

「ビンゴだね」


 ピアノも三種類くらいあって、150万円・300万円・500万円だった。

「結構高いですね」

「うん、相場なんて分からないけど、その金額を言われても、そうなんだって金額だよね」

「どうしましょうか?」

「とりあえず、300万くらいが真ん中っぽいからそれで良いかな? 後、オーディオも真ん中のサイズでお願い。お金はきちんと用意しておくよ。ああ、それと電気代とかも必要だね。CDはクラシック系を集められたらそれで、可能ならば国内の民謡や祭りのものと海外のサンバとかの音楽もあるといいな」

「じゃあ、ピアノ以外はこの50万で全部使っちゃっても良いですか?」

「うん、報酬は渡した金額の倍くらいでいい?」

「いえ、お世話になっているので大丈夫です」

「いやいや、この殺風景な部屋を少し整えなよ」

「え、いいんですか?」

「報酬は報酬として貰いなさいって、よくガレリア先生に言われてるんだよ」


 ヘルプからおっさんを呼び出すと、大量に注文を出した。

50万が早速引き落とされると、ガス・水道・電気の3年分も併せて契約を更新してくれるらしい。

20万円のオーディオは選択するとすぐ置けるので、実質大量のCDを準備してもらうだけだった。

やっぱり大量に買うと、おっさんはサービスしてくれるらしい。


「処理が終わったので、オーディオだけは今出せそうです」

「へぇぇ、やっぱり便利だね」

「確認しますか?」

「うん、お願い」


 設定が終わると、目の前にオーディオが出現した。

最初に見たのがCDラジカセだったので無駄に大きく、スピーカーも何故か4台もあった。

ご丁寧にスピーカーを離して置けるように延長コードもついていて、若干クラシカルだなと思っていると何故かレコードプレイヤーも搭載されていた。CDとレコードプレイヤーがついているなんて、どの世代のオーディオなのだろうか?


「思っていたのと違うのが来たような……」

「へぇぇ、逆にこっちの方が高そうだけどね」

「これで大丈夫ですか?」

「うん、最初にダンスホールに置いて、落ち着いたら学院に移動しようかな」

「演奏者の方は大丈夫だと思いますか?」

「それはみんなの頑張り次第だね。学院の調整はガレリア先生がやってくれるから、こっちは馬車の改良か」


「何か手伝える事はありますか?」

「うーん、今後に期待したい事はあるかな? 時空間っていうくらいだから部屋の拡張とかも出来るかもしれないし」

「出来るんですか?」

「魔法の発現は人によって違うからね。この世界では基本的に魔法は創造から産まれるけど、君の場合は必ずしもそうではないみたいだしね。そういえば杖の感じはどうかな?」

「はい、サリアル先生のアドバイスで最小単位を細かく回数を増やすって感じでやっています。まだ、こちらの杖は……」

「指導方針はサリアル先生に任せているから、その辺は何も言わないよ」


 リュージが念入りにオーディオを調べている。

取り扱い説明書もついていたので、持って行ってもらうことにした。

オーディオについては納得しているようで、お金については明日準備するようだ。

今も持っていなくはないけれど、奥さんに相談しないといけないらしい。

念の為、宝石はお金としてカウントするか入れてみたら、宝石は宝石としか保管できなかった。


 ダンスホールでは、今日のアルバイト料もきちんとつけてくれることになった。

早上がりだけど、定時まで居た計算にしてくれた。

その分、オーディオの設置で協力して欲しいと依頼を受けた。


 男爵領に戻ると、ミーシャとロロンが二人で遊んでいて、顔を見せると早速誘われてしまった。

カード遊びだけど、しばらくチップとしてお菓子を賭けていたら、ソルトに叱られてしまった。

夕食に影響が出るほど、お茶やお菓子を食べたら叱られるのも仕方がない。

最近では王様ゲームのように、勝者が敗者に何かをお願いできるルールにした。

今日もうちの姫は髪を梳かすのがご所望らしく、勝つ為の努力をひそかに重ねている事をロロンから聞いていた。


 週末のアルバイトが終わると、スチュアートとレイシアに報告することにしている。

今日の出来事を話すと、ミューゼ男爵家の苦労を深いため息と共に共感していた。

オーディオとピアノの購入についても話してみたけど、ガレリアとリュージが関係しているなら問題ないと了承を得ることが出来た。

CDを数枚借りることが出来たので、明日は早速オーディオの設置に行こうと思う。


 翌日は兄弟4人で馬の訓練から始める。

行きは馬をひいてゆっくりウォーミングアップをして、帰りは二人乗りで帰ってくる。

その後はスチュアートによる剣術の訓練となった。

ミーシャも軽目の木剣を持つと、出来る範囲で素振りを始める。


 たった数ヶ月前の出来事なのに、今ではミーシャの体力は日に日に良くなっていた。

ミーシャとロロンはスチュアートとしか実践訓練はしていなく、ウォルフとの訓練は自分とすることが多い。

「ウォルフの剣戟は凄いね」と言うと、「何を言っているの?」というような顔をされた。

スチュアートから後でこっそり聞いた話では、自分の成長を見て触発されたようだ。

まだまだ追いつけないウォルフは、目指すべき兄でもあった。


 スチュアートが出掛けると、今度はレイシアの指導でダンスの訓練となる。

これが午前の大体のスケジュールで、たまに息抜きの時間を混ぜてくるあたり、親子関係が良好な印だと思った。

昼食を終えると、午後一番は学院へ講習を受けに行った。


 今日の講師はワァダで、【四大属性:水の性質】という講義を受けた。

色々な魔法講義を受けた中で印象的だったのが、魔法には攻撃的意思・防御的意思・特質的意思が存在するという事だ。

一般人が魔法をイメージすると、大抵ファイアーボールだとかブリザードのように、いかに相手を倒すかという所に意識が行くらしい。なので、魔法とは怖いものだとか危険なものというイメージが先行し、特に田舎にいくに従ってそのイメージは顕著になる。

逆に神聖魔法を考えるなら、そのイメージは防御や特質が多くなるらしい。

その固定概念を崩さない事には、幅広い魔法が使えないようだ。


 この十年で学園と学院は様々な協力関係を結び、独自の研究成果も講義に盛り込んでいった。

それがこの三つの意思についてだった。何でも出来る魔法とは、パソコンのOSみたいだとリュージが言っていた。

そして、その本来の性質について各属性魔法使いが意見を持ち寄り、宮廷魔術師団がまとめた結果、新たな講義に追加されたのだった。


 ワァダが水の性質について説明をしてくれた。

この世界の四大属性では固体・液体・気体・エネルギーを表すようで、もちろん水属性は液体を表していた。

それはどんな形にもはまり、高いところから低いところへ流れ、雨のようにランダムに落下する。

雨系の魔法や雲系の魔法もあり、雹なんかは固体だけど水属性に該当するらしい。

どの属性もそうだけど一つだけではなく、特性や性質が違う属性と重なる事もあるので、一概に水だから液体という訳でもないらしい。ザクスが覚えた水を得る魔法が、植物属性魔法の例もあるのだ。


 ワァダは説明をしている間、結構あわあわしながら講義を進めていた。

どうも視線がある一点で止まり、その瞬間目を逸らすようにしていた。

不思議に思いそちらを見ると、どうやらリュージも講義に参加しているようだった。

リュージがとても笑顔で講義を受けているので、「あぁ、元雇用主にプレッシャーを感じているんだな」と思った。


 この属性魔法は、特に目覚めというような感じで覚える事が多いようだ。

魔力を感じるまで行けば、魔法に目覚める者は多い。

そして、そのきっかけは火事に遇い偶然にも火傷を負わなかったとか、溺れた時に誰かに助けられたような気がするとかだった。

学園や学院では、魔力を感じた後は無属性魔法というものを習うことを推奨していた。


 主に魔道具を使う時に使う魔法で、比較的覚えるのも難しくないとサリアル先生は言っていた。

魔道具だけしか使えない人もいて、サリアル先生は着火という魔法でその才能を引き上げる事が出来るらしい。

着火と言っても、薪に火をつける魔法ではなく、火属性魔法でもないようだ。


 講義が終わるとリュージがやってきて、お金を400万円分渡してきた。

男爵家からCDを借りてきたので、オーディオは次の講義を受けたあと設置しに行くと伝えると、アデリアには伝えてあるので指示を受けて欲しいと言われた。

次はフレアという宮廷魔術師団の特別講師で、【四大属性:火の性質】という講義があったけど、擬音ばかりでさっぱり分からなかった。


 マスクを装着し、キッドとしてダンスホールへ向かう。

そう言えば、昨日はマスクをした状態でアキラ君とか言われていた気がする。

誰も気にしてなかったから考えないようにしよう。


 アデリア指示の元、侍女の方々に手伝ってもらって設置は無事に完了した。

設置が終わる頃ローラとレンも合流し、その後にはリュージもやってきた。

ワルツ用のCDを一枚入れると、リモコンをリュージに渡した。

コネクトと唱えると電源ケーブルの先が消失し、その代わりにオーディオの主電源が点灯した。


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