101:ただいま
「アキラ行くぞ」
「ウォルフ、一緒にね」
「「せーの」」
受付を済ませると、ウォルフと二人でジャンプしてアーノルド領に入った。
後ろの人の邪魔にならないように少し横にどくと、「やったー」と抱き合った。
三月後半に出発した旅が、もうすぐ七月を迎えようとしている。
衛兵さんも暖かい目でこちらを見ていて、結構長い間みんなと離れていたんだなと思った。
この時間ならスチュアートは仕事をしているし、ミーシャやロロンも新しい生活に慣れた頃だろう。
引っ越ししてから駆け足で王都へ行ったので、王都やアーノルド領の情報は浦島状態だった。
そんな自分達のもとに、アーノルド領の剣術の稽古で、若頭というべき存在のラトリがやってきた。
まだ若いのに衛兵の中では、そこそこのポジションにいるらしい。
「二人ともお帰り。じゃあ、早速勝負するか?」
「何でですか。ウォルフもやろうとしない」
「えー、旅の間は付き合ってくれたじゃん。今ならラトリさんと良い勝負出来ると思うんだよなぁ」
「お、言ったな。じゃあ……」
「サボってると報告しますよ。絶対しますよ」
「「アキラ……」」
スチュアートに報告が先と二人を説得すると、旅の延長のように歩いて仕事場まで向かった。
ウォルフは自分が学院で勉強している間、ここに通って仕事を覚えていたので、勝手知ったる場所だった。
すれ違う人に挨拶をしながら奥へ奥へと進むと、スチュアートの執務室に到着した。
「「ただいま戻りました」」
「二人ともお帰り。旅は……聞くまでもないかな?」
「はい、楽しかったです」
「父さま。あの件、きちんと考えて貰えますか?」
「ウォルフ、あの件って?」
「アキラ君にも関係あることだから説明しないとね」
この旅に出る前、ウォルフはスチュアートにお願いをしたようだ。
「強くなる為にダンジョンに行きたい」と。
それは、この領から長期間離れられないウォルフには、自分と一緒に冒険をしたいという願いだった。
ウォルフなら隣国のダンジョンも、10層までなら問題なく戦えると思う。
問題はウォルフと自分の年齢と、貴族家の子供という点だった。
剣術や魔法の方はある程度認められているのか、スチュアートはあまりそこを指摘していない。
ただ、努力すれば伸びる時期なので、もし怪我をしたら大変だし、メンタル的にやられるのを望んでいないのだ。
結果、ウォルフだけにこの試練を課したようだ。
「まだ、第一関門突破というところだけど、年始に行う寒稽古で実力を示せたらいいよ」
「本当? 父さま」
「ああ。アキラ君、君には苦労をかけるけど、一緒に行ってくれるかい?」
「はい、もちろん。暴走しそうになったらきちんと止めます」
「おい、俺はそんなことしないぞ」
「はいはい、ウォルフは別の意味の訓練もしないとだね。じゃあ、二人とも長旅ご苦労さま。早くみんなに無事を……。いや、それより王都にきちんと報告しておくべきか」
「あの、タップさんに盗賊ギルドの場所を記憶するように言われました」
「そうか。じゃあ、挨拶しに行くかな? 父さんはまだ仕事だろうから、そっちは後でね」
「じゃあ、ゲートを開きます」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「リュージ君、あれは何だと思う?」
「ポライトさま。きっと手押し車かと……」
「お年寄りの方が、二人並んで高速で移動しているのにはどんな訳が……」
「あれは、歩行の補助や腰の悪い方に良い道具だと思うのですが」
以前、砂漠化の対応をしたリュージ達派遣団は、今回はその国に招かれ歓迎式典に参加をしていた。
とにかく距離が遠く、国内外で多くの改善活動をしているせいで、基本的にその後のお礼に顔を出すことは少ない。
ただ、隣国との融和モードを高める為、国外に強いポライト男爵と行動を共にすることが多く、あまりに拒否ばかりしていると何の為に他国まで行って改善活動をしたのか分からなくなる。
今回は出席せざるを得ない式典と諦め、それならば情報収集と食事を楽しもうということになった。
年初早々に旅に出たので、まさに半年ぶりの王都への帰還となった。
農業王国なので、毎年のように実る収穫物には、ある種変化は見られない。
妻であり博士であるレンも最近は子育てに追われて、研究は共同事業の方にしか手を出せておらず、ザクスは基本的にマイペースで成果をあげるタイプだ。協会は保守的だし、あの時点で有名な発明家なども聞いていない。
そうなると、考えられる人物はアキラしかいなかった。
ポライトはローランドに報告に行くようで、自分はその辺の煩わしさは免除して貰っている。
その分、別の仕事を押し付けられているのは仕方がないので、とりあえず学院の一室にある盗賊ギルドへ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ゲートという名のドアが出ると、何時もならすぐに開けてしまうが今回はノックをする。
「ああ、いいぞ」という言葉を確認してからドアを開けると、そこにはリュージ・ヘルツ・タップ・レーディスがいた。
「タップ、ここを覚えさせたの?」
「リュージ、仕方ないだろ? みんな出払うと、俺達には確認する術はないんだから」
「それにしても、セキュリティーの面とか……。まあ、アキラ君ならそこはすり抜けられちゃうか」
リュージとタップのじゃれあいに、ここは本当に盗賊ギルドなのかと思う。
そもそも二人は同級生らしく、ヘルツはその時の教官だったようだ。
スチュアートが中に入り挨拶をすると、どこからか時計の鳴る音が聞こえてきた。
「あ、時計の針が進んだ」
「ん? もしかして、いつものかな?」
「はい、多分カエラさんの足が完治したんだと思います」
「カエラが立った……。いや、何でもない」
何やら古いネタにかけているフレーズを言っているようだけど……よく分からない。
そのカエラの存在を、ヘルツに確認しているリュージ。
すると、ヘルツが自分達三人を席に促し、それぞれの情報を教えてくれた。
リュージにも聞かせるので、時はデュエルまで遡った。
アーノルド家が新年会に招待した四貴族家は、レイシアとその子供達を巡り保護をするという名目でデュエルとなった。
この時に対峙することになったのは、リッセル子爵家とナーゲル男爵家である。
対戦相手はリッセル子爵家から、騎士団に所属しているアンルートが出て敗北の末和解した。
アンルートは、王子から謝罪を含めた褒章を出すと言われ、ナーゲル男爵家のカエラを求めた。
カエラはリュージ達が改善活動を行っている、使節団で行った男爵領の令嬢で、車椅子の自慢の目的と政治的アピールの為、家族による虐待を受けていた。
そして、もともと隣領だったこともあり、幼馴染のように仲良くしていたアンルートの事を好きだった。
そして、この二家には開戦派との繋がりが確認されていた。
アーノルド家が王都への旅に出て、アンルートも騎士団への挨拶へ向かった後に、リッセル子爵が毒により死亡。
毒殺か服毒自殺か事故かは判明出来ず、死体は既に荼毘に付されていた為、確認は出来なかったが外傷はなかったそうだ。
そして、アーノルド一家が出立したくらいで、ナーゲル男爵一家が監視の目を掻い潜り、どこかに向かう途中に盗賊により惨殺。
結果、リッセル家の長子が順当に当主になり、ナーゲル男爵家はカエラが当主でアンルートが婿養子になった。
二家は喪中にも関わらず、屋敷の中にあったカエラに残されたドレスを着て、無事結婚を断行したらしい。
幸い二家とも、優秀な代官が領を運営しているので、領内の混乱は見られなかった。
あまりに鮮やかな世代交代に黒い噂は多かったが、前当主の二人の評判が悪かっただけに、この兄弟の仲の良さと優秀さに領民は多くの期待をした。
開戦派からのちょっかいは確認出来なかったようで、そこそこの期間を区切りに盗賊ギルドの監視は終了した。
そして、王都でも一人の法衣男爵が亡くなった。
杖の職人で知られたオスローという男で、開戦派に唆されて表立って活動していたのだが、元来はぶっきらぼうでも家族思いだった。息子の為に実績を重ねれば、一代限りの法衣男爵も、同じように息子が名乗れるかもしれない。
そんな話を近くの安酒場で聞いていたらしい。法衣男爵になっても暮らし自体は変えなかったようだ。
不器用なオスローは慣れない社交の中で、過激な開戦派に与してしまっていた。
このオスロー事件も、トカゲの尻尾切りのように早々に犯人が名乗り出た。
酒場の近くで起きた事件で、死人に口なしだったので、『杖を振りかざして、何かをしようとしたオスローを自衛の為に切り捨てた』と犯人は言っていた。どこかからの圧力により、かなりの減刑の上、知らない間に王都からの追放になっていた。
そして、行方を追う盗賊ギルドの捜査網をまたもや掻い潜り、この犯人も死体で発見されていた。
それからというもの、開戦派は鳴りを潜めた。
「ヘルツさん、結構ひどい状況ですね」
「ああ、リュージが旅をしている間、結構人手不足だったからな。アキラのあの魔法が役に立ったんだが……」
「それでリュージ君への依頼だったんですね」
「スチュアート、悪いな。緊急事態で詳しい状況は口止めされてたんだよ」
「うちの領内で起きてない事件まで、口を挟めませんしね」
アーノルド一家は、監視の目に晒されることは問題にしていない。
王女であるレイシアが嫁いでから、それは受け入れる必要があった事だし、近衛として表舞台に立っていたスチュアートも慣れていた。そして、子供達に気付かれるようでは、監視とは呼べるはずはない。
何がどう動いているかは分からないが、王家や盗賊ギルドが証明してくれるならば、これほど確かなアリバイは存在しない。
結果、言い方は悪いが、過激な開戦派の尖兵が、数人亡くなっただけだった。
「でも、あのオスローさんがいなくなったと思うと辛いな」
「有名な人なんですか?」
「ああ、あのおっさんはガレリアさんと同じ時代の苦労人だな。叙勲は最近だったが、独自の技術を持っていたらしい」
「息子さんに監視は?」
「抜かりはないが……。ここから先は政治的な問題になるな」
ヘルツがスチュアートを見ると、思わずスチュアートは苦笑した。
ローランドを守る為に、多くの情報を共有していた時代は去り、今は一貴族として秘密を漏らせない立場になっていた。
ヘルツが心配に思っているのは、主に一緒にいる自分とウォルフに向けてだと思う。
スチュアートは話題を変える為に、ローランド宛の伝言を頼み、この後はセルヴィスに自分達の到着を話して帰ると言っていた。
「そういえば、アキラ君。この後時間ある? 色々聞きたい事があるんだ」
「はい、特に急いではないです」
「じゃあ、保護者同伴って事で、スチュアートさんにウォルフ君。ご一緒出来ますか?」
「ええ、もちろん」
リュージの話では、『魔法について』『手押し車について』『その他の相談』と色々聞きたい事があるらしい。
まずは旅の終わりの報告と、魔法についての相談ということで、学院長室へ向かった。
確認作業が終わりましたので、連載を再開します。
100話時点でのアキラのデータとなります。
※ステータスは物語に反映されませんので、スキルとスペルだけ公開致します。
※本文に書かれていない部分も反映されています。メディカルサーチ他はまだ本人は確認していません。
言語・魔法系
エターナル共通語:-
祝福/魔法の素質:Lv1
時空間魔法:Lv4←修正しました
召喚魔法:Lv1
神聖魔法:Lv2
水属性魔法:Lv2
戦闘系
剣術:Lv2
回避:Lv1
逃走術:Lv1/脚力強化:Lv1
危険感知:Lv2
弓術:Lv1
運動系
体幹:-
空中姿勢:Lv1/アクロバット:Lv1/軽業:Lv1
趣味系・その他
操船:Lv1
釣り:Lv1
料理:Lv1
手品:Lv1
ロープワーク:Lv1
スキルポイント残:8P
魔法一覧
マジックバック:魔法の収納かばん(実際は手品のように何もない空間からいきなり出現)
マーク:場所を記憶する魔法/魔法レベル+素質で覚える場所が増える
リープ:物理的跳躍距離が伸びる魔法/マークで記憶した場所へ飛ぶ魔法
コネクト:異なる物等を繋ぐ魔法
ルーム:魔法レベル+素質で部屋数が増える/1.5畳ずつ広がる/コンセントの挿し口が増える
ゲート:マークで覚えた場所と現在地をドアで繋ぐ魔法。想像力でドア・門・襖なども可
召喚/送還:ショッピングサイトで購入したものを出したり仕舞ったりする魔法
メディテーション:瞑想したり瞑想状態にする魔法。本人が抵抗することも可。
ヒール:回復魔法(主に外傷を塞ぐ)/若干の体力回復効果あり
キュアーポイズン:解毒魔法
パラライズ:麻痺魔法/本人が抵抗することも可。弱めれば麻酔効果あり。
メディカルサーチ:まだグレー表示で使えません。
クリエイトウォーター:水作成魔法
アイスボール:氷球
ウォーターボール:水球
ウォーターランス:水槍




