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第7話 異端審問官エキドナ VS 隻眼の使徒・人色蔵人・開戦

ガラガラガラ


 教室の扉が開き、教室は一気に静寂に包まれる。

 これにより蔵人は担任が入室してきたことを察する。


 入って来たのは若い女性。

 どう年齢を高く見ても女子大生にしか見えない若くて美しい容貌。


 身長は170cmを越え、体は細身だが、胸は大きく、しっかりクビレた完璧なるモデル体型。

 ピンクの長い髪を、巻き毛にして華麗な印象を与える。

 顔は小さく、目はパッチリしているが、目の周りはかなり黒く塗っており、ギャルを思わせる。


 赤のジャケットに白地のワイシャツ。超ミニの赤いタイトスカート。

 長い脚には黒のストッキング。



「これから1年、みなさんの担任となります。柿子かきこゆいと言います。

 いろんな意味で、これからよろしくね」


 女教師は、ウィンクをして微笑む。




「この中に少なくとも1人、ビグースがいる」


 蔵人はつぶやいた。




「このクラスは、スター揃いで、先生、驚いたわ~。第4回《HYPER CUBE》世界大会に優勝して、昨日の第1回《HYPER CUBE》カップででも優勝した人色蔵人くん。昨年のハッカーの世界大会、ブラックハットで個人の部で準優勝した水内みずうち泉さん。

 1年のときからラグビーの日本フル代表に選ばれた五郎丸走くん。手塚財閥のお嬢様、スクールアイドルの美馬びばさん。有名なすごい人ばかりで、先生ビックリよ。

 他のみんなも宜しくねっ!」


 柿子かきこ先生は、屈託のない笑顔で生徒たちを眺める。




「俺の方こそ宜しく、かきねぇ!」


 五郎丸が、軽口を叩く。

 どうやら、五郎丸はお調子者のようだ。



かきねぇじゃありません。柿子かきこ先生です!」


 柿子かきこ先生が五郎丸をたしなめる言葉により、教室は笑い声に包まれる。



柿子かきこなんて苗字みょうじの私が言うのもアレだけど、五郎丸くんの名字も変わってるわねぇ~」


 教室は再度、笑いに包まれる。



 人色蔵人の新2年生としての生活は、そんな爽やかな朝から始まった。




                 ◇




20X5年4月5日

PM12時46分



 人色蔵人は、特注品の巨大なフランスパンにかぶりつく。

 蔵人は、生徒会役員室で、ランチタイムを過ごしていた。

 

 ただ、1人で。


 もっとも、これは蔵人に友だちがいなくて、教室でのボッチ飯が恥ずかしいから、生徒会役員室に来てコッソリ食べているという訳ではない。

 事実、生徒会役員室へ来る前に、蔵人は五郎丸や泉から一緒にランチすることを誘われていたが、断ってここへ来たのである。


 それは後日行われる生徒総会のための予算原案作成と審査に際しての資料準備を、少しでも先に進めたいということからの選択だった。


 本来なら、これは生徒会幹部である新3年生が主となって行う仕事である。だが、ここの生徒会会長は、大学への推薦入学のための評価点を得るためだけに会長となった極めてやる気のない男だった。

 また、副会長や会計も、学校の成績が良いだけで、実務能力には欠ける者であり、蔵人に言わせれば無能だった。そういった偏差値が高いだけの無能な人間は、残念なことだが有名進学校にはよくいる。蔵人に言わせれば日本の官僚機構の8割の人間がそんな人間だった。日本の官僚は、その作成する白書1つとってみても作成する際の情報収集の着眼点が甘いし、収集した情報からの分析も極めて劣悪なものだと蔵人は常々考えていた。官僚主導でなされる政策にはロクなものがないというのが蔵人の持論だった。閑話休題。



 そんな事情から、無能な先輩たちに仕事を任せる気になれず、新2年で書記という末端の立場にすぎないにも拘わらず、クラスメイトとの楽しいランチタイムを返上し、1人、フランスパンを食べながら、仕事をこなしていたのである。



ガラガラガラ


 ノックも無く、生徒会役員室の扉が開けられる。


「お邪魔するわね」


 入ってきたのは、柿子かきこゆい先生。



かきねぇ……」



かきねぇじゃありません。柿子かきこ先生です!」


 思わず口走った蔵人を、柿子先生はたしなめる。



「やっぱり、ここだったのね」


 柿子先生は微笑みながら、蔵人を見つめる。




「蔵人くんのことを、もっと知りたっかのよね~」


 柿子先生は、そう言いながら蔵人の正面にある椅子ではなく、直接、机の方へと座る。そして、右足を上へ交差させて組んで座る。赤のミニのタイトスカートにより、柿子先生の黒ストに包まれた美脚が一際ひときわ強調される。蔵人は、思わず意識して脚から目を逸らせる。



 柿子先生は、机に座ったまま突然、赤いジャケットを脱ぐと、続けてワイシャツも脱ぐ。

 赤のブラジャーがあらわになる。



「先生……何やってるんですか?」


 蔵人は戸惑う。



「あ~ら、男子高校生はこういうの大好きでしょ~」


 柿子先生は、机に座ったまま挑発するかの色っぽい口調で、なまめかしく体をくねらせながら、超ミニの赤いタイトスカートを脱ぐ。


 さらに黒のストッキングを脱いでいく。



 そして、赤い紐パンと赤いブラだけの姿となると、ゆっくりと蔵人へと向かう。


 身長は170cmを越え、胸は大きく、しっかりクビレた完璧なるモデル体型の柿子先生の半裸を目の前にして、蔵人は目のやり場に困り、目を伏せる。



「昨日、君は第1回《HYPER CUBE》カップで優勝したでしょ。ご褒美あげなきゃね」


 そう言いながら、柿子先生は蔵人へ体を密着させる。



「ねぇ、女の子の体って触ったことある?」


 蔵人の耳元で色っぽい声でささやく。



 そして柿子先生は、蔵人の手を自分の太ももへと導く。


「柔らかいでしょ。遠慮しなくていいのよ」



 蔵人は、赤面し、されるがままに太ももに手を置いたままモジモジする。


「は、はい。せ、先生に体験させて欲しいことが1つだけあるんです」



「? いいわよ。もしかして蔵人くんも、先生のこと気にいってくれたの? どんな体験かしら?」


 柿子先生は、自らの太ももに置かせた蔵人の手を、太ももをわせて徐々に上へと持って行く。



 蔵人がつぶやく。


「先生、すごくいいニオイがします。でも、ちょっと……」



「でも、ちょっと?」


 柿子先生が不思議そうに蔵人の顔をのぞき込む。



「ちょっと生臭なまぐさいです」



 そう言った瞬間、蔵人は、後方へジャンプする。そして、生徒会役員室のすみへと瞬間移動テレポートし、柿子先生との距離を大きく取る。



ガシャン


 蔵人が後方へジャンプした瞬間、蔵人の座っていた椅子は、微塵みじんに粉砕された。




 柿子先生は上半身こそ、赤いブラ1枚で先ほどのまま。しかし、下半身が赤い大蛇となっていた。そんな大蛇の全長3mほどの尾による強烈な一撃が、蔵人の椅子を跡形なく粉砕していたのである。



「貴様、やはり地球外生命体ビグースだったな!」


 蔵人が詰問きつもんする。



「ミスったわね……な、なぜ分かったの……」


 柿子先生が忌々しげにつぶやく。



「なぜ分かっただと? その情報から、俺はお前がビグースの幹部ではなく、末端にすぎないとこが分かった。お前がしゃべればしゃべるだけ、俺はビグースの情報を得られる。お前は見かけどおりの便利な女だな、柿ねぇ」


 蔵人は挑発する。



「私は柿ねぇじゃないわ。異端審問官エキドナよ! ツカサ大将軍様のサーヴァントでもある。つまり私はそれなりの地位にあるの! 末端と言ってブラフをかけたつもりでしょうけど大失敗だったわねっ」


 柿子先生こと異端審問官エキドナは蔵人をにらむ。



「ブラフと思っているとは、めでたいやつだな。お前の人間としての『柿子かきこゆい』という名前自体から、既にお前がビグースであることが、バレバレだったんだ。

 これはビグースからの俺への知力テストのつもりだろうが、そんなの朝飯前だ。お前のマスターに言っておけ」



「もっと手応てごたえのある問題を作ってこいとなっ!」



「勝手なこと言わないで、ハッタリ野郎っ」


 エキドナは叫ぶ。



「なら、教えてやろう。Vivid Edged Blackは、死ぬ間際に俺たちに言った。

『この戦争に勝つために、お前たちが最後に倒さなければならぬ存在(もの)。その存在(もの)の名はTrue Gentle Blue。これだけははっきりと真実を伝えたかった』とな。

 True Gentle Blue。

 これにはアナグラムが隠されている。この文字列に含まれる3つの各単語の先頭の1文字だけを取り出すと『TGB』という新たな文字列が生み出されるわけだ。

 これで分かったか?」


 蔵人は、エキドナに挑むように尋ねる。



「『TGB』がどうしたていうのよ……」


 エキドナは、蔵人の意図が分からず、苦しげに言う。



「ほぅ。

 Vivid Edged Blackは、こうも言っていた。Vivid Edged Blackが敗れたことで、遅からずきっと、強硬派自らが、俺たちの前に表れるとな。強硬派は、余りに凶暴で極悪。強硬派には気をつけろとな。だから、強硬派ってのは残忍で計算高い者たちばかりだと思ってたよ。

 しかし、強硬派にも、お前のような計算できない頭がさわやかなのもいるようだな」



「……」


 エキドナは沈黙することで続きを促す。



「エキドナよ。そこのPCパソコンのキーボードを見てみろ。そして、『TGB』には、何て日本語が書いてある?」


 蔵人はPCパソコンのキーボードを指さす。




「え? か……き……こ……まさかっ?!」



「そう、そのまさかだ。柿子という苗字自体が、True Gentle Blueを示していたんだ。

 これによりビグースは俺の知力をテストした。戦う前に敵の知力を知ることは、戦術の基本だからな。そして、お前はあわれな捨て駒だ。お前のマスターは、俺とお前を戦闘させることで、俺のデータを得ようとしてるだけだ。その事に、いい加減に気づけ。俺はお前のことを好きではないが嫌いでもない。ゆえに、火の粉が降りかからない限り、戦うつもりはない。今回の狼藉ろうぜきも不問に付そう。秋葉原学園の小鳥遊たかなし理事長にも報告しない。

 分かったら、この部屋から出て行けっ!淫乱ピンク」


 蔵人は、厳しい口調でエキドナに、生徒会役員室からの退場を命じる。



「ぐぬぬ……見てなさい……」



 エキドナのピンクの髪が逆立ち、全身が発光する。



 次の瞬間、エキドナの下半身の蛇の尾が伸び、蔵人の体をグルグルと巻いていく。


 エキドナの尾は、蔵人の顔より下の全身に巻き付く。

 エキドナは尾に目一杯の力を入れる。



「うっ……」



「形勢逆転よ! 敵に情けをかけるなんて甘いわね。どう? 苦しくて声も出せないかしら? 

 指一つ動かせず、助けも求められないまま死んでいく気持ちを教えてくれる? 私に言いたい放題言ってくれたむくいだからね。ジワジワと絞め殺してあげるわ、隻眼の使徒くん」


 エキドナは、ニヤリを笑う。



 蔵人は一歩も動けず、指一つ動かすことができない。



 蔵人の顔は、青()めていく。

 強く締めつけられ、呼吸もままならないゆえに。


 絶体絶命の絶望が蔵人を襲う。



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