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第2話 選手控室(ハーレム)

本日2回更新するうちの1回目です。

ガチャ


 蔵人は東京ドームの選手控室の扉を開ける。

 部屋の広さは20畳ほど。部屋の中央には、いくつかのベンチがあり、壁側にはロッカーが並ぶ。



「ダーリン、優勝おめでとう!! さすがウチのダーリンや」


 そう言いながら、ホットパンツを履いた白くて長い脚の美少女が蔵人の胸に飛び込む。その少女のバストは推定95cm。少女は胸の開いた漆黒のTシャツごしに、その大きな胸を蔵人の顔へとグリグリと押し当て続ける。蔵人は両頬に少女の体温を感じる。


 少女の名は、矢沢月乃。


 蔵人も所属する世界屈指のプレイヤーからなる最強ギルド「最前線」のメンバー9人の1人。


 近接戦闘家として世界最巧と謳われるプレイヤー。《HYPER CUBE》東京予選決勝で蔵人と死闘を繰り返した相手。そして「隻眼の使徒ファンクラブ」副会長を務めるほどの熱心な蔵人ファンでもある。



「ちょっと待て、月乃。ダーリンなんんて呼ばれ方をする関係を構築した覚えはない。だから、誤解をまねく呼び方は止めろって、いつも言ってるだろ。それと近づきすぎだ」


 蔵人は、月乃に抗議する。



              ◇



「蔵人さ~ん、優勝おめでとうございます!!」


 まだ幼さの残る美少年が、嬉しそうに手を振りながら蔵人へ近づく。金髪と青い瞳というアングロサクソンの特徴を持つその少年も、左耳にはルビーのピアス。


 少年の名はアルト・ネイチャー。みんなからは、アルトくんと呼ばれている。


 アルトくんも、最強ギルド「最前線」に所属する世界屈指の《HYPER CUBE》プレイヤー9人の1人。12才でありながら前回《HYPER CUBE》ヨーロッパ選手権優勝者にして過去に世界大会第3位となった実績も持つ。そして「隻眼の使徒ファンクラブ」会長を務め、蔵人へ熱い憧れを持っている熱狂的な蔵人ファンでもある。



「あれ? アートネーチャーくん!」

 と時雨。


「アートネーチャーじゃない! 僕の名前はアルト・ネイチャーだ!」


 アルトくんは顔を真っ赤にして雫を全力で怒る。アルトにとって、その呼ばれ方は相当に嫌なものらしい。


「アンタら、いつもそのやり取りしてるやんな」


 月乃が、微笑みながら2人を見る。



                ◇



 その直後。

 蔵人は今度は左腕に大きく柔らかい胸の感触を覚える。


「ダーリン、優勝おめでとう!! 決勝戦も、すごくハラショーだったわ」


 美少女が蔵人の耳元でささやく。ホットパンツを履いた白くて長い脚の少女は、蔵人の左腕に大きな胸を押しつける。こちらの少女のバストは推定90cm。少女の漆黒のTシャツごしに、胸の感触が蔵人の左腕へと生々しく伝えられる。


 その少女は、ロシア系の白人。碧い瞳。細い眉。金髪の長髪をポニーテールにして、白いシュシュで束ねる。身長は170cmほどで細身の完璧なモデル体型。左耳にはルビーのピアス。



 少女の名は、ビビアン・エリーチカ・ベネセツカヤ。みんなからはエリチと呼ばれている。


 エリチも、最強ギルド「最前線」に所属する世界屈指の《HYPER CUBE》プレイヤー9人の1人。また、エリチは時雨の守護者(ガーディアン)でもある。時雨の二神家では総帥候補者が16才になったら守護者(ガーディアン)をつけるという風習がある。これは世界有数の大富豪である二神財閥を束ねる二神家では、先祖が身代金目的誘拐等の犯罪に巻きこまれることが多かったことからできた風習である。エリチはロシア陸軍に所属していたが、時雨が今年16才になったことから、ロシア政府からの推薦を得て時雨の守護者(ガーディアン)となり、今は時雨や蔵人と同じ秋葉原学園高校へと通っている。



「エリチも、その呼び方は止めろと言ってるだろ。それと近づきすぎだ」

 蔵人は、抗議する。



                ◇



「おめでとう、蔵人くん。時雨ちゃんも、惜しかったわね。

 姉妹で連敗したのは二神財閥としては、面目丸つぶれだけどね」


 冗談っぽい口調で、2人をねぎらうのは二神ふたがみしずく


 髪と瞳の色が黒であることを除けば、時雨と完全一致の容貌。

 それもそのはず、雫は時雨の双子の姉なのである。


 そして世界有数の大富豪、二神財閥の総帥継承権第1位を保持していることから将来、財界のトップになることが確実視されている。世界屈指のプレイヤーからなる最強ギルド「最前線」のメンバーの1人であるばかりか、《HYPER CUBE》にはβテストから参加している最古参でもある。



「雫さんも、ありがとう」


 蔵人は雫に軽く頭を下げる。



「これファンレターね」

 

 雫は蔵人に、ピンク地のかわいい動物のイラストのある封筒を蔵人に渡す。


「雫ちゃん、抜け駆けはアカンで。ウチもファンレター持ってきてるから。あと京介兄さんからのファンレターもことづかってるで」

「僕も持って来てるよ」

「ダーリン、私のも読んで」


 月乃が、アルトくんが、エリチが、競い合って各自が持ってきたファンレターを蔵人へと渡す。



「時雨ちゃんは、持ってきてへんの?」


 月乃は少しイジ悪な口調で時雨を見る。



「私だって持ってきてるが、私は契約者の義務と感じて書いただけだ……べ、べ、別に私はお前のファンというわけではないんだからな……か、勘違いするなよ」


 そう言って時雨は、蔵人へファンレターを渡す。



                 ◇



「あれ?」


 蔵人は不思議そうに月乃、アルトくん、エリチを見比べる。



「どうしたん?」

 と月乃。



「お前たちの上着なんだそりゃ?」


 蔵人は、月乃、アルトくん、エリチの3人が、漆黒のTシャツの上に、同じ暴走族の特攻服のような上着を着ていることに気づいたのだった。しかも、特攻服には「隻眼の使徒」、「絶対的序列第1位」といった蔵人をたたえるお馴染なじみのフレーズが同じように刺繍され、蔵人の缶バッチが大量に付けられ、蔵人のぬいぐるみなどグッズも沢山付いた異様なものだった。



「蔵人さん、知らないの? 僕たちは『隻眼の使徒ファンクラブ』の幹部なんだよ。ネットでは『隻眼の使徒四天王』と言われてるよ」


 アルトくんが笑顔で説明する。



「『隻眼の使徒四天王』か……ツイッターで話題になってたから知ってたが、いつも後ろ姿だったから……お前たちだったとはな……」


 蔵人は苦笑する。



「で、四天王のあと1人は誰なんだ?」


「え? 蔵人さん知らないの?」

「ハラショー?!」


 アルトくんが、エリチが続けて驚く。


「灯台もと暗しってやつやね」


 月乃はニンマリと笑う。



「灯台? ……」


 意味が分からず、蔵人は首をかしげる。



「な、な、何か飲み物買いに行くけど、みんな飲みたいものとかあるか?」


 時雨が突然、慌てた様子で口を挟む。



「ん? どうしたんだ突然。アイスティーだったら俺が水筒に入れて持ってきてるから飲むか?」


 蔵人は不思議そうに時雨を見る。



「す、す、すまない。お前のアイスティー美味うまいよな」


 時雨は汗をぬぐいながら感謝する。



「レシピを考えたのは俺じゃないがな」



              ◇



 蔵人は時雨にアイスティーの入った水筒を渡そうとした。



 その瞬間、選手控室いたギルド『最前線』のメンバーたちの動きがピタっと止まった。

 蔵人も、時雨も、月乃も、アルトくんも、エリチも、雫も、誰もがピクリとも動けない。


 蔵人は水筒を渡そうとした手を一切動かせず、銅像のように全く動くことができない。時雨も水筒を受け取る為に手をさし出したまま、完全停止している。



 ギルド『最前線』のメンバーは理解した。

 特殊()能力(キル)が発動されたことを。


 その特殊()能力(キル)を発動したのは世界最凶のプレイヤーの名を欲しいままにする男、ロックコ・ビンセント。ロックコは前回の《HYPER CUBE》アメリカ選手権の優勝者であり、また、かつてギルド『最前線』の中で最強と言われた男。『隻眼の使徒』が再来する前までの《HYPER CUBE》界での序列は第1位。すなわち《HYPER CUBE》界の皇帝(インペリアル)


 だが、ロックコは、ただの皇帝ではなかった。ロックコの2つ名は『皇帝ネロ』。ロックコは、その行状から、史上最も残虐非道と言われた暴君、ローマ帝国第5代皇帝ネロに(たと)えられることが多い。そして、そんな2つ名よりも、また、ロックコ自身の名前よりも、もっと有名なものがある。それこそが今、ロックコが発動したエクストラ特殊()能力(キル)である。




 その特殊()能力(キル)こそが『絶対(インペリアル)時間(タイム)』。




 『絶対(インペリアル)時間(タイム)』。この特殊()能力(キル)が発動された場合、発動者と同じバトルフィールドに立つ全プレイヤーは2ターンにわたって完全に移動の自由を奪われ、全ての動きを停止させられる。もっとも、発動者のみはその自由を奪われない。



 選手控室にいた誰もが動けない中、ただ1人、ロックコのみが、ゆっくりと蔵人へと近づく。



「ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョ」


 ロックコは雄叫びをあげる。そして続ける。



「ウヒョヒョヒョヒョヒョ。いいねえ、いいねえ、いいねえ。お前、面白いね、最高だよ。『絶対(インペリアル)時間(タイム)』が、隻眼の使徒にも有効は知ってたけどよう、やっぱ最高だよ。第1回《HYPER CUBE》カップで優勝したくらいで自分が最強って勘違いしてるんじゃないだろうな?

 言っとくけど、俺はお前と直接対決して負けたわけじゃないからな。

 最強はな、俺を倒してから名乗れよ。なぁ、三下(さんした)

 あ、ゴメン、お前、今指先ひとつ動かせないんだったぁ。ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョョヒョヒョヒョヒョヒョ」



 皇帝ロックコは、背中から大剣を抜刀する。

 灰色の長髪、瞳は燃え盛る火のように赤い。

 そんなロックコはゆっくりと蔵人へ近づく。



「皇帝ロックコ、お前も控室にいたんだな」


 身動きできない中、蔵人はつぶやく。



「いたよ。待ってたよ。お前に会うためだけにな。

 ああああああ、この大剣使うの待ってたんだわぁ。誰が世界最強か決めないといけないからなぁぁぁああああ。どっから斬り(きざ)んでほしいかお前に決めさせてやるよ、三下(さんした)っ」



 ロックコは大剣を上段へ構え、全く身動きできない蔵人へ斬りかかる。



「「「「「だめええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」」」」」


 月乃が、アルトくんが、エリチが、雫が、時雨が悲鳴をあげる。


 蔵人は動けない。



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