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第1話 第1回《HYPER CUBE》カップ終戦

本日2回更新するうちの2回目です。

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 第1回《HYPER CUBE》カップの会場である東京ドームに響き渡る使徒コール。


 蔵人の2つ名は《HYPER CUBE》界に君臨せし絶対的序列第1位「隻眼の使徒」。蔵人のその2つ名を、東京ドームにつめかけた満場の観客たちが興奮しながらコールし続ける。


 圧倒的な実力で、全試合を完勝する形で、第1回《HYPER CUBE》カップにおいて完全優勝を果たしたした人色蔵人。

 蔵人の成し遂げた偉業を、心からたたえたい。

 そんな満場の観客たちの気持ちから、使徒コールの大熱唱は、いつまでもまない。



 蔵人は、右手を上げて、笑顔で満場の隻眼の使徒コールへとこたえる。




 第1回《HYPER CUBE》カップ。


 タッグを組んで出場することが可能であったこれまでの4回の《HYPER CUBE》世界大会と違い、ソロのみでの参加を条件として、この新しい大会は開催された。


 蔵人は準々決勝ではアルトくんを、準決勝では時雨の姉・二神しずくを破り、そして、今、決勝で、時雨を破り第1回《HYPER CUBE》カップ優勝を決めたのだった。




 時雨がうつむきながら恥ずかしそうに蔵人へ近づいて尋ねる。


「どうやら私は、また《HYPER CUBE》症候群A型を発症していたようだな?……」



「そうだ」


 蔵人は笑顔で答える。



 時雨が発症した《HYPER CUBE》症候群(シンドローム)A型。

 《HYPER CUBE》世界での光景というものは、人工衛星映像やこの時代に世界中に張り巡らされた公共カメラネットワークなどを利用することで、現実()世界(アル)での光景に限りなくに近似したものとなっている。また《HYPER CUBE》は、プレイヤーの外骨格、筋肉、脳神経、DNA情報などを即座に解析し、その者に最も相応(ふさわ)しい特殊()能力(キル)を選択するだけでなく、その者の等身大の現実()世界(アル)のその者と同じと言っても過言でない3Dアバターを《HYPER CUBE》世界に出現させる。そのような《HYPER CUBE》世界の中で、極度の緊張感を持って戦闘を繰り返すうちに、《HYPER CUBE》世界での出来事を現実()世界(アル)での出来事と錯覚するという現象。それが《HYPER CUBE》症候群(シンドローム)である。たとえ長いプレイ経験を有するベテランであっても、精神的に極限状況にまで追い詰められることで、しばしば《HYPER CUBE》症候群(シンドローム)(おちい)ってしまうことが報告されている。


 時雨の特殊能力スキル『竜神の逆鱗』は《HYPER CUBE》界で随一の貫通力を誇る。そんな特殊()能力(キル)を、今大会で連続して発動した。また、準決勝を観戦していた時雨は、蔵人の前に、為すすべもなく無惨な形で実の姉・しずくが負けていくのを目の当たりにした。そして、決勝戦では、そんな蔵人と対戦することとなった。雫と時雨は双子であることから、DNA情報も近似し、《HYPER CUBE》界での実力に大差はない。時雨は戦前より自らの大苦戦を予想していた。


 そんな過度のストレスの蓄積が、16才という傷つきやすい年齢の時雨の神経を確実にすり減らし続け、決勝戦で蔵人と戦う中で、《HYPER CUBE》症候群(シンドローム)A型の発症へと至ったのである。


 蔵人とタッグを組んで臨んだ第4回《HYPER CUBE》世界大会でも、時雨は《HYPER CUBE》症候群(シンドローム)A型を発症していたことから、時雨は蔵人を前にして、少し気恥ずかしくなる。 



 蔵人は、時雨の心中を察して、優しく微笑む。


「時雨、気にするな。俺は準々決勝でアルトくんに勝ち、準決勝で雫さんに勝っただけだ。お前も決勝開始時点では、そのことを認識していた。だが、決勝戦の中で《HYPER CUBE》症候群A型を発症し、そんな認識が変容して、俺がアルトくんや雫さんを殺したって記憶にすり変わったみたいだな。俺は気にしてない。だからお前も気にするな」



 その返答が気に入らなかったのか時雨は挑むような視線で蔵人をにらみつける。


「いや、私が気にしてるんだっ。それに、お前、ドサクサにまぎれて私のことを雑魚って言ってなかったか?」



「言ったっけ? 普段偉そうにばかりされてるから、いいチャンスだと思って、うっかり本音が出たのかもな」


 笑いながら蔵人はとぼける。




「は? コノー! 悪ノリしすぎだろう! しかも、もうスグあいつらのところに行けるみたいな、アルトくんや雫は先に天国にいるから、お前も行けみたいなかんじで私を煽ってたよな」


 時雨は強い口調で抗議すると、怒って頬を膨らませる。



 蔵人はそんな時雨の頭を撫でる。


「それは間違ってはいないぞ」



「え?」



 蔵人は笑顔で答える。


「だってそうだろ? アルトくんも、雫さんも、選手控室で戦いを終えた俺たちを待ってくれてるはずだ。これから俺たちは、控室に戻って、みんなのところに行けるからな。

 よし、選手控室へ戻るか!」



「ふん。馬鹿者が」


 その言葉とは裏腹に、満面の笑みで時雨はうなずき、同意する。



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