第36話 Vivid Edged Black(解):魔剣レーヴァテインの使い手
第36話 Vivid Edged Black(解):魔剣レーヴァテインの使い手
「よって、『Vivid Edged Black』の正体は、ギルド『最前線』のNo4であるプレト・ルシフェル、あなただQ.E.D」
蔵人はピシッと人さし指をプレトに向けて証明終了を告げる。
細いフレームの眼鏡を直しながら、プレトは理性的な顔をピクリとも変えず、ゆっくりと言い放つ。
「そうだよ。僕がVivid Edged Blackだ」
「プレトっち!な、なんでだよ……なんでプレトっちがビグースなんだよ。
プレトっちは俺たちの仲間じゃなかったのかよっ!」
京介が驚愕しながら叫ぶ。
「プレトくんっ!」
「プレトさん!」
時雨が、アルトくんが、みんながプレトの名前を呼ぶ。彼らの思いも、京介と同じ。
その時、突然、京介が、そして蔵人が地面へと膝をつく。
時雨が、月乃が、雫が4つん這いになる。
アルトくん、ロックコ、水鏡、セレーゾ神父が地面に俯せになって倒れる。
重力異常フルバースト:この特殊能力が発動された場合、発動者と同じバトルフィールドに立つ全プレイヤーは20ターンにわたり、平常の70倍ほどの重力の付加を受けることで完全に移動の自由を奪われる。もっとも、発動者のみはその自由を奪われない。
「バレたら仕方ないね。蔵人くん……黙ってればいいものを……君もバカな男だね」
Vivid Edged Blackは蔑みの表情を交えて蔵人を睨み付ける。
「君が世界最強のハッカーDr.Iによるスキル・キャンセラーを使って、重力異常を解いたことは、我がサーヴァント・シェーシャと君との戦いで知ってるよ。
だから、僕も《HYPER CUBE》サーバーへ侵入して、スキル・キャンセルなんて不正プログラムを駆除しておいたよ。
ゆえに、君は決して私の重力異常フルバーストを解くことができない。
手足を1mm動かすことすら、ままならないはずだ」
Vivid Edged Blackは静かに言う。
蔵人は、スクッと立ち上がると、ゆっくりとVivid Edged Blackへと歩きはじめる。
「な……な……なんだ……と……なぜ歩ける?……スキル・キャンセラーを使えないはずだっ」
「俺の眼帯をよく見てみろっ!Vivid Edged Black」
蔵人は、力強く言い放つ。
「漆黒の眼帯。それこそはスキル・キャンセラー……
はっ!き、き、金の十字架が刺繍されているだと……Dr.Iによるものは銀の十字架……
別のスキル・キャンセラーを使っているというのか?……」
「ご名答だ。気づくのが遅すぎたがな。
PCに詳しい俺の友人は、Dr.Iだけでない。
スタンド・アローンのPCにまで侵入し、世界中の先進国の最高機密を根こそぎかっ攫っていく史上最悪のコンピューターウィルス・ホワイトドゥークーの制作者も先輩にいてな。
そんな先輩が一晩でやってくれました。
新巌流島で俺がお前のサーヴァント・シェーシャと戦った後。そのとき俺と水鏡さんは会話をしていたが、お前が盗聴をしていることは分かっていた。
だから、その会話の中で俺はDr.Iがスキル・キャンセラーを侵入させた『3時33分』を、殊更にお前に意識させるようにした。
お前に『3時33分』に侵入したスキル・キャンセラー『のみ』を駆除させるためにな。
だが、俺の口から『3時33分』という言葉を出すのはリスクがあった。
その言葉から、Vivid Edged Black、お前が第2のスキルキャンセラーの存在に気づく可能性があったからな。その高い洞察力ゆえに。
だから俺は、水鏡恭一郎さんを利用した。
水鏡さんに『サーバへの侵入は3時32分だったっけ?』という間違った質問をあえてした。
『3時33分』という言葉を水鏡さんから、引き出すためにな。
そして水鏡さんの言った『3時33分』に侵入したスキル・キャンセラーのみを意識したお前は、それのみを駆除した。、
だが、《HYPER CUBE》サーバーには、それとは全く別の『3時34分』に侵入した第2のスキル・キャンセラーがあった。
だが、『3時33分』を意識する余り、お前はそれに気づけなかった。
ゆえに俺は今、自由に動ける」
「第2のスキル・キャンセラーだと……しかも、新巌流島で君とシェーシャが戦った後だと……そんな前から、ここまで先を読んでいたというのか……
おのれ……おのれ……おのれおのれおのれおのれおのれおのれっ!」
Vivid Edged Blackは叫ぶ。
「ん?待てよ」
Vivid Edged Blackは元の冷静さを取り戻す。
「だが、その第2のスキル・キャンセラーを使えるのは1回限り。そこは第1のスキル・キャンセラーと同じはず。それが今の人類の技術的限界だからな。
ゆえに、僕が次に発動する特殊能力『黄昏より昏き闇』には対処できまい。
違うか?」
Vivid Edged Blackは叫ぶ。
「そのとおりだ」
気を取り直したVivid Edged Blackは高笑いをする。
「ハハハハハハハハハハハハハハ
やはり、そうか。
ならば、いいことを教えてやろう。
僕はシェーシャが最後に送信したバトルログにより、君の『集極の波より来たりし闇』の火力の数値を正確に知ることができた。そして、水鏡恭一郎のPCにもハッキングをかけて常時監視していたことから、聖剣エクスカリバーが攻撃力を5.14倍高めることも知っていた。そして、僕は聖剣エクスカリバーが、やがて君の手に渡ることを予想した」
そう言って、Vivid Edged Blackは自らの大剣を蔵人へ示す。
「だから、僕は対抗すべく、この魔剣レーヴァテインを開発した。
この魔剣レーヴァテインは僕の特殊能力『黄昏より昏き闇』を高める。
君が聖剣エクスカリバーを使って『集極の波より来たりし闇』を発動した火力の11%増の火力を出せる。
『集極の波より来たりし闇』の使い手である君なら、分かっていよう。
僕たちランクSの特殊能力の1%差が、どれほど隔絶しているかということを。
11%増とは永遠の隔絶とも形容できよう。
君の行為は、陸上の100m競争にたとえるなら、最高記録が20秒台にすぎない選手が9秒台の選手に挑むような絶望的状況。
ゆえに君が僕に勝つことは絶対に不可能だ」
Vivid Edged Blackは魔剣レーヴァテインを天へと掲げて誇示する。
「そのとおりだ」
そう言って蔵人は、Vivid Edged Blackを見つめる。
そして、ゆっくりと歩き始める。
Vivid Edged Blackへと向かって。




