第33話 ラグナロク決戦・ギルド『最前線』VS聖剣エクスカリバーの守護者・終戦
第33話 ラグナロク決戦・ギルド『最前線』VS聖剣エクスカリバーの守護者・終戦
京介は震えながら叫ぶ。
「こんなの悪夢だ……こんなの《HYPER CUBE》史上最凶最悪の悪夢じゃねえか……この覚醒バジリスクってのはよっ!
どんなに魔物のステが高くてもパターンがある。だからこそ嵌め手を見つけだして攻略できるのがVRMMOのセオリーだし醍醐味じゃねえか。そんなセオリーも醍醐味も無視して完全チートな化物作りやがってよっ。こんなの俺たちVRMMOプレイヤーの存在への完全否定じゃねえか!
しかも、この化物は固有特性で俺たちの弱点ばかり突くし、クエストの指示だってマラソンでヘバってる俺たちの1番体力の無い時を狙ってときてやがる。特殊能力もデタラメの火力、攻撃もランダム……こんなの訓練じゃねよ……」
京介は続ける。
「こんなの訓練なんかじゃない。
《HYPER CUBE》の運営は、水鏡恭一郎は、俺たちギルド『最前線』を確実に殺しにかかってきている。
俺たちギルド『最前線』への公開処刑だ……ただの虐殺だっ!
水鏡恭一郎の野郎、汚ねえよ。
俺はあいつを絶対に許さねえええええええええええええええええええええええ」
京介が絶叫する。
蔵人は京介の前に立ち、京介の両肩に自らの手を乗せる。
そして真摯な表情で京介を見つめる。
「京介さん、違うんだ。
そうじゃない。そうじゃないんだっ。
京介さん、しっかりと考えて欲しい。
水鏡さんが《HYPER CUBE》を使って、本当にやろうとしていることが何かをっ!
《HYPER CUBE》は全世界の全世代で空前の大ヒットをしたことから、伝説のゲーム機と呼ばれている。だが、《HYPER CUBE》に隠された本当の役割、それはビグースを殲滅する特殊能力保持者を選別して訓練することだった。
だけど、《HYPER CUBE》が発売されてから4年。そんなビグースを殲滅する最も高度な特殊能力を有している者が誰かを考えて欲しい。
それこそは俺たちギルド『最前線』の9人だ。俺だけじゃない。時雨、雫さん、月乃さん、ロックコくん、アルトくん……」
「はっ!」
京介は驚愕の表情を見せる。
「そうだ、京介さん。
分かってくれたみたいだね。
俺たちの主力は、未成年の少年少女ばかりなんだ。
ビグースに対してはアメリカやロシアの軍隊の最新兵器が一切効力を持たず、《HYPER CUBE》の特殊能力のみが有効という事実。もしこの事実が世間に知られたとき、世の中はどう動くか。
世界中の世論は、人類を守るためにそんな特殊能力を高度に有する者たちを生け贄にしようとする流れになりかねない。
たとえ、それがギルド『最前線』のメンバー、そうアルトくん、ロックコくんたちのような年端もいかない未成年の少年少女であってもだ。
だから水鏡さんは、この4年間、そんな事実を隠すため《HYPER CUBE》に懸命になって様々なアップ・デートを重ね続けてくれた。
また、水鏡さんは俺たちの着けてるけてるこのルビーのピアスを渡してくれた。これこそが《HYPER CUBE》での特殊能力を、現実世界でも発動できるようにする装置。
俺たちがビグースの標的になっても、いつでも自分自身を守れるようにと。
だが、この前の《HYPER CUBE》世界大会では、時雨やロックコくんはハイパーキューブ症候群A型を発症してしまった。水鏡さんは、そんな俺たちでは、やはりルビーのピアスを使いこなせないんじゃないかと心配して、このイリュージョン・アーツ魔法学園を開校してくれたんだ。
そして11万4514個もの現実世界でのNPCを用意してくれた。
水鏡さんは、見抜いてるんだ。時雨やロックコくん、それだけじゃない。このギルド『最前線』のメンバーは、一見するとガサツだ。だが、本当は誰よりも繊細すぎるほど繊細な子ども達ばかりだってことをっ!」
蔵人は力説する。
「確かに、その通りだ……水鏡さんは俺たちの恩人……それなのに俺は……」
京介は蔵人の話に納得し、水鏡を批判した自らを責める。
「そして、京介さん、今、もう1度考えて欲しい。
俺たちを待っているのが、最強のビグースVivid Edged Blackだということをっ!
ビグースVivid Edged Black。
彼奴は俺たちが万全の体調の時に襲ってくるだろうか?むしろ今のような体調が最悪のときを狙ってくる蓋然性が最も高いだろう。
また、VividEdgedBlackは、俺たちを倒すために必死で俺たちの弱点を探してくるに決まってる。俺たちの特殊能力にとって最も相性の悪い固有特性を準備してくることも十分考えられる。そう、時雨や雫さんにとっての『避雷神』のような。
そんなVividEdgedBlackの攻撃にパターンなんて期待をすべきじゃない。攻撃に規則性を持たせるはずがないんだ。攻撃はランダム。しかもビグースは人類を遙かに凌駕する知性を有している。ゆえに、俺たちはその攻撃パターンに知略を尽くして対応しなければならないだろう。
そして、水鏡さんは、真剣に俺たちのことを考えて、そんな実戦の訓練ができるようにと、この今回のクエストを用意してくれたはずだと考えている」
そう言うと蔵人は京介を見つめる。
「9人目っ……お前そこまで考えていたのか……そうだな。まさに、その通りだっ!さすが9人目だっ!」
京介は説得力の高い蔵人の話に深く納得し、頷く。
だが、この瞬間、ロックコが気を失ったことで、ロックコの発動していた『絶対時間』の効果は消失した。これによりバジリスクは再び行動の自由を得た。
バジリスクは即座に鋭く尖った角を地面に伏しているロックコへと向け変え、 これをロックコへ突き刺そうと突進する。
蔵人と京介が同時に気づく。
「「しまったっ!」」
2人は同時に叫ぶ。
だが、今から2人が動いたのでは間に合わない。
その時。
1本のメイスと1本の長剣。これらがバジリスクの角を食い止め、バジリスクは動きを止める。
メイスの持ち主が叫ぶ。
「ギルド『最前線』のNo5、ネルソン・セレーゾ神父、ここに来たり」
長剣の持ち主も叫ぶ。
「同じくギルド『最前線』のNo4プレト・ルシフェル、ここに来たり」
少し意識を取り戻したロックコが、朦朧とした意識の中で、セレーゾ神父に尋ねる。
「ヒゲのオジサン、来てくれたの?」
「間に合ったようだね。仲間の危機に駆けつけない仲間はいないよ。君は、仲間を全力で守ってくれた。だから、僕とプレトくんも、全力で君を守ろうとした。本当の仲間だからね。君が自分の信じた道を真っ直ぐに歩いてくれたからこそ分かりあえた、かけがえのない仲間だから」
セレーゾ神父は、いつかの言葉を口にする。
神父の言葉に、ロックコも、また思い出す。
現実世界に絶望したロックコ少年が、《HYPER CUBE》世界を彷徨い始めたばかりのときのことを。オジサンたちばかりのギルドと一緒に、フィールドボス『怒りのワイバーン』を討伐したときのことを。
そして、ヒゲのオジサンが最後にかけてくれた言葉を。
「ロックコくん、現実はつらい。だけど、自分の信じた道、それを見失ってはいけないよ。僕たちが決して辿りつけない最前線。でも、君ならきっと辿りつけると思うよ。そこには、君が今日のように全力で守り、そして守られる、そんな本当の仲間がいるかもしれない。君は自分の信じた道、そこだけを真っ直ぐに歩いて行って欲しいんだ。今の君は、この言葉の意味が分からないかもしれない。だけど、いつか、この言葉を思い出して欲しい。ロックコ・ビンセントくん、君に神の加護があらんことを。」
そんな言葉を思い出していた。ロックコは。
「ヒゲのオジサン……ありがとう」
ロックコは安心した笑顔で再び意識を失っていく。
「人色蔵人くん、私はギルド『最前線』のNo5として君の入団を認める。そして今、君の力を貸して欲しい!」
セレーゾ神父は蔵人に叫ぶ。
「俺もNo4として同様だ。隻眼の使徒・人色蔵人くん、頼むっ!」
プレトも叫ぶ。
蔵人は頷く。
次の瞬間、決戦の地・ラグナロク山は激しく青い閃光に包まれる。
『集極の波より来たりし闇』。その特殊能力を受けて再び立ち上がった者は歴史上存在しない。
1度めはバビロン事件において、バビロンの塔最上階で100人を人質にとったラスボスが。
2度めは重装のNPC『騎士の亡霊』が。
3度めは『奇跡の林檎』の使い手、世界屈指の《HYPER CUBE》プレイヤー矢沢京介が。
4度めは近接戦闘戦闘家として世界最巧と謳われた矢沢月乃が。
5度目は元グリーンベレーにして特殊能力『Unlimited Knife Fenomenon』の使い手、伝説の英雄サンダース大佐が。
6度目は世界屈指のプレイヤーからなる最強ギルド「最前線」のメンバー相手に連勝した神殺しの特殊能力『ホワイトアウト』の使い手、ホワイトナイトことPureSublimityWhiteが。
7度目はVivid Edged BlackのサーヴァンとにしてVivid Edged Blackのメイン盾。重力異常とファイアピラーの使い手、シェーシャが。
8度目はプレイヤー殺しの最悪パーティーと言われる不倒の集団『デュラハン3兄弟』が。
そして、今、《HYPER CUBE》史上最強最悪の悪夢と言われた聖剣エクスカリバーの守護者の使い魔・覚醒バジリスクが、わずか一撃で敗れ去ったのだった。
激しく青い閃光が収束する。
覚醒バジリスクは完全に消失していた。
その時。
身長15cmほどのカワイイ女の子の妖精が表れる。
次の更新は明日です。
タイトルは「新たなる守護者:この身体 この精神 この魂 全てを永遠に捧げんことを」。




