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第30話 覚醒バジリスク

第30話 覚醒バジリスク


 その時。

 イリュージョン・アーツ魔法学園内の訓練フィールドいっぱいに広がる強力な明るい光。メンバーたちは眼を開けていられなくなる。と同時に。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドン


 メンバーたちが耳の鼓膜が破れたかと思うほどの大きな雷鳴。

 この時、メンバーたちも近隣住民たちも、イリュージョン・アーツ魔法学園に落雷があったと思ったという。雷鳴の余韻に空気が震える。


 メンバーたちは視界を回復する。

 そして、その強い光と爆音の源たる者を知る。


 そこにいたのは、ゴシックロリータの赤と黒の衣装の少女。赤いスカートの丈は膝上20cm。そして黒のニーソ。両手には深紅の皮の長手袋、右手には先端に大きなルビーを備えた漆黒の杖。ツインテールにした炎 髪に大きな緋色の瞳。左耳にはルビーのピアス。


 二神(ふたがみ)時雨(しぐれ)、その人だった。


 時雨が発動した特殊()能力(キル)(ドラゴニア)()(ンダー)』の最終形態たる『竜神の逆鱗』。それこそは《HYPER CUBE》界で随一の貫通力を誇る最強の特殊()能力(キル)

 それを第1ターンから誰よりも早く発動させることで、バジリスクへの先制攻撃に成功したのだった。



「みんな、遅すぎぃ!(さい)は投げられたんだから、戦うしなないでしょっ!早く私について来なさい」

 時雨は笑いながら『最前線』のメンバーたちへ憎まれ口をたたく。




「おい……あれ見てみろよ……」

 青ざめながら京介がバジリスクのHPバーを指さす。

 時雨の『竜神の逆鱗』によっても、バジリスクのHPはほとんど削られていなかった。


「固有特性『(アンチ)雷神(サンダーゴッド)』か……」

 京介は絶句する。



 固有特性『(アンチ)雷神(サンダーゴッド)』。それは数億人に1人しか発現しないレア特性。

 『竜神の逆鱗』や『(ドラゴニア)()(ンダー)』は、《HYPER CUBE》界で随一の高貫通を誇る特殊能力だが、この固有特性『(アンチ)雷神(サンダーゴッド)』に対してだけは分が悪く、与ダメージが大幅に軽減される。




「正月イベントのバジリスクと全然違うじゃねえか。こりゃダタのバジリスクじゃねえ……


 覚醒バジリスクだ……


 バジリスクが大幅に強化されてる。なにが対戦したことがあるボスを微修正して使い回すだ、水鏡の野郎。これじゃ微修正じゃなくって抜本的な見直しだろ……2日間どころか4日かかって倒すのすら怪しいかもな……こんなの《HYPER CUBE》史上最凶最悪の悪夢だろ……」

 京介は声を震わせる。




                ◇




 第2ターン:

「バジリスク、覚悟しいや」

 そう叫びながら、矢沢月乃がミスリルの小剣をバジリスクの右後方からバジリスクへと(かざ)す。



爆発(ファイヤ)する小剣(ボム)』。

 連続攻撃の中でミスリルの小剣が一定の超高速度に達することを発動条件として、小剣はたとえ対象者(ターゲット)に触れなくとも術者が被対象者への攻撃意図を有している限り小爆発を起こすことで対象者(ターゲット)を攻撃するという特殊()能力(キル)

 


 第1ターンで月乃は高速移動することでバジリスクの死角となる背後へ回った。この高速移動が良いアップとなりミスリルの小剣が一定の超高速度に達するとの発動条件を充足したところで、月乃はバジリスクへ『爆発(ファイヤ)する小剣(ボム)』を発動しようとした。

 それこそは正月イベントでの成功体験に基づく必勝の戦略。勝利のセオリー。

 


 だが、月乃の小剣から小爆発は起こらない。



 それよりも早く、バジリスクが右後方の死角にいたはずの月乃を右足で跳ね飛ばしていたから。



「月乃おおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 跳ね飛ばされて、床に倒れる月乃を見て、蔵人は絶叫する。




「みんな気をつけろ。このバジリスクは固有特性だけでなく攻撃パターンも正月イベントのバジリスクとは全く異なる。しかも正月イベントでのギルド『最前線』の動きを解析してプログラミングしてある。


 まさに覚醒バジリスクっ!


 当時、通用した攻撃は、このバジリスクに通用しないと考えた方がいい。むしろ当時の勝利のセオリーが逆用されるぞっ!」

 蔵人は叫ぶ。




                ◇




 第3ターン



 バジリスクは、先端の尖った尾を高貫通の特殊能力スキルを発動させた時雨に食らわそうと疾走する。

 


「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 時雨の叫び声がラグナロク山へ響き渡る。





次の更新は明日です。

タイトルは「時雨死す」。

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