第29話 ラグナロク決戦・ギルド『最前線』VS聖剣エクスカリバーの守護者・開戦
第29話 ラグナロク決戦・ギルド『最前線』VS聖剣エクスカリバーの守護者・開戦
翌日の午前4時10分
ギルド『最前線』のメンバーたちは、イリュージョン・アーツ魔法学園の敷地にあるラグナロク山を登っていた。
「昨日はマラソンでヘトヘトになってるのに、こんな早朝ていうより深夜から登山とはな……。まだ疲れがとれてないんだが。月曜にジャンプ買いにコンビニ行くときしか外出ないニートの気持ちを分かれよ、サンダースの野郎。エアプな訓練メニューとしか思えないぜ」
京介は今回のクエストを指示した教官のサンダース大佐のことを愚痴る。
「そうだよ」
同じく普段の引きこもりから前日の運動でヘトへトになっているロックコも便乗する。
「それにしても朝の5時からでないと召喚できない魔物っておかしいやんね。スイスで合宿してるウチらしか召喚せえへんの分かってるんやから、運営はスイス時間の夕方とか夜に召喚設定するのが普通やろうに、なんでこんな早朝なんやろ?運営が間違って日本時間に設定して、それに合わさせられてるとしか思えへんレベルやねんけど」
月乃は早朝から召喚させられることに不満を漏らす。
「間違って日本時間で設定か……そんなドジッ娘の運営いそうだな」
時雨の脳裏に幼なじみの粟山さんの顔が浮かぶ。
「そうね。ピンクの髪のメガネ系の運営いそうね」
雫の脳裏にも同じく幼なじみの粟山さん。
「「あいつのせいかっ!」」
雫と時雨は同時に叫ぶ。
「せやけど、今回のクエストボスの聖剣の守護者って、どんなボスなんやろうね?ダンディーな紳士さんが待ってるかもしれへんから、楽しみやわ」
月乃がウットリした顔で言う。
「それはないわ。水鏡さんが、私たちが戦う相手は今までに対戦したことがあるボスを微修正して使い回すだけって言ってたから。ダンディーな紳士さんのボスとは私たち戦ったこと無いからね」
と雫。
「ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ。なら、俺はジブリールたんがいいな」
ロックコは雄叫びを上げる。
ロックコは、かつて戦ったストーリーボスのジブリールの美貌に魅せられ、ジブリールが忘れられない存在となっていた。だが、ストーリーボスは1度勝利すると再挑戦できないことから、再会を夢見ていたのだった。
「ジブリールでもいいけど、あんたジブリールのパンツ見ようみたいな恥ずかしいマネやめてよね。この前の《HYPER CUBE》世界大会でも、あんた私のパンツ見ようとしてたよね」
時雨は、先日の世界大会の話を持ち出してロックコを咎める。
「いや……あれは久しぶりに外出したからテンション上がったかんじだったよ……ゴメン」
ロックコは素直に反省する。
◇
「そんな事より、みんなに聞きたいことがあるんだ」
蔵人が言った。
「ドロップアイテムの分配のことなんだ。
今回のボスは聖剣エクスカリバーをドロップするらしい。この聖剣エクスカリバーは、攻撃力を5.14倍も高めるという超レアアイテムらしい。だから、トラブル防止のため、事前に分配を決めた方がいいだろう。今回の供物インプ魔石は、さっき水鏡さんから渡されただけから、誰が主催をするというわけでもない。だからドロップフリーで、全員ロットに参加するが、誰も優先は使わないってことでいいんだよな?俺はそれが普通だと思っているが、新参の俺はこのギルド『最前線』の流儀を知らないから確認したい」
蔵人らしい先を読んだ賢明な発言だった。
だが。
「ガハハハハ、9人目っ!
お前、俺たちのこと、まだ全然分かってないな」
京介は豪快に蔵人を笑い飛ばす。
「え?違うのか?」
蔵人は不思議そうにみんなを見る。
時雨もアルトくんも月乃もロックコも雫も、みんな京介と同じように笑っている。
「なぁ9人目っ!俺たちギルド『最前線』は回復役もいないし、火力だけに全てを任せた完全なる脳筋パーティーだ。
だが、脳筋には脳筋のプライドがあるんだよ。
俺たちが2人以上ロットに参加することは決してない」
京介がキッパリ言い放つ。
時雨が、アルトくんが、みんなが頷く。
「俺たちは火力だけを頼みにしているが、逆に、火力だけは誰にも負けないという自負を持っている。
だから、自分より火力を出す者がいたと思ったら、そいつはロットに参加せず辞退するんだ。必然、ロットは最も火力を出した1人のみが参加して、他は全員辞退する。それが俺たちのプライド、俺たちの流儀だっ!
まぁ俺たちは謙虚なやつが多いから、全員が辞退するって事故も結構あるんだけどな」
京介は笑顔で蔵人に話す。
「その流儀、俺も従いたい」
全てを了解し、蔵人も笑顔で頷く。
◇
午前5時00分
ギルド『最前線』のメンバーたちは、ラグナロク山の頂上に立つ。
メンバーたち全員で、供物のインプ魔石を捧げる。
白い閃光があたりに広がる。
そしてメンバーたちは見た。
お正月イベントで運営の誤入力したことから生まれた化け物ボスが再び表れたことを。
バジリスクが再来したことを。
「嘘でしょ……また2日がかりで戦わなければいけないわけ……」
雫がつぶやく。
「水鏡の野郎……」
京介が絶句する。
「昨日マラソンだったのに、今日は深夜の登山をやって、これから2日間戦い続けなきゃならないの……」
アルトくんは泣き声で言う。
「また11万4514ターン戦わんとあかへんって……」
月乃が呆然とする。
ギルド『最前線』のメンバーたちを圧倒的な絶望が襲う。
その時。
イリュージョン・アーツ魔法学園内の訓練フィールドいっぱいに広がる強力な明るい光。メンバーたちは眼を開けていられなくなる。と同時に。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドン
メンバーたちが耳の鼓膜が破れたかと思うほどの大きな雷鳴。
この時、メンバーたちも近隣住民たちも、イリュージョン・アーツ魔法学園に落雷があったと思ったという。雷鳴の余韻に空気が震える。
メンバーたちは視界を回復する。
そして、その強い光と爆音の源たる者を知る。
そこにいたのは、ゴシックロリータの赤と黒の衣装の少女。赤いスカートの丈は膝上20cm。そして黒のニーソ。両手には深紅の皮の長手袋、右手には先端に大きなルビーを備えた漆黒の杖。ツインテールにした炎髪に大きな緋色の瞳。左耳にはルビーのピアス。
二神時雨、その人だった。
時雨が発動した特殊能力『竜の雷槌』の最終形態たる『竜神の逆鱗』。それこそは《HYPER CUBE》界で随一の貫通力を誇る最強の特殊能力。
それを第1ターンから誰よりも早く発動させることで、バジリスクへの先制攻撃に成功したのだった。
「みんな、遅すぎぃ!賽は投げられたんだから、戦うしなないでしょっ!早く私について来なさい」
時雨は笑いながら『最前線』のメンバーたちへ憎まれ口をたたく。




