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第27話 蔵人とアルトくん

第27話 蔵人とアルトくん


 蔵人とアルトくんが横に並んで山道を走る。



 3匹のゴブリンがアルトくんを襲う。

 アルトくんはウォータピラーを発動して、3匹のゴブリンを一瞬にして消滅させる。



 直後、2匹のホブゴブリンが蔵人を襲う。蔵人はサーモバッリク手榴弾を2匹のホブゴブへと投げる。爆風とともにホブゴブは消え去る。



「もう……キリがないよね。このイリュージョン・アーツ魔法学園の敷地に何匹いるんだよ……」

 アルトくんは困憊(こんぱい)しながらグチる。


「水鏡さんのはなしだと……この現実リアルNPCは11万4514匹いるらしいな……」

 蔵人も、疲れに息を切らしながら、アルト君に疑似ビグースロボットの正確な数を教える。



「11万4514匹も……」

 アルトくんは絶句する。



 今日の合宿で、教官のサンダース大佐からの指示は、ただ学園の敷地の外周を1周走ってこいというだけだった。だが、外周は30kmもある。しかも、そのルートには水鏡恭一郎が膨大な予算をかけて作った疑似ビグースロボットが沢山いて、先頭を走る蔵人とアルトくんは際限なく出てくるそのロボットに四苦八苦しているのだった。

 ルビーのピアスは、《HYPER CUBE》世界での特殊能力スキルを、現実世界でも発動できるようにするもの。

 サファイヤの指輪は、《HYPER CUBE》世界での武器を現実世界で具現化するもの。

 前者は水鏡が、後者は蔵人の父ジンとDarker Than Crimson Redが共同開発したアイテムだった。


 そして、今、蔵人とアルトくんは、それらのアイテムの使用が体力や精神力を大きく奪うものであることを認識しはじめていた。



「後ろのみんな大丈夫かな?」

 アルトくんは心配そうに振り返るが、離れすぎたためか第2集団以降を確認できない。



「女子も多いからな」

 と蔵人。



「それもあるけど、ロックコくんは引きこもりだし、京介さんはニートだから、月曜にジャンプ買いにコンビニ行くときしか外に出てないんだ。走るだけでも大変だろうに、しかもこのアイテム使うなんて……」

 アルトくんは深刻な表情で、不安を訴える。



「そうだな、まぁ本物のビグースじゃないんだから、そう深刻にならなくていいよ」

 蔵人は冷静に言葉をかける。


「あっ!そうだよねっ!うっかりしてたよアハハ」

 アルトくんも、冷静になり、笑って返事をする。




「じゃあ、気分転換にクイズ大会でもしよう。互いに問題を出しあう。先攻は俺だ。いいか?」

 と蔵人。



「うん」

 アルト君は笑顔で応じる。



「じゃあいくぞ。プロのサッカー選手A、B、C、D、Eの5人が円周上に等間隔に立って1個のサッカーボールを地面に落とさないでキャッチボールみたいなかんじで、リフティングでボールを回していくとする。そのとき、各人からは、右側に2人、左側に2人いる状態でボールを回すことになる。もっとも、このボール回しに参加する5名は、それぞれ絶対遵守の誓約を課されている。

 その誓約とは、以下だ。


 Aは隣の者に絶対に回してはならない。


 Bは右側にいる者から受け取れば左側にいる者に、左側にいる者から受け取れば右側にいる者に回さなければならない。


 Cは受け取ったボールを回してきた者に回す。


 Dは必ず隣の者に回さなければならないが、回してきた者に回し返してはならない。


 Eは右側にいる者に回す。


 この絶対遵守の誓約を前提条件として考察して欲しい。


 では、問題だ。

 

 Aから時計回りにCEBDの順に並んで、Aが初めにボールを保持してボールを回し始めたとする。このときのB」




「Dからはボールを回してもらえないBのことだね。問題を続けて」




「ん?」


「だってそうでしょ。その前提条件だったら、Dにボールを回す可能性がある者はBしかありえないよね。他方で、Dは回してきた者に回し返してはならないとの誓約を課されている。だから、BはDからボールを回してもらえる可能性はない」


「正解だ」


「え?」


「俺はこのあと可能性のない肢を選択させようとした。そして、その正解肢は、『BはDからボールを回してもらえる』だった。

 つまり、アルト君、君は俺が問題を出題し終える10秒前に正解肢を選択したことになる。問題自体は簡単だ。でも、今のように疲れた状態で、しかも口頭で問題を聞くだけという制約があると、簡単とはいえなくなる。エライぞ」

 蔵人はアルトくんの頭を撫でる。




「ありがとう」

 アルトくんは憧れの隻眼の使徒に褒めてもらえて、満面の笑みで喜ぶ。



「でも、この突然のクイズってきっと伏線で後で回収される感がスゴイよね」

 アルトくんは笑顔で話す。


 アルトくんがそんなメタな話をするとは、少々褒めすぎたかなと蔵人は苦笑する。




「ん?何か聞こえないか?」

 一転して真剣な顔になって蔵人がアルトくんへ問う。


「え?え?……そう言えば動物の足音?」



 何かが近づいてくる気配を感じ、2人は表情を強張らせる。




 パカ、パカ、パカ……

 



 馬の蹄の音が、イリュージョン・アーツ魔法学園の訓練フィールドとなっている森林に静かに響く。


 青白い炎に包まれ厚い鋼の鎧で重装備した馬の乗り物。

 そこに座るは巨大な槍を構えた首なしの騎士が3体。



 『騎士(デュラ)亡霊(ハン)』が3体同時に、蔵人とアルトくんの前に現れた。

 それこそはプレイヤー殺しの最悪パーティーと言われる不倒の集団『デュラハン3兄弟』だった。



「今のこの状態で『騎士(デュラ)亡霊(ハン)』だって……しかも『デュラハン3兄弟』だって……エアプ運営すぎんよ……」

 アルトくんは絶望に言葉を失う。





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