第23話 二神の守護者(ガーディアン)・ビビアン・エリーチカ・ベネセツカヤ
第23話 二神の守護者・ビビアン・エリーチカ・ベネセツカヤ
蔵人と水鏡は見た。
時雨の真後ろに。
蔵人が新巌流島で倒したはずのVivid Edged Blackのサーヴァントだったシェーシャがいることを。
蔵人と水鏡は声を失う。
ロシア系の白人の美女。年齢は16才の蔵人より2つくらい上。碧い瞳。細い眉。金髪の長髪をポニーテールにして、白いシュシュで束ねる。その容貌はμ'sの絢瀬絵里と瓜二つ。身長は170cmほどで細身の完璧なモデル体型。
「死んだはずのシェーシャが、何故ここに……」
水鏡は心の中でつぶやく。水鏡の顔から血の気が失せる。
「そこの人、俺と会ったことあるよな?」
蔵人は驚きを隠しながら、尋ねることで少しでもこの女性から情報を引き出そうとする。
だが、それに返答したのは時雨だった。
「おい、前に会ったことあるよねってお前はウサン臭いナンパ師か?彼女は昨日、ロシアから来たばっかなんだから、日本に引きこもってるお前が会ったことあるわけないだろ。
紹介しとくぞ。彼女の名はエリチだ。エリチは私の守護者だ。二神家では総帥候補者が16才になったら守護者をつけるという風習がある。先祖が身代金目的誘拐やらなんやらに巻きこまれたことが多かったらしくてな、そんな風習があるんだ。エリチはロシア陸軍で優秀な兵士だったから、ロシア政府からの推薦状つきだ。美人だし、強いしスゴいんだぞ!」
時雨は鼻高々に説明する。
「エリチ……さんか……」
蔵人はつぶやく。
エリチが笑顔で蔵人に挨拶する。
「蔵人さん、はじめまして。私はビビアン・エリーチカ・ベネセツカヤよ。あなたの《HYPER CUBE》世界大会での戦いぶりは、とてもハラショーだったわ!あなたの大ファンになったわ。私の本名はエリーチカだけど、ロシアで孤児院にいる頃から、エリチって言われてたから、エリチって呼んでくれていいわよ」
そう言ってエリチはウィンクをする。
「はっ!」
蔵人は息を飲む。
蔵人は思い出した。
新巌流島でシェーシャが話していたのを
「ああ。私も双子の妹も、小さい頃からμ'sの絢瀬絵里にソックリと沢山の人に言われ続けてきた。私たちがロシアの孤児院にいた頃、そこの院長は私の妹のマナサーをエリーチカって改名させたくらいにな。5才の頃、私だけが西側の里親に引き取られたんだけどな。
つまり、私がエリチに似ていると思ったという感情は、私を見た100人が100人そう思うってこと。お前だけじゃない」
シェーシャはそう言っていた。
そして、蔵人はエリチの実の姉シェーシャに手をかけていたことに気づく。やむをえない戦いであるとは言え、罪の意識に苛まれる。
「エリチ……あなたがもし俺たちと対立した時、俺は1度だけ、あなたの味方になる。1度だけあなたの側に立つ。それだけは覚えておいて欲しい」
蔵人はキッパリと決意を口にする。
「ありがとう、蔵人さん。あなたが何を言ってるかわからないけど、私のことを思ってくれていることは分かるから」
エリチは少し戸惑いながら笑顔で返す。
「お前、さっきからエリチに向かって会ったことあるよね?とか、あなたの側に立つだとか、口説いてるのか?これから真剣な合宿が始まるのに弛んでるんじゃないのか」
時雨は不機嫌そうに蔵人に抗議する。
その時。
突然現れた無数のナイフが超高速度で時雨を襲う。
それは特殊能力『Unlimited Knife Phenomenon』の発動によるもの。
特殊能力『Unlimited Knife Phenomenon』:術者が操作する無限の数のナイフが、超高速度でターゲットへ襲いかかる。ターゲットはこれを躱すことができない。
「キヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
時雨の悲鳴がイリュージョン・アーツ魔法学園のエントランスへ響きわたる。




