第22話 9人目と呼ぶ男
第22話 9人目と呼ぶ男
その時。
イリュージョン・アーツ魔法学園のエントランスの自動ドアが開く。
入って来たのは矢沢京介。
世界最高の遠隔狙撃手。矢沢月乃の実兄。そして最強ギルド『最前線』のメンバーの1人。
そして特殊能力『奇跡の林檎』の使い手。
京介は不愉快そうに蔵人を睨みつけながら、ゆっくりと蔵人へと近づく。
蔵人は思い出す。
月乃がギルド『最前線』へ蔵人を誘ってくれたときのことを。月乃は事前にLINEで『最前線』のみんなに聞いたら、8人のうち、7人は賛成だったが、京介だけは既読無視だった。月乃はそう言っていた。
《HYPER CUBE》東京予選で勝ったことで京介さんの婚約の機会を潰してしまったことを蔵人は思い出す。
「9人目っ!」
大きな声がエントランスに響き渡る。
「それは俺のことか?京介さん、俺は月乃から聞いたんだが」
蔵人は戸惑いながら京介に言う。
だが、京介は上から被せることで蔵人に最後まで話させない。
「俺は《HYPER CUBE》東京予選で、お前に敗れた。そして《HYPER CUBE》世界大会でこそリベンジの場と考えたんだが、ホワイトナイトによる邪魔が入って、その願いは叶わなかった。次の《HYPER CUBE》 世界大会こそが、3度目の正直だ。
それにお前が勝ったら、俺はお前のことを認めて本名で呼んでやる。
それまでは、俺はギルド『最前線』の9人目の仲間だとしか思わない。本名で呼んで欲しかったら、次の世界大会にも出場して俺に直接勝ってみろ。それまで俺はお前を本名で呼ばない。
だから、お前は『9人目』だっ!」
京介は厳しい顔つきで、だが優しげな瞳で蔵人を見つめる。
蔵人も京介の真意を理解し、笑顔で頭を下げる。
「ロックコくんにしても、京介さんにしても、根は良い人なんだけど、素直じゃないっていうかちょっと面倒クサイなぁ」と蔵人が心の中で苦笑していたことは、ここだけの秘密である。
◇
その時。
イリュージョン・アーツ学園のエントランスの自動ドアが開く。
「あんた達、みんな揃って、またバカ話でもしてるわけっ!」
生意気な憎まれ口ががエントランスに響き渡る。
声の主は二神時雨。ツインテールにした炎髪に小さな顔、大きな緋色の瞳、意思の強さを感じさせる強い眼差し、右耳にはルビーのピアス。大富豪である二神財閥の令嬢であり、《HYPER CUBE》最強ギルド『最前線』のメンバーの1人。《HYPER CUBE》界屈指の貫通力を誇る特殊能力『竜神の逆鱗』と『竜の雷槌』の使い手として知られている。二神雫の双子の妹。ゆえに二神財閥総帥の継承権第2位を保持する。
蔵人と水鏡は見た。
時雨の真後ろに。
蔵人が新巌流島で倒したはずのVivid Edged Blackのサーヴァントだったシェーシャがいることを。
蔵人と水鏡は声を失う。




