第14話 スキル・キャンセラー
第14話 スキル・キャンセラー
「あらためまして。蔵人くん、《HYPER CUBE》世界大会優勝、おめでとうございました!!」
泉は笑顔で白い小箱を蔵人へ差し出す。
「いま開けてみていいか?」
「勿論、どうぞ」
泉は笑顔で快諾する。
そこにあったのは漆黒の眼帯。眼帯の中央にには、銀で十字架が刺繍されている。
「蔵人くんは、いつも同じ無地の漆黒の眼帯だよね。たまには違うのも、いいかなって。それに蔵人くんは十字架が好きだから、銀の糸で頑張って十字架を縫いつけたんだよ」
と泉は嬉しげに説明してくれる。
「金でなく銀なんだな」
「え?金の方がよかったかな……」
泉は肩を落として悲しそうな顔をする。
蔵人は微笑みながら、泉の頭を撫でる。
「いや、そういう意味で言ったんじゃないんだ。誤解だ。最高にカッコイイと思うぞ!さっそく今から着けるから」
蔵人はそう言いながら、泉から送られた眼帯を着ける。
泉は機嫌を直し、笑顔でパチパチと拍手する。
「スゴく似合ってるよ。さすが蔵人くんだ。
それにね、その眼帯には、オマケもあるんだよ。眼帯の横のボタンを押すと《HYPER CUBE》サーバーに情報送信されて、その時に蔵人くんに発動されている特殊能力がキャンセルされることになるの。Dr.Iとして頑張ったんだから!
そんなスキル・キャンセラーになれる眼帯なんだからね!
非常事態のときだけ使ってね。昨日の世界大会の後、作り出して、深夜までかかったの。《HYPER CUBE》サーバーにテスト送信したのは午前3時33分だったんだよ」
泉は無邪気に説明をする。
蔵人は驚き、真剣な顔で泉に聞き返す。
「泉、いま何と言った?」
「え?スキル・キャンセラーになれる眼帯だよ」
「いや、それは分かってる。その後だ!」
「《HYPER CUBE》サーバーにテスト送信したのが午前3時33分ってこと?3が3つ揃って、スゴいな~って思ってたから覚えてるだけなんだけど……」
何故そこに蔵人がこだわるのか当惑しつつ泉は返事をする。
蔵人は快心の笑顔で、泉の頭を撫でる。
「泉、でかした!最高の仕事をやってくれたよ!」
「え?」
不思議そうな泉。
「正直に言うと、俺はVividEdgedBlackとの戦いに一抹の不安を覚えていた。泉の《HYPER CUBE》サーバーへのテスト送信が午前3時34分であれば、この不安は払拭されなかっただろう。
だが泉のテスト送信は3時33分だ。3時33分と34分との差は、わずか1分。だが、この1分は今、俺が置かれた状況下においては、永遠ともいえるほどの大きな意味を持つんだ。そして、この1分差こそが、俺がVividEdgedBlackとの最終決戦の最後の切り札となるだろう。この1分差を利用することで、俺は完全にVividEdgedBlackの裏をかくことができる!すなわち、俺は明日の新巌流島での戦いで、将来むかえることとなるVividEdgedBlackとの最終決戦へ向けた深謀遠慮な1手を放てる。それは絶対的な布石。その布石が、数十手先で必ずVividEdgedBlackを追い詰めることになるんだ!
待っていろVividEdgedBlack!今度は俺がお前を追い詰めてやるっ。これからは俺のターンだ!」
蔵人の言葉は次第に熱を帯びる。その瞳は輝きを増す。
泉は蔵人の言葉の意味を理解できないものの、その力強い言葉に、自分が役に立てたのだと分かり、喜びに瞳を潤ませる。泉は気づいた。蔵人の表情は、いつもの自信に満ちた蔵人のそれであることを。今日、時おり見せた不安げな表情は、もう蔵人にはなかった。そんな表情に泉は心から安心した。
そして蔵人は向かった。
ビグースとの決戦の地、新巌流島へ。
次の更新は明日です。
次話より舞台は秋葉原学園高校から新巌流島へと大きく移ります!




