第11話 ハイパーキューブ症候群S型(2)
第11話 ハイパーキューブ症候群S型(2)
蔵人は続ける。
「ハイパーキューブ症候群S型レベル2。これを発症すると自分の特殊能力を制御できなくなる。
例えば、俺がホワイトナイトのような心理掌握の特殊能力を持っていたとしよう。そして、大きな記念式典の控室にいる皇女殿下に向かって、俺が冗談で『俺が君に国民を虐殺する命令を出せと言ったら、君の意思とは関係なく君は虐殺命令を出すんだよ』と言うとする。だが、特殊能力を制御できなくなってしまっているなら、たとえ俺が冗談でそう言ったつもりでも、俺の特殊能力は暴走し、皇女殿下は軍部に虐殺命令を下す。
つまり、記念式典の会場は一転して大虐殺の処刑場となるわけだ」
「そ、そんな……。こわすぎるよ……」
泉は怯えながら蔵人を見る。
蔵人はニッコリ笑いながら、泉の頭を撫でる。
「大丈夫だ、心配しなくていい。
俺はハイパーキューブ症候群S型レベル2までは発症してないよ。それに俺は心理掌握なんて特殊能力を持ってないから、そんなことにはならないから。俺も少し嫌な予感がしてるが、それもきっと気のせいだろう」
「よかった~」
泉は涙を浮かべながら安心する。
◇
蔵人は続ける。
「ハイパーキューブ症候群S型レベル3。これを発症するとハイパーキューブに関連した一切の記憶を失う。
だから、俺はハイパーキューブを通して知り合った大切な人たちの顔も名前も全て忘れてしまうんだ。
京介さん、アルトくん、月乃や時雨たちのことを。
そして田所先輩との楽しかった思い出をも……全てをだ……」
「そ、そんな……私たちの田所先輩との楽しかった思い出までもだなんて……そんなのひどすぎるよ……残酷すぎるよ……」
泉は余りの事態に言葉を失う。
蔵人は手元にあったアイスティーを飲み干す。
「今こうしてコンピ研の部室でアイスティーを飲んでると、思い出されるのは田所先輩との思い出ばかりだ……だから、俺がそうなってしまうとは自分でも信じられないし、そんな日が来て欲しくはない……」
蔵人も力弱げにつぶやく。
◇
気をとりなおして、蔵人は続ける。
「ハイパーキューブ症候群S型レベル4。これはハイパーキューブ症候群S型の末期すなわち最終段階だ。といっても、ハイパーキューブ症候群S型は余りに進行が早いものだから、レベル1発症後、1年以内に俺がこのレベル4まで発症するのは確実らしい」
泉は真剣な表情で蔵人の話を聞き入る。
蔵人は続ける。
「ハイパーキューブ症候群S型レベル4。これを発症すると
俺は死ぬ。」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああ」
泉の叫び声がコンピ研の部室に響き渡る。




